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ふるさと納税、総務省が泉佐野に完敗、自治体を下に見た「暴走」の末路 係争委の勧告を分析

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ふるさと納税、総務省が泉佐野に完敗、自治体を下に見た「暴走」の末路 係争委の勧告を分析
泉佐野市では大々的なキャンペーンが行われていた

泉佐野市がふるさと納税制度の対象自治体の指定から除外されたことは不当だとして争っていた件について、国地方係争処理委員会は、9月3日、除外決定を再検討するよう総務大臣に対し勧告しました。

この勧告は、総務省にとって相当厳しい決定と言えます。というものも、「国地方係争処理委員会」は総務省が所管する委員会で、飼い犬に手を噛まれるようなものだからです。総務大臣に対する勧告文が自らの総務省のホームページに掲載されている(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei01_02000178.html)という恥ずかしい状態です。

なぜ、このような勧告が出たのか、ふるさと納税のしくみと国と地方との関係を概観しながら、双方の主張と国地方係争処理委員会の勧告内容について確認してみたいと思います。(ライター・メタルスライム)

●過熱した返礼品競争、総務省が4市町を制度の対象外に

ふるさと納税制度は、「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた『ふるさと』に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか」という問題意識から生まれたものです。

もっとも、現行のふるさと納税制度は、ふるさとに直接納税するわけではなく、地方自治体に寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除されるという制度です。「ふるさと」という名前は付いていますが、ふるさとに限らずどの地方自治体に対しても寄付をして、控除を受けることができます。

各自治体は寄付の受入額を増やすため、過度な返礼品や地域と関係がないと思われる返礼品を提供するなどして競争が過熱していきました。それを受け、総務省は、2017年と2018年に返礼品は、寄付額の3割以下でかつ地場産品とするよう総務大臣名の通知を出しました。

これに対し、ふるさと納税に積極的に取り組んでいる地方自治体からは、返礼品を3割に抑えることは地場産業の振興に逆行するし、地場産品のない地域もあることから不平等であるとして反発がありました。そもそも返礼品を決めるのは地方自治体であって、国がとやかく言うのは、地方自治の本旨に反するという意見もあります。

これに対し総務省は、法律を改正して、2019年6月から総務省に従わない自治体は制度から除外するという事前審査制度に変更しました。そして、これまで総務省の言うことを聞かなかった4市町を制度の対象外としました 。そのひとつが「泉佐野市」(大阪府)です。

●国と地方自治体の関係・「国地方係争処理委員会」の役割

国と地方自治体の関係というと、国が上で地方公共団体がその下にあると思われている人も多いかもしれませんが、国と地方自治体との関係は、上下・主従の関係ではなく、対等・協力の関係にあります。

地方のことは地方が行うという地方分権推進の観点から、地方自治法245条の2では、地方公共団体が国に関与を受けるのは法律によらなければならないとされています。また、同法245条の3では、国の関与は必要最小限でなければならず、地方公共団体の自主性に配慮しなければならないとしています。

このように国と地方自治体が対等の関係であることから、国と地方自治体の間で紛争が生じたときは第三者の介入が必要になります。それが、「国地方係争処理委員会」です(地方自治法250条の7)。

●双方の主張と国地方係争処理委員会の勧告内容

以下に泉佐野市、総務省の主な主張と、国地方係争処理委員会の勧告内容をまとめました。

(1)泉佐野市の主な主張

・総務省が泉佐野市を指定しなかったのは裁量権の逸脱濫用にあたり違法である。
・総務大臣名の通知は技術的助言にすぎず、法的拘束力のない技術的助言に反したからといって指定しないのは法治主義に反する。
・泉佐野市は、法律施行以降は基準に従うと表明しているのに、改正後の法律を過去に遡って適用するのは不合理である。
・改正後の法律では指定を取り消せるので、仮に泉佐野市が基準に違反したら指定を取り消せばすむはずである。
・過去の実績をもとに不指定となると、泉佐野市は永遠にふるさと納税を活用できない。

(2)総務省の主な主張

・地方団体の自主性も、無制限に許されるものではなく、国家全体の利害や他の地方団体の正常な財政運営に与える影響をも考慮しつつ行動すべきである。
・2度通知を出したが言うことを聞かず、泉佐野市にも直接改善を要請したが聞き入れられなかった。
・指定するかどうかを過去の実績を元に判断することは合理的である。過去に基準を守らないものは今後も守らないと推認できる。
・法施行後にふるさと納税が禁止されるのであって、法律の遡及適用ではない。

(3)国地方係争処理委員会の判断

・総務省は、記載の虚偽と添付書類の不備を主張するが、申出書の記載および添付書類に不備はなく、不指定の理由にはならない。
・返礼品の豪華さを強調し多額の寄付(平成30年度は498億円)を集めた泉佐野市の行為は、他の自治体に不利益を及ぼしふるさと納税制度の存続が危ぶまれる状況を招いた。しかし、過去の募集態様等が基準に該当しないとしても、行為時点で違法ではなく、単に技術的助言に反する募集行為にすぎないのであるから、不指定の理由とすべきではない。
・国は、判断基準の設定、公表や理由の記載について地方自治法の趣旨にのっとり適切に対応すべきである。
・泉佐野市は、法施行後は返礼品を送付しないとしているのに、法定返礼品基準に適合しない募集を行う可能性ありといえるのか、検討を要する状況にある。
・よって、総務省は、泉佐野市に対して本決定の通知を受けた日から30日以内に、本決定の趣旨に従い、再度の検討を行った上で、その結果を理由とともに泉佐野市に通知することを勧告する。

●総務省はなぜ暴走したのか

今回の総務省の主張は法律的に考えると無理筋であることは否めません。法令の効力はその法の施行前にはさかのぼって適用されないという「法の不遡及」は法律の大原則だからです。本来、新制度スタート後に不適正な取り組みをしたかどうかで判断すべき事柄です。

では、なぜ総務省はこんな無理筋な決定をしたのかと言えば、総務省のメンツが潰されたからです。今回の件を噛み砕いていうと、総務省は「国が基準を示して自治体に従うように言ったのに、これに従わないのはけしからん。こうなった以上は、国の力を見せつけるため法律で規制するしかない」と考えたわけです。

ところが、泉佐野市は「法律で規制されるなら従わざるを得ないので、法律施行後は返礼品を送付しない」と宣言しました。総務省としては、「めんどうな法律まで作らせられて、やっと制裁を加えられると思ったのに、泉佐野市に制裁を加えられないのは許せない」ということで泉佐野市を強引に指定から除外したのでしょう。

総務省は、地方分権の旗振り役で、どの省庁よりもその重要性は理解しているはずです。にもかかわらず、このような失策をしてしまったのは、依然として国が地方を下に見ていることの表れだと思います。総務省はもとより霞が関の全省庁は、今回の決定を真摯に受けて、自らの行為におごりはないか襟を正す必要があるのではないでしょうか。

勧告を受けて、今後、総務省がどのような判断をするかが注目されますが、指定除外を取り消さなければ、泉佐野市は高等裁判所に提訴することができます。そうなれば、この問題は法廷の場で争われることになります(地方自治法251条の5)。今後も目が離せない状況が続きます。

<参考資料>
・総務大臣あての勧告と、泉佐野市長あての通知
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei01_02000178.html

・泉佐野市が指摘するふるさと納税の問題点
https://furusato-izumisano.jp/campaign/issue3-2.php

・国地方係争処理委員会における総務省と泉佐野市の主張
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/keisou/02gyosei01_04000337.html

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