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「わらしべ長者論」で資産を築く 元フジアナウンサー西岡氏の“臆病な”不動産投資術

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「わらしべ長者論」で資産を築く 元フジアナウンサー西岡氏の“臆病な”不動産投資術
西岡孝洋氏

元フジテレビアナウンサーで、現在はフリーアナウンサー・実業家として多方面で活躍する西岡孝洋氏。西岡氏は、2025年9月にYouTube「PIVOT公式チャンネル」に出演し、マンション好きが高じて始めた堅実な資産形成について語り、大きな反響を呼びました。

株などの金融商品ではなくマンション購入による「住みながら投資」を選んだ理由、そして徹底したリスクヘッジと税務知識に基づいた堅実なプランニングを徹底する戦略とは。西岡氏に詳しく聞きました。

●マンション購入7物件、総額は6億円超

ーーこれまで7物件を購入し、総額は6億円超になるそうですね。最初に購入された時から、住み替えは前提にしていたのでしょうか。

いえ、むしろ「20年ぐらいはここに住むだろう」と思っていました。当時の新築マンションはプレミアム価格が乗って、中古になると価格が下がっていくのが当たり前でしたので、毎月家賃程度に住宅ローンを支払い、20年後に売却。売却益から残債分を引いて、次の頭金分として少しでも戻ってくれば十分、という感覚でした。

幸運にもこれまで購入したマンションは、購入価格より高く売却することができています。最初に購入した大崎のマンションもそうですが、マンション売却時に増えた資金は、原則次のマンションの頭金にしています。

ーーどのような売買をしてきたのか教えてください。

画像タイトル

<西岡孝洋氏のマンション売買遍歴>
・1物件目…品川区大崎のマンション/2000年購入:4800万円/2008年売却:5300万円
・2物件目…港区高輪のマンション/2009年購入:8300万円/2015年売却:8550万円
・3物件目…江東区豊洲のマンション/2013年購入:6300万円/2015年引き渡し・2019年売却:8510万円
・4物件目…港区浜松町のマンション/2017年購入:1億1190万円/2019年引き渡し・2023年売却:1億9700万円
・5物件目…1年間居住し、現在賃貸中の都内マンション/2021年購入:1億800万円/2023年引き渡し・保有中
・6物件目…現在居住中の都内マンション/2020年購入:1億2000万円/2024年引き渡し・保有中
・7物件目…法人で購入し、賃貸で貸し出す予定のマンション/2024年購入:7300万円/2026年引き渡し

7つ目の物件は初めて法人で購入しました。今のところ、賃貸で貸し出す予定ですが、もし人生に失敗したら、ここに住んでもいいという保険の意味も込めています。実質的には居住用を兼ねた購入となっていますし、街自体もとても気に入っています。

ーー会社員だった25歳の時に初めてマンションを購入されて以降、購入されたのはすべて居住用のマンションです。初めて法人名義でマンションを購入されたのには、理由があるのでしょうか?

現在住んでいるマンションの引き渡しが2024年4月。会社に退職の意を伝えたのが翌5月なんです。個人が会社を辞めてしまうと、与信が付くのに3年後など時間がかかってしまいます。ですので、会社員として最後の与信を使い切った感覚でした。

3年後の53歳ですと、ローン完済時の年齢制限もあり、個人で長期間返済の住宅ローンを借りるのは難しくなります。そのため自身の法人を利用した資産形成をせざるを得ない状況でした。設立したばかりの小さい会社でしたので、法人融資は想像以上に厳しかったです。

ーーマンションの価格もこれまでより若干抑えめです。融資限度額の関係でしょうか?

それもありますが、都内のマンションが高騰しすぎていて、チャレンジする価格ではないと考えました。現実的にまだ買える価格で、かつ優良なマンションを熟考した結果ですね。

●あらゆるリスクを想定し、残債割れを避ける「臆病な」戦略

ーーかなり堅実な買い方をされていますね。

私が一番大事にしているのは、「残債割れを起こさない」ことです。そのためには、ある程度多めに頭金を入れるので、借金をしてレバレッジをかける不動産投資家の手法とは対極にあります 。借入限度額をフルに使った感覚もないですし、そもそも不動産投資家と言われることには強い違和感があります。これほど臆病な投資家はいないですよね(笑)。

ーー物件を選ばれるとき、重視している点はなんでしょうか?

