コロナ禍で注目される「二拠点生活」…住民税はどこに払えばいいの?
住民税

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、テレワークが推進されている。そんな中、一部の人たちは「二拠点生活」に惹かれているようだ。
東京都内の専業主婦の女性(40代)は、ため息をつきながらこう話す。
「夫が昨年3月から在宅勤務を始め、実家のある千葉にセカンドハウスを買おうと言い出し、困っています。週の半分は都内、もう半分は千葉で、と考えているようです。通勤も電車でできるし、いざとなればすぐ自宅に戻れるからと言うんですが…」
ネット上にも、コロナ禍をきっかけに、二拠点生活を考え始めた人たちの声がみられる。従来の高級別荘地ではなく普通の都市部、豪華な注文住宅ではなくマンションでもいいと考えるなど、裾野は広がっているようだ。
このような国内二拠点生活の場合、住民税はどこに払えばいいのだろうか。新井佑介税理士に聞いた。
●総合的に判断…「子や妻の住んでいる場所」も考慮に
ーー住民税の支払先はどのように決まるのでしょうか
個人住民税は、地方税法にもとづき課税されます。同法は、『住所』を有する個人をその市区町村における納税義務者と定めています。
その上で、同法は住民票登録地と住所地が異なる場合には、住所地を住民票登録地とみなして、住民税を課することができるとしています。つまり、『住所』は、必ずしも住民票登録地ではなく、日常生活の状況から総合的に判断した生活の本拠地になると考えられます。
この点、通常は住所を有する市区町村に住民票があるわけですが、転出届の提出を失念した場合やDVなど様々な事情により住所地と住民票登録地が異なる場合、『住所』は生活実態に基づいて総合的に判断することになります。
二拠点生活の場合にも『住所』は同様に総合的に判断することになるでしょう。子どもや妻が実際に住んでいる場所や居住日数などは大きな判断材料となるでしょう。
●注意点はない?
ーーこの他、二拠点生活に踏み切る上で注意点があれば教えてください
個人住民税のお話は以上ですが、働き方改革などで二拠点生活が話題になっています。現在の生活基盤によって異なりますが、生活にかかるコストは拠点数に比例して2倍程度にはなるのではないでしょうか。二拠点生活から得られる経験や幸福感は金銭に換算できるものではありませんが、経済的負担増もまた現実です。
二拠点生活の成否はネットに答えは載っていませんし、憧れや流行だけで成功するほど楽ではないと思います。
二拠点生活は会社からの命令などによって強制的に始まるものではありません。自分で選択する生き方です。経済的負担や時間的制約などを乗り越える努力ができるかが成功のカギだと思います。
【取材協力税理士】
新井 佑介(あらい・ゆうすけ)税理士・公認会計士
AAG arai accounting group 代表。慶応義塾大学経済学部卒業後、BIG4系ファームを経て現職。教育関連事業や社会福祉事業、投資ファンド案件に積極的に関与している。
事務所名 :経営革新等支援機関 新井綜合会計事務所
事務所URL:https://www.aag-group.co.jp/