高野連のチケット収益は○億円!税金がかからないってホント?
税金・お金

「白河超え」の悲願達成が記憶に新しい第104回全国高校野球選手権大会。
今年は3年ぶりに一般観客を動員したが、チケット販売は全席指定とし、さらに中央指定席の金額を2800円から4200円にするなど値上げも行われた。
コロナ前の2019年の入場料収益は9.87億円にものぼったそうだが、高校野球の全国大会を運営する日本高野連は「公益法人」のため、この収益に対しては原則法人税が課せられないという。
そこで公益法人にかかる税金のしくみについて、三宅伸 税理士に聞いた。
●「公益目的事業による収益」には法人税がかからない
「日本高野連が公開している決算報告書によると、大会記念品の販売や所有する不動産の賃貸料収入等は「収益事業等会計」として法人税が課税されていますが、収入の大半を占める大会の入場料収益は「公益目的事業会計」として法人税は課税されていません。
株式会社であれば、原則的に事業の種類に関わらず、事業から生じた所得には法人税が課税されます。
公益の増進を図ることを目的とする公益法人は、営利を目的とする株式会社等と比較すると以下のようなメリットやデメリットがあります。
●公益法人は「寄付を受けやすい」というメリットも!
まず公益法人には、以下のようなメリットがあります。
【メリット1】公益事業から生じた所得は法人税が課税されない
【メリット2】支払を受ける源泉徴収所得税(一定の利子・配当等にかかる)は非課税
【メリット3】収益事業から公益目的事業に対して利益の繰入を行った場合(法人内の資金移動)、寄付金とみなして計算することができる(みなし寄付金)
【メリット4】法人や個人が公益法人へ寄付を行った場合、寄付を行った法人や個人は税制上の優遇措置を受けることができる(公益法人は寄金を受けやすい)
※一定の要件があります。寄付を行う前に税理士にご相談ください。
次に、公益法人のデメリットは以下のとおりです。
【デメリット1】利益が出ても分配(配当等)することができない
【デメリット2】解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与しなければならない
【デメリット3】公益認定基準を満たすための厳しい制約(以下財務3基準※)等があり、その厳しい審査を受け公益法人として認定された後も審査は継続的に行われる
※財務3基準
・公益目的事業の収益額が、その事業に必要な適正費用を償う額を超えてはいけない(収支相償)
・公益目的事業活動の割合(公益目的事業費率)が50%以上であること
・純資産に計上された額のうち、具体的使途が定まらない財産の額が、1年分の公益目的事業費相当額を超えてはいけない(遊休財産額の保有制限)
●高校野球の健全な発展のために財政の健全化を
公益法人である日本高野連は、メリットである税制の優遇を受けながらも、厳しい制約の下で運営していかなければなりません。
少子化などで入場料の増収見通しが難しい中、「高校野球の健全な発展に寄与する」には、甲子園という秀逸なコンテンツを生かし、社会の流れに合わせた制度の見直しを行い、公益目的事業を増やし、無駄な経費は抑えて収益事業で利益を確保するなど、財政の健全化が迫られているのではないでしょうか。
【取材協力税理士】
三宅伸(みやけ・しん)税理士
大阪府立大学経済学部卒業後大手リース会社勤務。仕事、育児、勉強を両立しながら大阪の税理士法人に勤務。平成26年11月堂島で三宅伸税理士事務所を開業。設立当初からクラウド会計の導入をすすめ、コロナ禍でもストレスフリーな事務環境を提供している。常にお客様の立場に立って考えお客様と共に成長していくことをモットーに起業支援、医療関係、相続等を軸に幅広く活動している。
事務所名 :三宅伸税理士事務所
事務所URL:http://miyake-tax.jp/index.html