海外留学に行った子供は「扶養」の対象になる?条件や手続き、提出書類について解説

扶養親族が1人減るだけで控除金額が大幅に下がります。ましてや19〜22歳の特定扶養親族では1人あたりの控除額は63万円のため、できれば控除から外れてほしくはないものです。
では、子供が海外留学した場合であっても、扶養控除の対象になるのでしょうか?このページでは、扶養控除の対象になる条件や手続きについて解説します。
目次
子供が留学しても扶養控除を受けられる
日本の税制では、16歳以上の所定の条件を満たす扶養親族がいる納税者は、控除対象となる扶養親族一人につき所定の扶養控除を受けることができます。
扶養控除を受けることで、所得から一定額が控除されるため、所得税と住民税の負担を軽減することができます。
結論としては、所定の条件を満たしている限りは、扶養親族が留学する場合でも扶養控除を受けることができます。以下で詳しく見ていきましょう。
扶養控除の条件となる扶養親族とは?
なぜ留学する場合でも、扶養控除を受けることができるのか、それは、扶養親族の条件が以下のように定められているためです。
扶養親族の条件
扶養親族とは、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人で、以下のすべての条件を満たす人のことです。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)、または里子や市町村長から養護を委託された老人
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が48万円以下 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)であること
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと
「生計を一つにしている」とは、簡単に言えば、生活費を負担していることを意味しています。つまり、同居をしているかどうかは、扶養親族の条件ではないため、留学している場合でも、生活費を負担するなど扶養親族としての条件を満たす場合には、扶養控除を受けることができます。
国外居住(非居住者)扶養親族の範囲が一部変更に
令和5年度から、海外に居住している(国外居住者)で30歳〜69歳の扶養親族は控除対象外となります。ただし、国外居住者でも留学生である場合は、扶養控除の対象となります。
扶養控除を受けるには書類の提出が必要
留学が1年以上継続し、扶養控除を受ける場合には、確認書類の提出が義務付けられています。
海外に居住している親族(国外居住親族)の扶養控除と、配偶者控除の適用を受けるためには、当該親族にかかる「親族関係書類」と「送金関係書類」「留学ビザ等書類」を用意する必要があります。
この3つの書類を、年末調整時または確定申告時に提出する必要があります。
親族関係書類
「親族関係書類」とは、次のいずれかの書類で、海外に居住している親族がその納税者の親族であることを証明するものです。外国語で作成されている場合にはその翻訳文も必要となります。
- 戸籍の附票の写し、その他の国または地方公共団体が発行した書類及びその非居住者親族の旅券(パスポート)の写し
- 外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類(非居住者である親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるもの)
送金関係書類
「送金関係書類」とは、その年に海外に居住している親族の生活費または教育費に充てるための支払いを行ったことを、明らかにするものをいいます。
次の内いずれかの書類が該当します。送金関係書類については、原本に限らずその写しも送金関係書類として取り扱うことができます。なお、外国語で作成されている場合にはその翻訳文も必要です。
- 金融機関が発行した外国送金依頼書の控え
- クレジットカードの利用明細書(契約は納税者が行い、国外居住親族が使用するためのクレジットカード)
- 電子決済手段(法定通貨の価値と連動等するステーブルコイン)の移転による支払いを証明する書類
送金関係書類に関する注意点
送金関係書類については、いくつか注意点があります。
まず、国外居住親族が複数人いる場合は、その親族ごとに送金などを行う必要があります。例えば配偶者と子供が海外に居住していて、配偶者に一括して生活費を送金した場合は、その送金関係書類は配偶者のものに該当し、子供の送金関係書類としては該当しません。
また、同じ国外居住親族に年3回以上送金を行った場合は、その年の最初と最後の送金関係書類と、一定の事項を記載した「送金関係書類の明細書」を提出することで、それ以外の書類提出を省略することができます。この場合、提出又は提示を省略した送金関係書類については、居住者本人が保管する必要があります。
なお、生活費を現金で手渡しした場合は、送金関係書類が存在しないため、扶養控除等の適用を受ける事ができなくなってしまいます。上記の方法で送金するようにしましょう。
留学ビザ等書類
「留学ビザ等書類」とは、次のいずれかの書類で、外国における留学の在留資格に相当する資格をもってその外国に在留することにより、国外居住親族になったことを証明するものです。外国語で作成されている場合にはその翻訳文も必要となります。
- 外国における査証(ビザ)に類する書類の写し
- 外国における在留カードに相当する書類の写し
留学先で収入がある場合はどうなる?
留学先での収入は「国外源泉所得」に該当するため、課税の対象となりません。そのため、留学先で収入があっても扶養控除は受けられます。
ただし、海外への滞在が1年未満の場合は国内居住者となるため、所得が生じた場所が日本国の内外を問わず、その全ての所得に対して課税されます。その際は収入が103万円を超えると扶養控除の対象外になるので、注意しましょう。
健康保険上の扶養にするには
ここまでは所得税や住民税における「税務上の扶養」について解説してきましたが、扶養には「健康保険上の扶養」もあります。
健康保険上の扶養に入った人は被扶養者とよばれ、健康保険料を納めなくても健康保険の給付が受けられます。
健康保険法の一部改正により、2020年4月から被扶養者の認定要件として、新たに日本国内に居住していること(国内居住要件)が追加されました。ただし、以下に当てはまる場合は例外として扱われ、扶養認定を受けることができます。
国内居住要件の例外となる人
- 外国で留学をする学生
- 外国に赴任する被保険者に同行する人
- 観光、保養またはボランティア活動なと、就労以外の目的での一時的な海外渡航者
- 被保険者の海外赴任期間に当該被保険者との身分関係が生じた者で、2と同等と認められる人
- 上記のほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる人
以上のことから、海外に留学している子供は、健康保険上の扶養にすることが可能です。なお、扶養認定を受ける際には、書類の提出が必要になります。
被扶養者の認定に必要な書類
海外に留学している子供が被扶養者の認定を受けるためには、健康保険被扶養者(異動)届に「国内居住要件の例外に該当する旨」の記載し、以下の添付書類のうち、いずれかの書類を添付して提出します。
- ビザ
- 学生証、在学証明書、入学証明書等の写し
- 海外赴任辞令、海外の公的機関が発行する居住証明書の写し
- ボランティア派遣期間の証明、ボランティアの参加同意書等の写し
など
不明な点があれば、健康保険被扶養者(異動)届を提出する勤務先に確認してみましょう。
おわりに
子供が海外留学をした場合でも、所定の条件を満たしていれば、扶養控除の対象となります。ただし、親族関係や送金の事実を証明する手続きや書類の提出は必須となります。
さらに留学先で収入があった場合は、留学期間や金額によって、扶養から外れてしまう可能性もあるので注意が必要です。扶養控除についてわからないことがあったら、税理士に無料で相談できる「みんなの税務相談」を利用してみましょう。
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