贈与税は0歳の子供でも必要?未成年者への贈与で注意すべき3つのポイントと節税対策

早いうちに子供や孫に自分の財産を渡しておくなどして、将来の相続税対策をしたいと考える方は多いのではないでしょうか。
未成年者への贈与は、成人相手の贈与と少し異なる点があり、方法を誤ると贈与が否認される場合もあるので注意が必要です。
この記事では、未就学児の子供など、未成年者への贈与を行う場合の注意点と、節税対策として有効になる贈与の方法を解説します。
目次
「あげます」「もらいます」で贈与が成立
贈与が成立するためには、あげる側(贈与者)の意思表示と受け取る側(受贈者)の受諾が必要です。
ただ贈与者が「あげます」という意思表示を一方的にしただけでは、贈与は不成立となってしまいます。たとえば、実際に口座へ振り込みを行なっていたとしても、受け取る側の受諾がない場合には、贈与の成立は認められません。
つまりは、お互いの「あげます」「もらいます」があって初めて贈与が成り立つということです。
0歳の子供など未成年者にも贈与ができる
未成年者への贈与はできないといわれることがありますが、これはよくある誤解です。
贈与には年齢制限がありませんので、相手が未成年者の子供でも贈与を行うことができます。また、未成年者の中には、意思表示ができない幼児(赤ちゃん)も含まれます。
未成年者に贈与をするときの3つの注意点
すでに説明したとおり、贈与は「あげます」「もらいます」で成立しますが、自我が芽生えていない赤ちゃんが相手の場合はどうすればよいのでしょうか。
贈与は民法上に規定されている法律行為であるため、未成年者が贈与を受ける場合には親権者の同意が必要になります。
したがって、0歳の赤ちゃんのように自ら意思を表示することができない場合や、子どもが贈与の事実を知らない場合でも、親権者が同意すれば、贈与が認められるということです。
しかし、贈与について「本当に贈与が行われたのか」を税務署から指摘されることがあります。
この際、贈与があった事実を客観的に証明することが必要です。贈与契約自体は口頭でも成立するものですが、贈与の事実を後から証明するためには、以下の対策を講じておくと良いでしょう。
1.口座振込による贈与
贈与するものが現金であるならば、手渡しよりも「口座振込」を利用することをおすすめします。
なぜなら、口座振込であれば、金銭の移動があった事実が金融機関の履歴に残るため、贈与事実を証明しやすくなるからです。
子供への贈与がなされた場合、親権者が管理を行うことが多く見受けられますが、あくまでも受贈者は子供であるため、親権者は安易な使用を行わないようにしましょう。預金の使い込みは、贈与の事実を否定することにもなりますので注意してください。
また、振り込み先の口座は親権者名義ではなく、受贈者(子供)名義の口座にすることが重要です。親権者名義だと名義預金を疑われて、贈与を否認される可能性が高くなります。
2.定期的な贈与をしない
行った贈与が「定期的な贈与」とみなされると、毎年110万円(贈与税の基礎控除額)以下であっても贈与税がかかってしまいます。
定期的な贈与とは、毎年一定金額の給付を目的とする贈与で、たとえば計500万円を毎年100万円ずつ分けて贈与するという契約や行為をいいます。定期贈与のトータル金額のうち、基礎控除額を超えた部分に応じて贈与税がかかります。
一方で、定期的に一定金額の贈与を行う契約ではなく、贈与毎に新たな贈与契約を結ぶ、ということが一般的な贈与となります。一般的な贈与は、贈与額が基礎控除額である110万円以下の場合は、贈与税はかかりません。
一般的な贈与のつもりであっても、「毎年100万円を5年間にわたって贈与する」という約束(契約)をしていた場合は、定期的な贈与とみなされる場合があります。
いずれの場合も、「毎年100万円ずつ贈与を行う」ことに変わりはないように見えますが、贈与税が課税されるか否かが変わるため注意が必要です。
3.贈与契約書を作成する
贈与した証拠を残すには「贈与契約書」を作成することが重要です。
「贈与契約書」とは、贈与があった事実を客観的に証明するための契約書面です。
口頭のみでの贈与に比べて、贈与の証明が容易になるため税務署から贈与の事実を否認されにくくなります。
また、贈与のたびに贈与契約書を書くことで、行なっている贈与が定期贈与ではなく、単なる連年贈与であることを示すことができます。
ここで、前述したような「500万円を毎年100万円ずつ分けて贈与する」旨の贈与契約書を書いてしまうと、その契約書自体が「定期贈与」の証拠となってしまいますので注意しましょう。
贈与契約書には、以下のような内容を記載します。
- 贈与者名(あげる人)
- 受贈者名(もらう人)
- 贈与の対象(金銭、不動産、株式譲渡など)
- 贈与の時期
- 贈与方法
未成年者の場合には、上記に加えて法定代理人である「親権者の氏名と住所」も必要になるので、忘れないようにしましょう。
未成年の子供でも贈与税を払わないとだめ?
