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もめる複数税率の線引き、英国で起きた「ポテトチップス裁判」 日本の軽減税率はどうなる?

消費税

もめる複数税率の線引き、英国で起きた「ポテトチップス裁判」 日本の軽減税率はどうなる?
プリングルズ。現在はケロッグが販売している

今年10月から消費税が増税され、それと同時に軽減税率が導入されます。軽減税率の導入によって、消費税が10%のものと8%のものが混在することになります。税率が複数あると商品やサービスがどちらの税率に該当するのかを判断しなければならなくなります。

どの税率に該当するのかを判断する場合、解釈が入るため税務当局と争いになることがあります。その最たる例が、イギリスで争われた「ポテトチップス裁判」です。

日本でも、今後、複数税率となることから同様の事件が起こるのでしょうか。混乱が予想される軽減税率ですが、どのようなことが問題となりそうなのか、国税庁の資料を読み解きながら限界事例について考えてみたいと思います。(ライター・メタルスライム)

●判断基準を定めるのが難しい複数税率、一度導入すると戻すのも困難

間接税の場合、税率はシンプルの方がわかりやすく望ましいとされています。複数税率にすると、どの税率に該当するかの判断をしなければならず負担が大きいからです。また、税率を区分するための判断基準を定めるのが難しいという問題があります。基準があいまいだと判断に苦慮するし、基準が細かすぎると複雑すぎてそれを把握するのが難しくなるからです。

たとえば、「ビスケット」は、軽減税率の対象とするとした場合、ビスケットとは何かという判断が難しいということです。逆に、「小麦粉、砂糖、牛乳、とうもろこしでん粉、 ショートニング、マーガリン、全粉乳、ぶどう糖果糖液糖、食塩で加熱形成される3センチ以内の固形物」は、軽減税率の対象とするとした場合、いちいち成分を調べるのは大変だし、ひとつでも別の成分が入れば該当しないということになってしまい、自由な生産活動ができなくなります。

次に、複数税率制を一度導入してしまうと単一の標準税率に戻すことが難しくなるという問題があります。軽減税率は多くの国で採用されていますが、区分が細分化され複雑になる傾向があり、単一の税率に戻したいという動きもあります。しかし、軽減税率は、生活必需品への負担軽減を理由に導入しているものなので、これを廃止するというのは国民の理解を得られにくく、単一の標準税率に戻すことは極めて困難です。

●ポテトチップス裁判、プリングルズは「ビスケット類」といえるのか

「ポテトチップス裁判」とは、日本でも有名な「P&G社」の「プリングルズ」が軽減税率の対象となるかが争われた裁判です。イギリスでは、消費税率が20%と高いため、生活必需品については軽減税率が導入されています。食料品は原則として免税対象となるのですが、いくつかの例外があります。そのひとつに「ポテトチップス等のスナック菓子類」があります。

そこで、P&G社は、「プリングルズ」は「ビスケット類」であると主張しました。プリングルズの原材料の内、ジャガイモの使用率は42%にすぎず、残りは小麦粉などを混ぜて作っているから、ポテトチップスではないという解釈です。

P&G社と課税当局との裁判で、2008年7月の一審ではP&G側の主張を認めプリングルズはポテトチップスではないと判決しました。しかし、2009年5月、二審では逆転判決となり、P&G社は敗訴しました。その結果、プリングルズは「ポテトチップス等のスナック菓子類」に分類され課税対象となることで決着しました(参考報道:http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/8060204.stm)。

「プリングルズがポテトチップスではない」との主張は、一見すると無謀な裁判と思われるかもしれませんが、税率が「20%(当時は17.5%)」と「0%」とでは大違いなので、軽減税率を受けられる可能性があるのであれば、企業としては、チャレンジするのが当然と言えます。日本の場合、標準税率と軽減税率の差が「2%」なので、このような争いが生じることはないと思いますが、将来的に税率の差が大きくなれば、同じようなことが起こるかもしれません。

●日本の軽減税率の対象、新聞が入ったのは批判の封じ込めか

日本において軽減税率の対象になるのは、①酒類と外食を除く「飲食料品」と②定期購読契約に基づく週2回以上発行される「新聞」です。飲食料品が軽減税率の対象になるのはわかると思いますが、洗剤やトイレットペーパーなどの生活必需品を差し置いて、新聞だけが軽減税率の対象になることについては理解できるでしょうか。

