バブル景気「子だくさん」が増えた意外な理由 華やかさの影に庶民の涙 - 税金やお金などの身近な話題をわかりやすく解説 - 税理士ドットコム

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バブル景気「子だくさん」が増えた意外な理由 華やかさの影に庶民の涙

バブル景気「子だくさん」が増えた意外な理由 華やかさの影に庶民の涙
島田荘司さん「土の殺意」(短編集「夢を売る女」から)

会社説明会に出るだけで金一封、万札を振ってタクシーを止めるーー。昭和の終わりから平成初頭まで続いたバブル景気(1986年12月〜1991年2月ごろ)。おそろしく羽振りのよいエピソードが数多く伝えられている。

しかし、みんながみんな潤っていたわけでもないようだ。投機などに無関係でも、とんでもない目にあった一般人が少なくないという。

そんな当時の雰囲気を伝える短編小説がある。島田荘司さんの「土の殺意」(初出1987年)だ。短編集「夢を売る女」(カッパ・ノベルス、1988年)に収められている。

書影

改めてバブル景気を振り返ってみたい。以下、ネタバレも含むので、未読の方はご注意を。

●誰が高齢者を殺したのか?

物語のあらすじはこんな感じだ。ある日、東京の路地裏から高齢者の他殺体が見つかった。警察は近所のバーでこの高齢者と口論になっていた地上げ屋を追及する。しかし、彼は容疑を否認するのだった。

謎解きの鍵は、この地上げ屋が録音していた老人との会話だった。

●バブル期、宮様すら土地手放す

録音の中で、老人は「相続税は天井知らずだ、おかげで私は7人の子持ちだ」と話している。

バブル景気では、投機などにより土地の価格が高騰したことが知られている。「土の殺意」が発表された1987年の新聞を見てみよう。

同年1月22日の朝日新聞「地主まで『参った』ズシリ肩に相続税 都内に見る狂騰地価」には、次のような記述がある。

「大手不動産会社によると、国鉄渋谷駅に近く高級住宅地として知られる松涛地区で、最近土地を手放した人の7割は相続が原因。路線価引き上げで、都内の住宅地で土地離れが進む、とみている」

相続税の対象となる路線価が急騰し、相続税を払えず、土地を手放すケースが増えたという。

たとえば、この年2月に亡くなった高松宮宣仁親王。高輪の宮廷など、遺産総額は約41億円だった。喜久子妃は約14億円の相続税を支払うため、土地を手放して工面したそうだ。

●「相続税が家庭経済を直撃」

同年1月に亡くなった都内の会社社長(不動産)の遺産は595億円にもなった。歴代2位(当時)の額で土地長者としては異例だ。家族の相続税は約240億円にもなったという。

同年12月11日の朝日新聞の試算によると、この男性が10日前の1986年12月中に亡くなっていたら、課税遺産総額は330億円で済んだという。

路線価の高騰は翌1988年も続く。同年1月22日の朝日新聞は、次のような試算を載せた。

「吉祥寺駅に近い吉祥寺本町1丁目。(中略)妻と子供2人が自宅の土地100平方メートルを法定相続した場合、昨年は(編注:相続税が)4000万円ですんだが、今年だと1億600万円強と、6000万円余りも増える」

同日の別記事「ああ狂乱相続税 猫の額に税2700万円、都心人は四苦八苦」では、次のような税理士のコメントも紹介している。

「庶民にとって、相続税が恐怖の的になってしまった。金持ちの税金だった相続税を、地価高騰は東京の23区内の小さなマイホームを持つ人でも払わねばならぬ時代にしてしまった」

●節税対策で養子縁組が流行る

前置きが長くなってしまったが、路線価の高騰に伴い、節税対策も盛んになった。

ポピュラーだったものの1つが、養子縁組で相続人の人数を増やす方法だ。当時は、相続人が1人増えるたびに400万円が控除された。国税庁の調査では、養子が10人という人もいたという。

ここで「土の殺意」の中で殺された高齢者の「相続税のおかげで7人の子持ち」という言葉の意味が解ける。亡くなった高齢者は、都内に土地を持っていて、実子以外に養子もとっていたのだ。

作品の初出は、「小説現代」1987年2月号。これ以上、自宅の資産価値が高まると、相続税を払えないことから、殺されてしまったのだった。

●最高裁は2017年に初判断示す

前述の朝日新聞の記事「ああ狂乱相続税〜」では、路線価が急騰する前の1984年に土地を相続した人のコメントを紹介している。支払った相続税は1000万円に届かなかったという。

「今(編注:1988年)だと相続税は単純計算しても5000万円以上でしょうな。おやじには長生きしてもらいたかったが、今死なれちゃ、とても払えないやね。子孫に美田を残すな、って言うけど、土地に限っては『醜田』だな。世の中がおかしくなってしまった」

この年、相続税法が改正され、控除額などが増やされた。結果として、相続税トラブルは少しずつ収まっていったようだ。

こうした社会問題に着想を得て、いち早く作品にしてしまうあたりは「さすが島田荘司」といったところだろうか。

ちなみに、相続税対策での養子縁組は2017年、最高裁で「節税のための縁組でも直ちに無効になるとは言えない」とする初判断が出ている(平成29年1月31日最高裁第三小法廷判決)。たとえ節税目的でも、親子関係を創設する意思が認められれば良いという。

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