2物件目の高輪の物件までは、通勤の利便性などライフスタイルに合わせて選んでいましたが、今は「再開発」のキーワードをもとに、これから変わっていく、発展のポテンシャルを秘めた街を中心に探しています。想像力を働かせて、5年後10年後の自分の生活にフィットする街でマンションを買っているイメージです。例えば、恵比寿や目黒のような、すでにブランドが確立されている街より、人々の営みとともに価値を育む途上にある街に興味があります。

宅建の資格も持っているので、用途地域などを調べて「例えばここにスーパーが入るかもしれないな」など、どんな施設が建つ可能性があるかを具体的に想像しています。そこまで具体的に想像していくと、マンションの資産価値は、大きく崩れることはないかと思っています。

ーー明るい未来、暗い未来の両方を想定しているのですね。

FP資格を保有していることもありますが、資格取得以前から綿密にシミュレーションするタイプでした。例えば、4物件目の浜松町のマンションを約1億2000万円で買ったとき、妻には「もうずっと住むよ」と伝えているんです。

10年後に市場が崩れて価格が8000万円くらいに下がるリスクを想定していたからです。8000万円で売却するともったいないので、そのケースでは売却せずに一生住む覚悟でしたね。

ーー楽観的な期待値を排除して、リスクを徹底的に精査されるのですね。

私が許容できる最大のリスクは、マンションの手付金を放棄すること、いわゆる「手付流し※」までです。今は、新築マンションの手付金は1割が一般的なので、例えば1億2000万円のマンションであれば、最大で1200万円の損失はしようがないと覚悟しています 。

結局、浜松町のマンションは、購入1年後に3000万円ほど価格が上がりましたので、次に新しいマンションを買ってもいいなと確信しました。市場が上がったことを確認するまでは絶対に動かないです。

※買主が売買契約の解除を希望する際に、既に支払った手付金を放棄すること。

ーー先ほどご自身のことを「臆病」と表現されていましたが、徹底したリアリストであり、覚悟を決めたら行動する大胆さもあります。

覚悟も必要ですが、本当にマンションが好きじゃないと買えないですね。私のやり方は誰でも真似できる方法ではないと思いますし、利益が出た・出ないは別として、いろいろなところに住めること自体がとても面白い。人生がとても豊かになる実感があります。

●「ローンは1本」を貫く、住み替えのルール

ーーマンションを住み替える際に、決めているルールなどはありますか?

新築マンションを購入した場合、引き渡し時期が最長で3年半くらい先になります。そのため、いつも引き渡しの半年ほど前に売却活動を始めています。仲介会社さんにも「200万円ぐらい差し値が入っても構わない」と伝えて、値引き分は家賃を払ったと割り切って、次のマンションに入居するまで住み続けています。

早めに利益を確定して売却して、引渡しまでの間は、暫定的に賃貸に住むということをしたくないんです。ただでさえ引越しが多くなりがちなので、さすがに家族に苦労をかけてしまう。

ーー次を購入する際には、現居のマンションのローンを完済返済して、新たに新居用のローンを組むようにされているのですね。

そうですね。私が投資用のローンを組みたくなかった理由は、投資用ローンと住宅ローンのダブルローンを組んでいると、想定外のことが起きた際に、会社員が一生をかけて返済できる額ではなくなってしまうからです。だから基本的に住宅ローンは常に1本のみ組んでいます。

5物件目のマンションは、キャッシュで買うことができたので、6物件目のマンションの引渡しの前に1年間住んだという感じですね。

ーー西岡さんの堅実な資産形成には、税務の知識も不可欠だったと思います。

私が実践している「住みながら資産形成」の最大の肝は、「3000万円の特別控除の特例※」でした。ただし、3000万円の特別控除が使えるか、仲介業者の方に聞いてもわからなかったり、見解が異なることもあるので、きちんと確認する必要があります。

※通称マイホーム特例。居住用財産を売ったときに、譲渡所得から最高3000万円まで控除ができる特例。ただし、売った年の前年および前々年に、この特例を適用した場合等は、適用できない。

なお、「3000万円特別控除」と「住宅ローン控除」は一定期間併用できない※という税制上のルールがあります。住み替えをしながら資産を増やす上では、この併用制限に注意が必要で、新しく購入した新居について、確定申告で住宅ローン控除を申請すると、旧居のほうは3000万円控除が使えなくなります。譲渡所得が多額になり、多額の税金がかかる可能性があります。

※住宅ローン控除には、居住年およびその前2年、その後3年の計6年間、3000万円特別控除の特例等の適用を受けていないこと(令和2年4月1日以後の譲渡)という適用要件がある。

ーー控除の制度は知っている、知らないで大きな差が出てしまいます。

通常マンションを売却する際には、税理士に相談することはしませんし、税務署に聞きに行って制度を理解する方も稀でしょう。そして売却した年にご自身でなんとか調べて確定申告をできている方もいるかもしれませんが、そもそも確定申告が必要であることを認識しないまま、確定申告をしないという方も、中にはいるかもしれません。ただし、不動産を売却すると、譲渡所得がないか税務署から確認の通知が届くかと思います。本来であれば、原則として確定申告は必要なんですよね。

私はアナウンサーという職業柄もあって、きちんと調べましたが、正しい知識を身につけていないといけないなとは思いますね。

ーー税務で他に気を付けるべき点はありますか?

