決算公告とは?義務付けられている公告内容や公告方法を解説

会社は事業年度ごとに財務状態、経営成績を「決算書」という形にまとめますが、株式会社は定時株主総会後に決算書を開示する「決算公告」が義務付けられています。
しかし決算公告について、正しく理解していない経営者や企業も少なくなくありません。そこで、この記事では決算公告で開示すべき内容や、3つの公告方法について解説します。
目次
決算公告とは
「決算公告」とは、法律により定められている財務情報の開示のことで、株式会社は会社法により決算公告が義務付けられています。具体的には会社法440条に次のように定められています。
公告の義務
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
ここでいう公告とは、官報その他の方法により、広く会社の情報を公開することです。なお、決算公告には罰則規定があり、怠った場合は100万円以下の過料が課される場合があります。
「義務」なのに決算公告をしていない企業も多い
実際には、公告義務があるにもかかわらず、決算公告を行っていない企業も少なくありません。
その理由として、決算公告に手間や費用がかかること、中小企業も決算公告が必要だと理解していないことなどが考えられます。
しかし、先述したように、決算公告は法律で義務付けられています。コンプライアンス(法令順守)の観点からも、決算公告を正しく行うことで社会的な信用を得ることができると考えるべきでしょう。
決算公告の内容
決算公告の内容は大きく分けると、大会社とそれ以外の会社の場合とで異なり、次のようになっています(会社法440条1項)。
大会社の場合
「貸借対照表」および「損益計算書」の両方の公告が必要となります。
なお、会社法における「大会社」とは、最終事業年度に関する貸借対照表に、資本金として計上した額が5億円以上、または、負債として計上した額の合計額が200億円以上の会社のことを指します。
大会社以外の会社の場合
貸借対照表のみが決算公告の対象となり、損益計算書の公告は必要ありません。
ただし決算公告の方法によって、掲載内容に多少の差異があり、官報や日刊新聞による公告であれば要旨だけでよいとされていますが、電子公告であれば全文の掲載が必要になるとされています。
また、会社の区分によっても公告内容に違いがあり、公開会社は財産の状態を明らかにするため、非公開会社に比べて適宜科目を細分化する必要があります。
そのため、決算公告の原稿は決算を依頼している税理士などの専門家に合わせて依頼して作成してもらうのが一般的です。
決算公告のスケジュール
会社法では、株式会社は「定時株主総会の締結後、遅滞なく貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表および損益計算書)を公告しなければならない」とされています。
この点、スケジュール上に明確な期限があるわけではありませんが、「遅滞なく」というのは合理的な理由がなければ遅れは認められないという意味のため、事情の許す限り早めに実施するのがよいでしょう。
決算公告が不要な場合
原則として、会社法の規定により、上場・非上場、公開会社・非公開会社の区別を問わず、すべての株式会社は決算公告を行う必要があります。しかし、次の会社については例外として決算公告が不要とされています。
金融商品取引法第24条第1項の規定により、有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社(会社法440条4項)
「有価証券報告書」とは、金融証券取引法に基づき作成・提出が義務付けられている書類です。会社の目的、役員、営業および経理などの状況、ならびに事業の内容に関する重要事項が記載されています。
有価証券報告書は、事業年度終了後3か月以内に作成・提出され、「EDINET」といわれる金融庁の情報公開システムにより広く開示されます。
このため、有価証券報告書の作成義務のある会社については、EDINETで開示されることになるため、決算書類の公告は不要とされています。
なお、有価証券報告書の作成義務のあるような企業では、多くの場合自社ホームページのIRページにて決算情報の開示を行っている場合も多いため、EDINETによらずとも決算情報を閲覧することができます。
インターネット上で決算の開示(電磁的公示)を行っている会社(会社法440条3項)
インターネット上で決算を開示している会社については、決算公告は不要とされています。
具体的には、定時株主総会の終結後、遅滞なく、賃借対照表(大会社の場合には貸借対照表および損益計算書)を、定時株主総会の終結の日後、5年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けられる状態にて開示している場合には、決算公告は不要とされています。
これは、ホームページで決算を開示することで、実質的に電子公告と同様の状況になっているため、別途決算公告をする必要がない、ということです。
ただしこの方法をとる場合、情報の提供を受けるために必要な事項として、情報を掲載しているURLを登記する必要があります。
公告の3つの方法

決算公告は定款に定められた方法にて実施する必要がありますが、定款で媒体を決定する際には、「官報公告」「新聞公告」「電子公告」の3つの方法から選択することができます。
なお、定款で公告の方法を定めていない場合には、官報への掲載を公告の方法として選択したものとみなされます。
方法1)官報公告
官報は、国の機関紙というべきもので、独立行政法人である国立印刷局が編集・発行しているものです。
料金については、新聞公告に比べるとリーズナブルとなっています。掲載するスペースによって料金は変動し、料金の目安は次のとおりです。
決算公告の内容は、貸借対照表(大会社においては貸借対照表と損益計算書)の「要旨」を掲載すればよいとされています。
方法2)日刊新聞紙による公告
新聞公告の場合、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に公告することになります。
日刊新聞は購読者が官報より多いため、官報に比べるとより広く通知することが可能です。一方で、掲載料は大手全国紙だと数十万円〜と官報より高額になるため、実務上は上場企業以外にこの方法を選択する企業は少ないと言えます。
実際の金額は新聞社によって料金は大きく異なりますが、業界新聞などは比較的利用しやすい金額になっています。
決算公告の内容は、官報と同様に、貸借対照表(大会社においては貸借対照表と損益計算書)の「要旨」を掲載すれば足りるとされています。
方法3)電子公告
インターネット上の自社のホームページを使用して、公告を掲載するなどの方法により行います。通常電子公告を出すときには、電子公告調査会社の調査が必要となり、その費用がかかるのですが、決算公告の場合は電子公告調査会社の調査は不要です。
そのため、すでに自社ホームページを保有している場合には、追加費用をかけずに公告することも可能です。
なお、電子公告の場合には、決算公告の内容は「要旨」だけではなく、「全文」を掲載することが必要です。さらに、官報・日刊新聞紙と違って、決算内容を5年間掲載し続けなければなりません。
おわりに
従来では、決算公告は法令上定められているため義務的に実施されているのみでしたが、近年ではコンプライアンスやCSRの状況などを広くアピールするための手段としてとらえられるようになってきました。
自社の状況を株主や債権者などに正確に知らせるためにも税理士などの専門家に相談し、決算公告についても適切に対応していきましょう。
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