消費税の増税によって情報が得られなくなっては困るからというのが表向きの理由です。しかし、今や情報収集の手段はテレビやインターネットが主流であり、新聞の売り上げは落ち込んでいます。ではなぜ新聞なのかと言えば、こんな時に消費税の増税で購読料が上がったら新聞離れが加速するのは必至です。政府としては、新聞社に恩を売っておいて、批判的な記事を書かれないようにするために軽減税率の対象にしたのでしょう。

実際、少なくとも全国紙については軽減税率に対して批判的な記事は書かれていないようです (参考報道:https://www.j-cast.com/2018/10/17341390.html)。本来であれば「新聞以上に軽減税率の対象にすべきものはあるのではないか」と政府に批判的な記事を掲載するような気概を持った新聞社があってもいいはずですが、残念ながらマスメディアの権力監視機能は政府に完全に封じ込められているようです。

●軽減税率に該当するかの限界事例

日本の軽減税率の対象は、酒類と外食を除く「飲食料品」とされており、何が「飲食品」に該当するのか、また、外食との区別はどうなるのかという点が問題になります。国税庁が公表している「消費税の軽減税率制度に関するQ&A」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/03-01.pdf)を参考に限界事例を考えてみたいと思います。

①肉と魚の取り扱い

国税庁の見解によれば、鶏肉は食品に該当しますが、生きた鶏は食品ではないので軽減税率の対象にはならないとしています。一方、活魚は食品に該当するとされているので、生きたマグロやフグは軽減税率の対象となります。しかし、生きた鶏と生きたマグロで税率に差異を設ける理由がよくわかりません。

②果物狩りの取り扱い

国税庁の見解によれば、果樹園での果物狩りは役務の提供なので軽減税率の対象とはならないとしています。一方、果物狩りで収穫した果物を販売した場合には軽減税率が適用されるとしています。ということは、入園料を2000円で1時間取り放題とすると10%の税率になりますが、入園料は無料で1時間の間に収穫した果物は2000円の定額で販売するとした場合8%の税率になります。

③コンビニやスーパーマーケットでの取り扱い

国税庁の見解によれば、コンビニやスーパーマーケットで購入した商品をイートインスペースなどで飲食する場合、軽減税率は適用されないとしています。その判断は、販売の時点で意思確認をする必要があるとしています。ということは、購入時点では持ち帰るつもりだったが、少し歩いたら気が変わって中で食べることにしたという場合、軽減税率が適用されます。

④遊園地の売店での取り扱い

国税庁の見解によれば、遊園地の売店で飲食物を購入する場合、売店の目の前の管理の及ぶベンチで食べる場合は10%、売店から見えないところのベンチで食べる場合は8%になるとしています。このことから、遊園地では、売店の近くにベンチを置かないようにすれば、全ての利用者が軽減税率の適用を受けることができるということになります。

⑤出前の取り扱い

国税庁の見解によれば、外食は軽減税率の適用はありませんが、出前の場合には飲食料品を届けるだけであるため「飲食料品の譲渡」に該当し、軽減税率の対象になるとしています。ということは、うなぎや寿司などの高価な食べ物は店舗ではなく出前が得ということになります。

●将来のさらなる増税、軽減税率があれば反発を受けにくくなる?

軽減税率の適用についていくつかの限界事例をピックアップしてみました。果物狩りやイートンコーナーでの飲食など、いくらでも運用や言い方によって軽減税率を適用できる方法があることがわかって頂けたと思います。もっとも、このような記事を書くと、限界事例を潰すようなQ&Aの改訂や通達が発せられる可能性がありますので注意が必要です。

お金持ちは、寿司や高級仕出し弁当を出前してもらって8%の消費税で済み、庶民のサラリーマンは牛丼屋に並んで10%の消費税を払うという不条理が起こる「軽減税率」ですが、さらなる消費税増税の伏線なのかもしれません。消費税の増税は、国民生活に直接影響を及ぼすので、政治家も簡単には増税できないものです。ところが、複数税率の場合、生活に直接影響のある食料品などの消費税率は据え置くとして標準税率の増税がしやすくなるからです。

先進諸国の消費税は、ドイツが「19%」、イギリスとフランスが「20%」、イタリアが「22%」と高い税率で軽減税率が導入されています。財務省が軽減税率の導入にあまり抵抗を示さなかったのは、今後、日本も「10%」から「13%」、さらには「13%」から「15%」と段階的に引き上げる場合に、軽減税率があった方が国民の反発を受けにくいと判断したからかもしれません。

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