お葬式が終わったら、相続の前にやらなければならない3つの手続き

大切な家族が亡くなったとき、お通夜、告別式、火葬埋葬などについては、葬儀会社がサポートしてくれますので、さほど困ることはないでしょう。
ただ、それ以外の諸手続きについては、遺族が自発的に行う必要がありますので、どのような手続きがあるのか、もれなくおさえておかなければなりません。
今回は、遺産相続の手続きの前にまずやるべき、3つの諸手続きについて解説します。
目次
ポイントは「名義変更」「返却」そして「請求」の3つ
人が亡くなった場合、やらなければならない事務手続きを系統別に分類すると、次のようになります。
- 名義変更:被相続人の名義になっている各種契約関係を、親族の名義に変更する必要があります。
- 返却:被相続人が使用していた各種証明書関係については、死亡とともに返却しなければなりません。
- 請求:被相続人が亡くなったことで、遺族が請求できる給付があります。
これら3つの手続きについては、しばらくの間放置していても、誰からも指摘されない可能性があり、やらなければならないこと自体気がつかないケースもありますので注意が必要です。
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。
「名義変更」にも2つの種類がある
相続に伴う名義変更手続きには、大きく分けて2つの種類があります。
- 葬儀後にする名義変更手続き:お葬式が終わった段階で、必ず発生してくる名義変更手続きで、相続人同士で話し合う必要がなく、事務処理的な意味合いで行われる名義変更を言います。
- 遺産分割協議後にする名義変更手続き:遺産分割協議によって確定した相続人の名前に、それぞれの財産の名義を変更していきます。財産価値のあるものを名義変更するため、遺産分割協議が終わらないと、名義変更手続きもできません。
今回取り上げたいのは、相続の手続きとは関係なく、必ずやらなければならない「葬儀後にする名義変更手続き」です。以下のようなものがあります。
世帯主の変更
世帯主の方が亡くなった場合は、次の世帯主を誰にするか決めて「死後14日以内」に変更の手続きをする必要があります。
なお、夫と妻の二人暮しで世帯主である夫が死亡した場合は、夫の死亡届を出すだけで自動的に世帯主が妻に変更されますので、あらためて世帯主の変更手続きをする必要ありません。
公共料金の変更
電気、ガス、水道などの名義が亡くなった方のままになっている場合は、速やかに連絡をして名義を変更する必要があります。
口座引き落としにしている場合は、口座が凍結されてしまい引き落としができなくなるため、できる限り早めに変更しましょう。
賃貸借契約の変更
住んでいる住居が賃貸物件の場合、賃貸借契約の名義も変更する必要があります。なお、賃借権も相続の対象ですので、契約者本人が死亡したからといって、いきなり追い出されることはありません。
相続人が賃借人としての地位を相続して、引き続き住み続けることができます。 まずは、大家さんか管理会社へ連絡しましょう。
忘れがちな「返却」手続き
お葬式の段取りなどでバタバタしていると、忘れがちになるのが「返却」の手続きです。家族が亡くなった際、役所などに返却が必要になるものは、下記のように多岐にわたります。
健康保険証・高齢者医療被保険者証・身体障害者手帳の返却
地域の役所が返却の窓口となります。なお、亡くなった方が健康保険に加入していた場合、死亡によって扶養されていた家族にも手続きが必要になります。具体的には、死亡の日の翌日から被扶養者としての資格がなくなります。
被扶養者だった人は、「死亡の日の翌日から14日以内」に国民健康保険の加入手続きをすることを忘れないでください。
運転免許証の返却
警察署に返却します。その際、死亡診断書、戸籍謄本写し、印鑑などが必要になります。期限はありませんが、できる限り早めに返却しましょう。
パスポートの返却
最寄りのパスポート申請窓口に届け出ます。もしも外国にいる場合は、在外公館が窓口となります。
公的年金や医療費の給付「請求」も忘れずに
家族が亡くなった際には、年金の受給停止手続きが必要なことは、ご存知の方も多いのですが、未支給の年金を請求することも忘れてはいけません。年金は死亡した月の分まで受け取ることができます。
ただ、最後の年金については本人がすでに死亡しているため、本人が受け取ることができません。そこで、遺族から請求することで、故人の年金を受け取ることができます。これを「未支給年金」といい、故人と生計を一にしていた遺族が請求できます。通常は、年金の受給停止と一緒に申請をします。
また、国民年金に加入していた場合、遺族は遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金のいずれかを受給することができます。
この他にも、健康保険に加入していた場合、葬儀費用や埋葬料などの給付を請求することができます。支給される金額は、国民健康保険であれば市区町村によって、健康保険であれば健康保険組合や勤務先によって異なりますので、直接問い合わせて確認すると良いでしょう。
おわりに
このように遺産分割協議を始める前にも、様々な手続きをする必要があります。相続のことばかりに気をとられると、これらのことをうっかり忘れてしまうかもしれません。できれば、遺産相続に関する手続きは専門家である税理士などに任せて、ご遺族の方については、これらの事務手続きを確実にこなすことをおすすめします。
もっと記事を読みたい方はこちら
無料会員登録でメルマガをお届け!