遊休資産を処分して節税する方法とは?有姿除却の要件までわかりやすく解説

使わなくなった機械設備などの遊休資産は、放置せずに処分することで、保有コストの削減や節税につながります。「廃棄費用が高くてできない」ということであれば、「有姿除却」という方法も検討できます。
目次
固定資産(遊休資産)を処分して節税
事業のために取得した固定資産のうち、稼働を休止しているものを「遊休資産」といいます。遊休資産がある場合は、放置せずに処分することをおすすめします。
通常、固定資産は耐用年数に応じて減価償却して費用化しますが、遊休資産の場合は減価償却をしないこととされているからです(法人税法施行令第13条)。
つまり、使わないまま放置していると、いつまでも費用化できないまま帳簿上に資産として残ることになります。また、保管するためのスペースやコストが必要なため、新しい設備が購入できないなど、遊休資産を放置しておくと大きなデメリットが生じてしまうのです。
遊休資産のうち、その休止期間中必要な維持補修が行われており、いつでも稼働し得る状態にあるものについては、「稼働休止資産」といい、減価償却が可能です(法基通7-1-3)。
損失は固定資産除却損として計上する
遊休資産を処分することで保管スペースが確保できるだけでなく、発生した損失や費用があれば、「固定資産除却損」として計上できるので、節税にもつながります。
ここでいう処分とは、スクラップするなどして事業用の使用を中止することを指します。捨てるなど、完全に処分する場合は「固定資産廃棄損」として計上することになります。
固定資産除却損と固定資産廃棄損
商工会議所簿記検定試験のルールによれば、廃棄の場合でも、「固定資産除却損」が「標準」であり、「固定資産廃棄損」は「許容」されるとなっています。
ソフトウェアなども対象になる
固定資産の除却は、製造業等の業種に限定した話ではありません。ソフトウェアは無形固定資産ですが、有形固定資産と同様にその耐用年数に応じて減価償却を実施するためです。
ソフトウェアの場合は、以下のようなケースで損失の損金算入が認められます。
- 自社利用のソフトウェア
そのソフトウェアによる業務が廃止され、利用しなくなったことが明らかな場合、または他のソフトウェアを利用することになり、従来のソフトウェアを利用しなくなったことが明らかな場合
- 販売用のソフトウェア
新製品の出現、バージョンアップ等により、今後、販売を行わないことが社内稟議書や販売流通業者の通知文書等で明らかな場合
税務調査の対策が必要
遊休資産の処分による損失計上は、税務調査で指摘を受けやすい項目のひとつです。そのため対策として「記録を残しておく」ことが重要になります。
具体的には、「産業廃棄物業者が発行する廃棄証明書」「廃棄した固定資産の写真」「取締役会議事録等、会社として廃棄を意思決定した記録」「産業廃棄物業者からの請求書や領収書など」といった書類を残しておきましょう。
これら書類のすべてを保存しておく必要はありませんが、最低限でも「廃棄証明書」を取得しておくことをおすすめします。
すぐに処分できない場合は「有姿除却」をする
すでに使用していない機械設備を処分しようと考えるものの、撤去や廃棄する費用が膨大で、すぐには処分できないケースもあるでしょう。そんなときは「有姿除却」を活用します。
有姿除却とは、実際に機械設備を処分せずに損失が計上できる方法です。
有姿除却が認められる要件
有姿除却が認められるには、その固定資産について以下の要件を満たす必要があります。
- その使用を廃止して、今後は通常の方法によって事業で使う可能性がない
- 特定の製品の生産や製造のために使われていた設備などで、その製品の生産・製造を中止したため、今後使用される可能性のないことが明らかである
遊休資産を有姿除却するにあたっては「一時的な使用中止」ではなく、「今後その固定資産が使われる可能性がない」ことを客観的に説明できなければいけません。
具体的には、「機械設備の主要な箇所にドリル等で穴を開けて使用不能にする」などが必要になります。
また、「特定製品の生産中止により、今後再利用される可能性がほとんどないことが明らかな専用金型等」も有姿除却が認められる可能性が高いといえます。
ただし、生産を中止した後の状況から将来の使用可能性を鑑みる必要があり、通常は生産中止後ある程度の期間状況を見極めたうえで、有姿除却が可能になります。単純に法人がある製品の生産を中止したことをリリースするだけでは認められません。
また、移転等で旧工場を使用しなくなり、今後も使用する可能性がなく、立入禁止の状態になっているといったケースでも有姿除却が可能になるでしょう。
損失として計上できる金額
有姿除却を実施する際、損金として計上できる金額は以下のとおりです。
損金算入額=簿価-処分可能見込額(スクラップ価格)
たとえば、1500万円が減価償却済の、取得価格2000万円の機械装置を廃棄処分すると、固定資産廃棄損は500万円となります。
借方 | 貸方 |
---|---|
固定資産廃棄損 500 | 機械装置 2000 |
機械装置減価償却累計額 1500 |
除却する資産に評価額(処分見込み額)がある場合はその金額を「貯蔵品」、差し引いた損失を「固定資産除却損」として会計処理します。
借方 | 貸方 |
---|---|
固定資産除却損 200 | 機械装置 2000 |
機械装置減価償却累計額 1500 | |
貯蔵品 300 |
また、固定資産の除却で生じた費用も、損失として計上できます。
取得価格とは
ここでいう取得価額とは、購入した代金以外にも事業で使用するまでにかかったすべての費用を加算した金額も含みます。
たとえば、ソフトウェアの導入にあたって、自社の仕様に合わせるための付随的な修正作業費用や、労務費や経費の金額、事業で使用するまでにかかった全費用を加算した金額となります。
おわりに
事業を健全に行っていくにあたっては、経営資源を充分に活用することが求められます。年度末等のタイミングで「事業用の資産として何を保有しているのか」「遊休資産となっているものがないか」をチェックして、自らの資産保有状況を確認してみてください。
資産管理を堅実に行うことで、節税はもちろん、事業の無駄がなくなり、経営の安定化も実現するのです。実際の会計処理や節税効果の試算については、税理士に相談してみるとよいでしょう。
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