元国税局職員の芸人による「どんな収入にも税金はかかる!?」

元国税局職員さんきゅう倉田です。嫌いな脱税方法は「架空経費」です。
個人事業の方は所得税の確定申告をします。給与所得の方も条件を満たせば、確定申告の必要があります。どうして確定申告が必要なのかというと、仕事をしていれば、収入があり、収入があるということは、所得があるので、それを申告して、納税する必要があるからです。
また、仕事をしていないのにお金やものをもらうこともあるかと思います。とてつもなく異性にモテる方がお金やプレゼントをもらったり、家賃を出してもらうような経済的利益があれば、この場合は所得税ではなく贈与税の対象となります。
万引きしたら「確定申告」が必要?
では、仕事ではないことで収入を得た場合はどうなるでしょう。
何年か前に、とある私立高校の男子生徒4人がコンビニエンスストアで万引きをしたと報じられました。店を出たところで店員に声をかけられた4人は、逃走。制服を着ていたために、高校が特定され、特徴から同校の1年生であることが判明しました。生徒への事情聴取を進めると、ある事実が明らかになります。
万引きした生徒たちと同じ1年生の3分の1が万引きしていたことが分かったのです。被害総額は数百万円にのぼり、大きく報道されました。ぼくは、このニュースを聞いたとき思いました。
「あ、これ確定申告が必要だな」と。
犯罪で得た収入も確定申告が必要な理由
なぜそう思ったのか。それには、そもそも、所得とはなんなのかを説明する必要があります。
色々な考え方があるのですが、そのひとつに『包括的所得概念』という考え方があります。これは「課担税力を増加させる経済的な利得はすべて純資産の増加であり、所得である」という考え方です。簡単にいうと「収入はぜんぶ所得だよー」というものです。
これを踏まえると、万引きで得た収益は所得になり、所得税の確定申告が必要になります。もちろん、万引きだけでなく、詐欺や強盗で収益を得た場合も確定申告が必要になります。決して、犯罪を認めたり助長する意図はなく、どんな方法で収入を得ていても、国税局は見逃しませんよ、ということなのです。
仮に確定申告する場合の経費は?
さて、確定申告をするとなると、経費も認められます。では、仮に万引きをして得た所得を確定申告する時には、どんなものが経費になるでしょう。
例えば、 万引きする店までの電車賃や車で行くならガソリン代が交通費として認められます。万引きする用の黒い服、目立たない服、逃走用の動きやすいスニーカーは消耗品費として計上することになるでしょう。見張り役に払った報酬は、外注費または給与になります。商品を隠す大き目のジャンパーやかばんも経費と考えることができます。要は収入を得るために使ったお金は経費になると考えられるのです。
結婚詐欺であれば、最初はお金があるように見せるために星のつくようなレストランに連れていったり、高級車に乗せるかもしれません。オレオレ詐欺でしたら、電話をたくさん買うかもしれません。強盗であれば、ピッキングや窓ガラスを割るための道具を購入するでしょう。それらは全て経費になる可能性を秘めており、きちんと、レシートや領収証などの証拠書類を保管する必要があります。
そして、複式簿記により帳簿をつけ、貸借対照表と損益計算書を作成し、青色申告の承認を受けて、消費税の申告と合わせて、所得税の確定申告をします。
おわりに
もう一度いいますが、決して犯罪を認めているわけではなく、「所得」という考え方をわかりやすく伝えるために例として出させていただきました。善良で真面目に働く市民が納税しているのに、法を守らない人間が納税しなくて良いなんて、不公平なことはありません。どんな人間もどんな仕事もどんな収入も課税の対象です。
でも、良い子と良い納税者は真似しないように。
もっと記事を読みたい方はこちら
無料会員登録でメルマガをお届け!