ロシア軍から奪った戦車「所得の申告必要ない」、ウクライナ政府が呼びかけ
確定申告

ウクライナの国家汚職防衛局が、「ロシア軍から奪った戦車や装甲車について、所得として申告する必要はない」と発信して、話題になった。「Interfax-Ukraine」が報じた。
Interfax-Ukraineの記事(現在は閲覧不能)によると、「どのように申告したらいいか心配でしょうか。安心して祖国を守り続けてください。コストがかかるので申告する必要はありません」と同局が呼びかけているという。
さすがに日本で民間人が侵攻してきた国の戦車や装甲車を奪うことは考えにくいが、もし購入するなど通常の手段以外で、戦車や装甲車を手に入れることがあった場合、申告する必要はあるのだろうか。冨田建税理士に聞いた。
●本来、価値のあるものを拾った場合、課税対象となるが・・・
刑法的な面は門外漢ですので、税法に話を絞って述べます。
所得税法上や法人税法上で、戦車等の「外国の兵器」を獲得した場合の特別な規定は見られません。
本来、価値のあるものを拾った場合は、個人が得た場合は少額な場合は別として所得税法に従い一時所得として所得税等が課税され、法人が得た場合は会計上の雑益としての計上を通じて法人税法に基づき法人税等として課税されると思われます。ですので、戦車等に「価値があれば」課税することが理論的とは思います。
ただし、戦車等に価値があるかは疑問です。税法が財産を得た時に課税するのは、換金価値があるからです。日本では換金できる中古の戦車等の市場があるとは思えませんし、中古の戦車等の取引事例や相場も聞かないですから鑑定評価も難しく「得られた戦車等の価値」の測定が難しいでしょう。しかも、自爆装置等の危険な部品等もあるかもしれず、処置に負担がかかる場合すら考えられます。
そもそも戦車等は危険ですので得る前に警察に処置を委ねることを推奨しますが、仮に個人か法人が得たとしても価値が測定できず計上額が確定できなかったり、処置の負担でマイナスだったりする等の理由で現実的にも申告は難しいでしょう。
万が一、税務署が私のお客様に「戦車等を得たことによる課税」をしてきたら国税不服審判所に訴えると思います。
ウクライナでの戦争は残念に思っています。ただ、これも1つの機会ですので、改めて平和の大切さを考えてみたいと思いますけれど、皆様はいかがでしょうか。
【取材協力税理士】
冨田 建 (とみた・けん)税理士・不動産鑑定士・公認会計士
43都道府県で不動産鑑定業務経験があり各媒体に寄稿も行う。令和3年8月に不動産の評価手法・相続・税務、戸建住宅の価格目線の把握法等を実例を交え一般向けに述べた著書「不動産評価のしくみがわかる本」を上梓。
事務所名 :冨田会計・不動産鑑定㈱/冨田 建 不動産鑑定士・公認会計士・税理士事務所
事務所URL:http://www.tomitacparea.co.jp