インボイス「適格請求書」登録は必須? 取引の見直しが必要なケースも
消費税

2023年よりはじまるインボイス制度。この制度が開始されると、免税事業者には不利になる点が多いと言われており、制度廃止の署名運動なども行われている。
一方で課税事業者は、インボイス制度に対応するために「適格請求書発行事業者」登録が必要となっている。
では、課税事業者が適格請求書発行に対応しないという選択をした場合、どのようなことが起こり得るのだろうか。佐藤全弘税理士に聞いた。
●「適格請求書発行事業者」の登録は義務ではない
適格請求書を交付できるのは、登録を受けた「適格請求書発行事業者」だけですが、<適格請求書発行事業者の登録を受けるかどうか>は事業者の任意です。
「適格請求書発行事業者」として登録せず、適格請求書の交付ができないと、取引先は仕入税額控除ができなくなってしまいます。すると、消費税の納付税額が大きく計算されることとなりますので、取引条件などの見直しが必要となるかもしれません。
この点は、課税事業者であっても同様です。
一方、取引先が消費者や免税事業者に限られるのであれば、適格請求書の交付義務はないため、「適格請求書発行事業者」の登録をしなくてもよい場合もあります。
また、取引先が課税事業者であっても簡易課税を選択しているのであれば、適格請求書を保存しなくても仕入税額控除を行うことができます。よって、この場合も取引先との関係によりますが、「適格請求書発行事業者」の登録をしなくても良いケースと言えるでしょう。
●取引条件の見直しで危ぶまれる問題も
今後、取引の停止などの行為がインボイス制度の実施を契機として問題となることも懸念されます。
免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A( https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/invoice_qanda.html )では、「自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となるおそれがあります。」との記載があります。
取引条件などを見直す際には、これに該当しないかどうか確認をしておくとよいでしょう。
また、インボイス制度開始後6年間は、免税事業者からの課税仕入れについても一定割合の仕入税額控除の適用が受けることができるので、取引先との交渉も段階的に検討することも可能です。
なお、フリーランスなどの個人事業主をはじめ、免税事業者である小規模事業者については、実務上、<適格請求書発行事業者の登録をして簡易課税を選択する>ことが多いかと思います。消費税の納税はあるものの取引先との条件は変わらず、事務負担も少なくて済むのではないでしょうか。
【取材協力税理士】
佐藤 全弘(さとう・まさひろ)税理士
お客様の立場にたって、わかりやすい税金を目指すとともに付加価値の高いサービスを提供することをモットーとしてお客様のニーズに応えられるパートナーを目指します!
事務所名 : 佐藤全弘税理士事務所
事務所URL:http://satouzeirishi.com/
※この記事は2022年5月時点の情報です