井上尚弥、6億4000万円のファイトマネー獲得か。支払う税金はどのくらい?
税金・お金

7月25日、「WBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ」にて、前4団体世界バンタム級統一王者の井上尚弥が、挑戦者として無敗の王者スティーブン・フルトンに挑んだ一戦で8回TKO勝ち。井上はスーパーバンタム級に階級を上げた初戦で、WBC・WBOの2本のベルトを獲得した。
日本人2人目の世界4階級制覇と、日本人選手最多の世界戦20連勝を成し遂げるなど、“モンスター”の名にふさわしい活躍を見せた。
●ファイトマネーは日本ボクシング史上最高額の6億4000万円か
ファイトマネーもモンスター級だ。両者のファイトマネーは合計約10億円と軽量級史上最大だが、報道では井上とフルトンの取り分は同額程度、あるいは最低保証額が井上は6億4000万円、フルトンは3億8000万円ともささやかれている。
もし井上のファイトマネーが6億4000万円だった場合、2022年4月に行われた世界ミドル級王座統一戦で村田諒太が手にした6億円(推定)を上回る、日本ボクシング史上最高額を得たことになる。
井上は試合後、リングサイドで観戦していた残り2団体のベルトを持つWBA・IBF統一王者のマーロン・タパレスに向けて、今年中の4団体統一戦の対戦希望を表明。実現すればファイトマネーはさらに高騰することになりそうだ。
億超えとなる破格のファイトマネーはなんとも夢のある話だが、税金はいったいいくら払うことになるのだろうか。冨田建税理士に聞いた。
●ファイトマネーが6.4億円の場合、税金は2.4億円!?
今回の試合のファイトマネーが6億4000万円だった場合、ジムの取り分3割が差し引かれたと仮定すると、井上選手に帰属するのは7割の4億4800万円となります。
ここでは経費や今回のファイトマネー以外の所得が不明ですので、これらは0円との前提で計算します。また、詳細が不明ですので平均課税制度は考慮外とします。
仮に個人の場合でしたら、所得税等は年4000万円以上の部分で最高税率45%ですから殆どの所得は最高税率の対象となり、住民税の約10%と合わせておおむね55%弱の2億4000円強がその年の税金として課されることとなります。
ーー 井上尚弥氏はかつて雑誌のインタビューで「法人を設立し、ファイトマネーはジムから会社への振り込み」だと答えています。その場合の税金はどうなりますか?
法人税の場合は、その会社が留保金課税という制度の対象でないとの前提で、法人税・住民税・事業税でおおね3割強程度が課されると思われます。ですので、通常であれば1億1000万円〜1億2000万円程度が税金として課されることになるでしょう。
ファイトマネーを法人が受け取る際の注意点は、法人から井上選手個人に所得を移す際、その所得にも税金がかかる点です。ただし所得が少なくなり、適用される税率も下がる引退後等に所得を移すことで、トータルの税額を抑えられる場合もあり得るため、井上選手の場合は法人を所得の受け皿とした方がはるかに節税できると思われます。
●法人を設立したほうが節税になるケースも
実は、所得が一定以上ある場合、ボクシング選手に限らず幅広い事業で、個人ではなく法人が所得を受領する形態にした方が節税上は有利な場合が多いのです。ですので、ある一定額以上の所得がある場合には、適宜税理士に相談して、法人設立の検討をしてもいいでしょう。
個人的には、相続税等のように「人から貰った」ものはそれなりの税負担があってもいいと思いますが、個人が頑張って社会に貢献した労働対価としての所得の半分以上が税というのはいかがなものかと思います。
これからの時代、国際競争もよりシビアになりますので、社会に高い貢献をできる人が求められると思います。ですので、より貢献した者が報われる社会になるよう、税制についても昔の制度形態に拘らず、国民全体で再考する時代に来ているのではないでしょうか。
【取材協力税理士】
冨田 建税理士・不動産鑑定士・公認会計士
43都道府県で不動産鑑定業務の傍ら、各種講演・執筆も行う。令和3年に「不動産評価のしくみがわかる本」(同文舘出版)を上梓し増刷。令和5年春には相続税・所得税等を解説する「図解でわかる 土地・建物の税金と評価」(日本実業出版社) を上梓した。
事務所名 : 冨田 建不動産鑑定士・公認会計士・税理士事務所、冨田会計・不動産鑑定株式会社
事務所URL:https://tomitacparea.com