譲渡所得が短期か長期の、どちらに該当するかはとても重要ですね。

<譲渡所得の税率>
・短期譲渡所得(土地や建物を売った年の1月1日現在で、所有期間が5年以下)…39.63%
・長期譲渡所得(同、所有期間が5年超)…20.315%

浜松町のマンション売却時に、税金を2000万円払ったのですが、それは次のマンションの引き渡しが4年後だったため、売却も短期にならざるを得なかったからです。所有期間5年以下の短期で売ると、売却益に約40%もの税金がかかってしまいました。税率はほぼ2倍になってしまいますから、できるだけ長期になるようにしたほうがいいとは思いますね。

●投資への覚悟:リーマンショックから学んだこと

ーー初めてマンションを購入された25歳当時は、多忙な時期だったかと思うのですが、どのように投資や資産形成の知識を吸収されていったのでしょうか。

実は株式投資に関しては、全然勉強できていないんです。入社してから最初の10年ぐらいは、財形貯蓄などもしていません。お金や投資に関して、興味がなくて、仕事だけの生活でしたので、好きなマンションを買っただけみたいな感じでした。

マンション売買に間しては、やはり自分が興味があることだから調べられたんですよね。株は逆にそんなに興味がなくて、未だによく分かりません(笑)。本当に私の趣味の先にあるものという感じです。

増えて当たり前という気持ちで投資を始める人も多いと思いますが、そうじゃないときも来るので、どこまで下がっても自分は大丈夫か、ある程度決めておいた方がいいと思うんですよね 。

私が株などの投資で大きなそんなにリスクを取らないのは、自分が好きなマンションでリスクを取っていることと、マンションの知識は他の人よりも少しはあるという自負があるからです。自分の目を信じて買うことができます。

実はマンションの売却でそんなに含み益は出ていないんです。大きく含み益が出たのは2回だけで、そのほかは、200万上がった、500万上がったというような、ささやかな成功です。

でも確実に継続してきたことで、現在2物件のマンションを所有できて、1つはキャッシュで買えるぐらいになりました。もちろんできる人は限定されますが、このやり方は非常に有効なんじゃないかと思いますね。

ーー不動産が好きでマンションを購入しようと思っただけで、いわゆる不動産投資目的ではなかったわけですね。

「ここは2倍になるぞ」とか思ったことは一度もないですね。唯一、今住んでいる物件だけは、資産価値が上がりそうだなと思いましたが、抽選が7倍だったので、幸運でしたね。

今では私がモデルルームで気に入った物件は、妻にも同行してもらいます。私だけの資産ではないので、妻の同意がなければ購入しません。物件見学も繰り返しているうちに、途中からは妻も楽しんでくれるようになりましたね。

●買わないリスクと、買うリスク

ーー「売却益」を得るためではなくて、「住みながら資産形成」の本質を理解できたような気がしました。

どの局面でもリスクはあります。でも、いろいろなことを考えすぎると買えなくなるとは思うんです。でも、人生の中で最大のリスクは何かいうと、「怖がって買わないこと」です。

例えば、ずっと賃貸に住んで、60歳になるタイミングで現金で買おうとお金を貯めている方もいるかもしれません。または、株式運用でお金を増やして、頭金が貯まったら買うパターンもあるでしょう。

でもそれより、現役世代で与信があるときに最初のマンションを買った方が、堅実なんじゃないかと思うんです。「5年後に市場価格が暴落するかもしれないので、それを待つ」という方もいると思いますが、それは投資の世界では一番やってはいけないことです。先のことは誰にも分かりませんから。

私自身、50歳近くになって、新たに住宅ローンを組んで買うことは難しくなってきています。これから先は、保有している不動産を売却して、その含み益で買うという世界です。

そう考えると、住宅ローンを組んで買える時期って20数年しかないんですよね。その限られた期間に、5年間暴落を待つのは、リスクがあります。もちろん暴落のパターンもあるかもしれませんけど、暴落してる時は誰も買うマインドになりません。そのときに買いにいけるのは、「これ以上価格は落ちない、買い時だ」と決断できる限られた富裕層だけです。

一般的な会社員の方は、自身の人生に目を向けて、住宅ローンが組めるのはあと何年かを考えて、今の状況の中で自分にベストだと思える物件を購入することです。その代わり暴落が来る可能性はあるので、リスクのラインはきちんと決めたほうがいいとは思います。

ーー最初の1歩がすごく大事ですね。

私はマンション購入は「わらしべ長者理論」だと思っています。最初に何かを持たないと始まらないんです。皆さん、怖がって最初から価値のある黄金をつかもうとしてしまうんですが、そうではなくて自身にとってのベストな”わら(藁)”を持つことが大切なんです。

これまではたまたま価格が上がってきましたが、私は上がることを前提にした売買はしていません 。むしろ自然に下がることを前提にして、それでも自分の趣味だから次のマンションを買って新しいいいマンションに住みたい、ということが、住みながら投資のスタートです。

西岡孝洋(アナウンサー/起業家)
1976年佐賀県生まれ。1998年慶應義塾大学法学部卒業後フジテレビ入社。五輪3大会・サッカーW杯5大会現地実況などのスポーツ実況や「すぽると」MC、めざまし8キャスターなどを担当。2025年3月にフジテレビを退社しフリーランス/起業家に転身。宅地建物取引士試験、行政書士、世界遺産検定1級、知的財産管理士2級、ITパスポートなど合格。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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