「妻の口座にお金を移動」で贈与税がかかるって本当?夫婦間の資金移動で気をつけるべきポイントとは
贈与税

結婚すると、夫・妻どちらかの銀行口座を「夫婦の生活費口座」として利用するケースはけっこう多いだろう。
たとえば生活費口座の名義が妻で、夫が毎月生活費を入金した場合、贈与税の対象になるのだろうか。また、夫婦の生活費として使うつもりで、ある程度まとまったお金を振り込むとどうなるのだろうか。
夫婦間の口座のお金移動で、贈与になるケース、ならないケースについて、蝦名和広税理士に聞いた。
●夫婦間のお金のやり取りも贈与税の対象に。ただし例外がある
夫婦間のお金のやり取りには、原則として贈与税がかかります。ただし、すべてのケースで贈与税がかかるわけではありません。
贈与税の基礎控除は110万円なので、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下であれば贈与税はかかりません。また、生活費や教育費など、扶養義務をまっとうするために渡すお金は贈与税の対象外となっています。さらに、夫婦間で居住用不動産の購入資金を贈与する場合(※)には、最大2,000万円の特別控除が適用されます。
基本的に、上記3つ(基礎控除110万円以下、生活費等、2,000万円の特別控除)に当てはまらないケースでは、夫婦間であっても贈与税がかかる可能性があり、注意が必要です。
●生活費の範囲を超える高額資金の移動には注意!
夫婦間の口座のお金移動のケースでは、たとえば夫が毎月振り込む生活費の場合、額はそれぞれの家庭によって異なりますが、その家にとって通常の生活費であれば、贈与税の対象にはなりません。
一方、配偶者の口座へ自分の財産を分けること自体が目的とみなされるような、生活費とは言えない高額な資金移動は、贈与税が課せられる可能性が高くなります。また、振り込まれた生活費を別の使い道(へそくり・投資・不動産購入)などにあてた場合にも、贈与とみなされる可能性があります。
その他、夫婦間でのお金の貸し借りで、利息や返済期間が定められていなかったり、そもそも返してもらう気がないようなケースや、住宅ローンの頭金・返済資金を、名義人でない方が名義人のために振り込むケースなども贈与とみなされる可能性が高いです。
ほかにも、夫の退職金を妻名義の口座に入金した場合なども、110万円を超えるなら贈与税が発生します。「贈与」ではなく預けただけの「預け金」なら贈与税の対象にはなりませんが、夫が亡くなった際には、相続税の計算に加えることをお忘れなく。
※おしどり贈与:婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、最大2,000万円まで控除になる(一定の書類を添付して贈与税の申告が必要)
【取材協力税理士】
蝦名 和広(えびな かずひろ)税理士
特定社会保険労務士・海事代理士・行政書士。北海学園大学経済学部卒業。札幌市西区で開業、税務、労務、新設法人支援まで、幅広くクライアントをサポート。趣味はジョギング、一児のパパ。
事務所名 :Aimパートナーズ総合会計事務所
事務所URL:https://office-ebina.com