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財務次官のバラマキ政策批判が話題、国の借金「ワニの口」はなぜ開き続けるのか

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財務次官のバラマキ政策批判が話題、国の借金「ワニの口」はなぜ開き続けるのか
写真はイメージ(Kodai / PIXTA)

矢野康治財務次官が、10月8日発売の月刊誌「文藝春秋」にバラマキ政策への批判記事を寄稿しました。与野党ともに衆議院選挙で経済対策を公約に掲げていることもあり、反発の声が挙がっています。

この記事については、事前に麻生前大臣の了解を得ており、現大臣にも出版前に報告をしているとのことなので、政府もこの記事が公表されることは知っていたことになります。

これは、選挙後に経済対策をすると言っていた公約を、財政規律を理由に反故にするための伏線なのでしょうか。記事中で取り上げられている、国の借金「ワニの口」が開いていった原因について振り返りながら、財政問題について考えてみたいと思います。(ライター・岩下爽)

●90年代から開き始めた「ワニの口」、コロナで一気に拡大

ワニの口とは、一般会計の歳出と税収の推移を示す折れ線グラフが「ワニの口」のようにどんどん開いていく状態をたとえた表現です 。矢野次官が平成10年頃に命名したものです。

画像タイトル キャプション:財務省のサイト( https://www.mof.go.jp/zaisei/current-situation/situation-dependent.html)より

なぜ、歳出と税収で乖離が生まれてきたのかと言えば、歳出を増加せざるを得ない事情がその都度生じてきたからです。

ワニの口が開き始めたのは、1990年ですが、この時はバブルが崩壊して株価や不動産価格が暴落しました。政府は、その後、経済対策として公共投資、減税、地域振興券の配布、規制緩和などを行いました。その結果、歳出は増え、税収が減ったので、ワニの口が開きました。

1999年になると、ITバブルにより株価が上昇し、税収が増え、歳出も減少に転じました。2001年から小泉政権となり、道路公団民営化や郵政民営化など行政改革に取り組み、歳出削減もなされたため、ワニの口は閉じかけました。

ところが、2008年にリーマンショックが起こり、政府は2009年4月、「経済危機対策」を発表し、国民1人につき1万2000円(18歳以下と65歳以上は2万円)の「定額給付金」が支給されました。そのため、ワニの口は再び広がりました。

2014年になると、アベノミクスによる効果と消費税を8%に引上げたことによる税収の増加によって、ワニの口は閉じてきました。

さらに、2019年に消費税を10%に引上げ、さらに税収を増やそうとしましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、2020年、大幅に歳出の増加をせざるを得ない状況となりました。

このように、ワニの口が広がったのには理由があるわけです。

●矢野財務次官がこの時期に寄稿した理由は?

矢野財務次官は、記事の中で「公僕は、余計な畏れを捨て、己を捨てて、日本の将来も見据え、しっかり意見具申せねばならないと自戒しています。」と述べています。また、「国家公務員は、「心あるモノを言う犬」であらねばと思っています。」とも述べています。

なんとも勇ましい見解を述べていますが、この矢野次官は、官房長時代、上司である福田次官がセクハラの問題で追及されている時、セクハラ被害者が名乗り出て来ないから「調査のしようがない」と、取り合わなかった人です。結局、福田次官が辞任する形でこの件は幕を閉じました。

矢野氏は、財務省を守ろうとした貢献が認められたのか、事務次官にまで昇任しました。事務次官になる位なので典型的な省益優先の役人なのでしょう。財務省にとっての省益は税収を確保することです。財務省の権力の源泉はお金だからです。

ところが、ワニの口が広がると、定型的な歳出に財源が取られてしまい、財務省の裁量でコントロールできるものが少なくなってしまいます。そのため、財務省は、ワニの口を何としてでも閉じたいと考えているわけです。