受贈者が未成年者の場合でも、成人の場合と変わらず、贈与税の申告が必要です。
申告は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までにすることになっています。
成人の場合は本人が申告を行うことが一般的ですが、未成年者の場合は本人ではなく、「親権者」が代理で申告を行わなければなりません。
申告が必要な場合は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された額が、基礎控除額である110万円を超えたときです。
受贈者が未成年者のときの贈与税の計算方法
贈与税は、基礎控除110万円を超えた部分の金額(課税価格)に、以下の税率を掛けて計算します。
たとえば、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された額が120万円であれば、「120万円 − 110万円 = 10万円」で10%の1万円が贈与税として申告・納税が必要ということです。
課税価格(110万円を超えた部分の金額) | 一般税率 | 一般控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
200~300万円以下 | 15% | 10万円 |
300~400万円以下 | 20% | 25万円 |
400~600万円以下 | 30% | 65万円 |
600~1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1000~1500万円以下 | 45% | 175万円 |
1500~3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
受贈者が20歳以上で直系尊属より受ける贈与については「特例贈与」となり、上記とは異なる特例税率を用いて計算します。
相続時精算課税制度や非課税制度を活用して節税
「相続時精算課税制度」とは、生前贈与の際に2500万円までは贈与税が非課税になるという制度です。
贈与者が亡くなったときに、本制度を利用して贈与した分の財産額が、相続税の課税対象として加算されます。結果的には相続税として納めなくてはならないので、節税というよりは納税を先延ばしにできるというイメージです。
ただし、生前に財産を渡しておきたい場合や、課税額の計算は贈与時点での価格でされるため、値上がり確実な不動産を所有している場合は、制度の利用がメリットとなるケースもあります。
その他には、直系尊属から贈与された住宅資金、教育資金、結婚・子育ての資金について、贈与税の対象外となる制度があります。
適用には、一定の要件を満たすほか贈与税申告することが必要になります。子に資産を渡したいというときは、制度が利用できないか税理士に相談してみるとよいでしょう。
- 「教育資金一括贈与の特例」で最大1500万円が非課税に!手続きや適用要件まとめ
- 「結婚・子育て資金贈与の非課税措置」で最大1000万円が非課税!デメリットは?
- 住宅資金の贈与はいくらまで非課税?「住宅取得等資金贈与の特例」について解説
生活費や教育費であれば贈与税はかからない
贈与税は原則として贈与を受けたすべての財産を対象としますが、扶養義務者からの生活費や教育費として得た財産は贈与税の対象となりません。
つまり、夫婦間、親子間、兄弟間等の扶養義務者の範囲内で、生活費や教育費として贈与したものについては、非課税となります。たとえば、生活費や下宿としてのマンションの賃貸費の仕送り、学費や教材費、学習塾の負担などが該当します。
ただし、生活費や教育費であっても、社会通念上適当と認められる以上の金額だったり、生活費や教育費の名目で受け取ったものを、投資に回した場合や預金した場合には、贈与税の対象となるので覚えておきましょう。
おわりに
贈与を行う際には後々のいらない争い(争続)を防ぐためにも「贈与契約書」をしっかりと作成し、贈与があったことの証拠をきちんと残しておきましょう。
贈与税申告が必要になる場合や、生前対策の相談は、資産税の得意な税理士に相談することをおすすめします。
もっと記事を読みたい方はこちら
無料会員登録でメルマガをお届け!