CoCo壱、ロピア、フルキャストも……大企業のラーメンM&Aに隠された経営者と従業員のメリットとは?
税金・お金

人気ラーメン店のM&Aが加速している。カレーハウスCoCo壱番屋などを運営する外食大手の株式会社壱番屋は2025年1月、大阪を中心に「らーめん小僧」など7店舗を展開する株式会社KOZOUの全株式を取得し、完全子会社化。壱番屋は2023年にも、つけ麺店「麺屋たけ井」を運営する株式会社竹井を買収している。
他にも磯丸水産を運営する株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、2025年につけ麺店「狼煙」を展開する株式会社狼煙を買収。同社は2024年にラーメン店「えびそば一幻」を手がける株式会社一幻フードカンパニーを買収するなど、麺事業のM&Aを強化している。
ラーメン店のM&A参入は大手飲食企業だけにとどまらない。人材サービスの株式会社フルキャストホールディングスは、2023年に「らあめん花月嵐」を展開するグロービート・ジャパン株式会社を完全子会社化した。また2024年にミシュランガイドに掲載されたラーメン店「ソラノイロ」は、スーパーマーケットのロピアやアキダイを運営する株式会社OICグループに買収されている。
このように、M&Aにより事業を譲渡することで、経営者や従業員にはどのようなメリットがあるのだろうか。中釜和寿税理士に聞いた。
●大手企業が持つ経営資源にアクセスでき、従業員にとっては雇用安定などのメリットがある
ーー大手企業へ事業を売却することで、ラーメン店にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。
事業経営においては、大手企業に対して事業売却を行うことによって、大手企業が持つ経営資源にアクセスできるというメリットがあります。
社内システムを統合することによるオペレーションの効率化や、原材料の仕入れを中央集権で行うことによるコスト削減、また大手企業が有するブランドや販路を活用することによる売上拡大も見込むことが可能です。
また、従業員の方についても、雇用の安定性やグループ内部のキャリア機会の拡大、待遇改善が起こる可能性も高いです。
もちろん、事業を売却した経営者についても、株式売却に伴うキャッシュの確保や安定した事業承継を実現できるといったメリットも存在します。
●買収した大手企業にはどんなメリットがある?
ーー買収した大手企業にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。
まず、事業ポートフォリオの拡充や多角化というメリットがあると考えます。製品や地域といった観点で自社とのシナジーがある既存の企業がグループ内部に入ることで、売上増加や、これまでにリーチできなかったマーケットへのアクセスが得られることになるでしょう。
特に大手企業では開発が難しいニッチなマーケットや製品・地域に特化したラーメン店などは、ブランド力も強く、特に魅力的に映るのではないでしょうか。
また、自社でゼロから事業開発を行うことなく、成功している既存事業を買収できるため、経営のスピードを加速させることもメリットの一つです。近年では、IRなどでもM&Aについての戦略や実績を開示する企業が増えていることから、企業価値や株価向上に対してもインパクトがあると考えられます。
●M&Aにより、企業価値向上や世界を視野に入れた販路拡大にもつながる
ーー大手企業によるM&Aの活発化には、どのような背景があると思われますか。
企業価値向上に向けて、M&Aが経営戦略上の重要な手段として、マーケットに広く認知されたという点が挙げられると思います。
また、外食産業も成熟し、競争の激しい産業となる中で、買い手の成長意欲や売り手の後継者確保といったニーズが大きくなってきていることの表れかもしれません。
日本だけを見ると需要は安定的かもしれませんが、大手企業が買収することで、世界市場に向けた販路拡大も可能になります。経営資源を集約させることで、「食」という日本の持つ強みがより一層世界に届く時代になるかもしれません。
【取材協力税理士】
中釜 和寿(なかがま・かずひさ) 税理士・公認会計士
Big4と呼ばれる大手会計事務所のディレクターとしてグローバル本社への出向、日本の社長室勤務などを経て、 2024年にアセンディア税理士法人及び中釜和寿公認会計士事務所を設立。 現在は法人、個人を含めた約200のクライアントに対する税務顧問を担当するほか、グローバル企業の社外CFOや監査役としても活動をしている。専門領域は法人及び個人税務のほか、経営戦略やM&Aなど。
早稲田大学政治経済学部卒業。スタンフォード大学経営大学院LEADプログラム修了。
事務所名 :アセンディア税理士法人
事務所URL:https://asendia-tax.jp/