NISAは非課税でも相続は別?知らないと損するお金の話を税理士が解説
税金・お金

2024年1月、NISA制度は非課税枠を大きく拡大し、新NISAとしてスタート。新NISAでは、年間投資額360万円、生涯で最大1800万円まで、本来であれば運用益に「20.315%」かかる税金が「非課税」となるお得な制度だ。
そのため、これまで投資に関心がなかったけれど、NISAに興味を持ち、利用を始めたという人も多いのではないだろうか。
このように非課税が魅力のNISAだが、もしNISA口座を保有している人が亡くなり相続が発生した場合、税金の扱いはどうなるのだろうか。田邊美佳税理士に聞いた。
●故人のNISA口座は、相続人がそのまま引き継ぐことはできない
ーー被相続人のNISA口座をそのまま相続人が引き継ぐことはできるのでしょうか?
「亡くなった方のNISA口座をそのまま相続人が引き継ぐことはできず、また相続人のNISA口座に移管することもできません。
NISA口座で保有していた上場株式等は、『相続人の特定口座または一般口座』に移すことになります。その際の口座は、もとのNISA口座保有者と同一の金融機関である必要があるため、相続人が同じ金融機関に口座を所有していない場合には、新たに口座の開設手続きが必要となります。」
ーーNISA口座の保有者が亡くなった場合、どのような手続きが必要でしょうか。
「NISA口座の保有者が亡くなった場合、相続人は、被相続人がNISA口座を開設している金融機関へ、遅滞なく『非課税口座開設者死亡届出書』を提出する必要があります。」
●亡くなった時点でNISA口座に含み益がある場合はどうなる?
ーーNISA口座の保有者が亡くなった際、もし含み益がある場合は所得税・住民税はどうなるのでしょうか。
「NISA口座の保有者が亡くなった場合、所有していた上場株式等は亡くなった日の終値で売却したものとみなされ、非課税口座から払い出しがなされます。
このとき、含み益があったとしても、亡くなった日までの含み益は非課税になるため、所得税・住民税は課税されません。
逆に含み損が生じていた場合には、損失がなかったものとみなされます。」
ーー故人のNISA口座で所得税・住民税がかかるのはどのようなケースでしょうか。
「亡くなった日以降にNISA口座で受け取るべき配当金や分配金がある場合、それらは非課税とはならず、所得税・住民税が課税されます。」
●相続税評価額は保有者が亡くなった日の終値相当額で算出
ーー故人のNISA口座で保有している投資商品について、相続税の対象になるかと思いますが、相続税評価額はどのように算出されるのでしょうか。
「NISA口座で保有している有価証券については、『NISA口座の保有者が亡くなった日の終値』に相当する金額で相続人が引き継ぐことになりますが、上場株式は日々価格が変動するため、相続税申告においては次に紹介する価格のうち、最も低い価格✕株式数で計算します。
1.亡くなった日の終値
2.亡くなった日の月の終値の平均額
3.亡くなった日の月の前月の終値の平均額
4.亡くなった日の月の前々月の終値の平均額
投資信託の場合には、上場株式とは計算方法が異なり、相続税評価額は以下のように計算します。
相続税評価額=亡くなった日の基準価額✕口数-解約請求等した場合の源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額-信託財産留保額及び解約手数料
なお特定口座や一般口座で所有している有価証券についても、相続税評価額は同様に算定します。」
【取材協力税理士】
田邊美佳(たなべ・みか)税理士
オネスタ税務会計事務所所長。公認会計士・税理士・行政書士・ファイナンシャルプランナー。相続税申告、生前対策業務に特化。国際相続案件にも対応可能。
事務所名 : オネスタ税務会計事務所
事務所URL:https://onesta-tax.com/