安倍政権以降、官邸官僚が財務省から経産省に変わってしまい、緊縮財政ではなく積極財政に変わってしまったことに財務省は焦りを感じているはずです。岸田政権となって、衆議院選挙後、本格的な政策運営が始まったときに、またもや積極財政となると、財務省の権威は地に落ちるので、記事を寄稿して歯止めを掛けておきたいという狙いがあったのかもしれません。

●そもそもワニの口を閉める必要はあるのか

財務省の思惑が見え隠れするのは置いておいて、矢野次官の主張は正論なのでしょうか。矢野次官は、ワニの口が広がれば、その分は借金である国債で埋め合わせしなければならず、日本は先進国でずば抜けて大きな借金を抱えていると警鐘をならしています。これを例えて、「タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものだ」と言っています。まるで日本が沈没すると言わんばかりです。

画像タイトル キャプション:写真はイメージです(Byrdyak / PIXTA)

矢野次官は、さらに、企業では内部留保が膨れあがり、家計も全ての所得階層で貯蓄が増えているという金余りの状況であるのに、10万円の定額給付金のようなバラマキをすれば、死蔵されるだけだと主張しています。また、消費税の引き下げは問題だらけで甚だ疑問とも言っています。

結局何が言いたいかと言いうと、定額給付金のようなバラマキや消費税の減税はもってのほかで、借金が多いのだから財政を健全化しましょうという話です。明言はしていませんが、財政の健全化とは増税のことです。

一方、積極財政肯定論者(MMT論者など)からは、国債が増えても自国通貨で発行している以上、国債がデフォルトすることはなく、全く気にする必要はないと反論されています。こちらの見解は、財政政策は国債など気にすることなく、困っている人に積極的支援すべきというものです。そして、税は財源ではなく、お金を流通させるための仕組みにすぎないと考えています。

新しい理論なので、この理論が正しいのかどうかはわかりませんが、日本の国債がデフォルトすることはないというのはその通りだと思います。国債のほとんどは日銀が保有しており、満期が来ても借換えをするため、政府は返済をする必要がないからです。

もちろん景気が回復して、量的緩和を解消することになれば、日銀も償還を求めることになりますが、その時は、景気回復によって税収も増えているはずなので、そのお金で返済すれば済む話です。

●フローの話ばかりでストックの話がない

矢野次官の主張でおかしいところは、フローの話ばかりでストックの話が全くないという点です。矢野次官の話を個人で置き換えてみると、年収300万円の人が、年間1000万円もの支払いがあるため、700万円も借金しなければならない状態だと言っているわけです。その借金がどんどん膨らんでいるので、破綻してしまうと警鐘をならしているわけです。

これだけ聞くと、もっとものように聞こえるかもしれませんが、この人が資産家で10億円の土地を持っているとしたらどうでしょうか。印象は大部変わるのではないでしょうか。また、700万円の借金も消費者金融から借りている場合と資産家の親から借りている場合とでは状況はかなり違うと思います。

矢野次官の話は、このようにストックのことは全く書かれておらず、国債のほとんどの保有者が日銀や国内金融機関であるという点を考慮に入れていません。

ワニの口を閉めることは、望ましいことは間違いありませんが、それを主張するのであれば、ストックがどれだけあるのかを明らかにした上で、政治家のバラマキや減税だけを非難するのではなく、公務員の無駄な支出の削減についても言及すべきです。旅行気分で行く必要もない出張や港区や千代田区という一等地のビルの借り上げなど削減できることはいくらでもあります。

新しくできたデジタル庁は、「東京ガーデンテラス紀尾井町」で月の家賃は7000万円超とのことです。デジタル庁なら率先してテレワークを実施し、会議は全てリモートですれば済むことです。オフィスを設置するにしても、月7000万円もする一等地である必要はあるのでしょうか。仮に政治家の意向でこのビルになったのだとしても、それこそ「心あるモノを言う犬」ならば、このようなことにもしっかり吠えるべきなのではないでしょうか。

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