剛田商店の店番をさせられる「ジャイアン」は労働・社会保険料の対象になる?
税金・お金
国民的漫画「ドラえもん」に登場するジャイアン(剛田武)は、親が営む剛田商店をしょっちゅう手伝っています。配達、店番、荷物運び・・・。小学生にしてはなかなかの戦力です。ただ、労働法や社会保険の観点から見たら問題ないのでしょうか。「家族の手伝いだから大丈夫」と言い切れるのでしょうか。
●そもそも小学生を働かせて大丈夫?
労働基準法は、中学卒業前(満15歳になった後の最初の3月31日まで)の子どもを労働者として使うことを原則禁じています。ジャイアンが他人の店で働かせられていたら、それは明らかにアウトです。
ただし、同居の親族だけで営む事業は労働基準法の適用外とされています。剛田商店が家族だけで回している個人商店であれば、ジャイアンはそもそも法律上の「労働者」に該当しません。家業を手伝う子どもは昔から存在しましたが、法律はこれを「労働」ではなく「家族内の営み」として制度の外に置いてきたのです。
●「扶養に入っているから大丈夫」は間違い
次に社会保険です。ここで多くの人が勘違いしやすいポイントがあります。
子どもは親の健康保険の扶養に入っているから問題ないと考えがちですが、「扶養に入る」という概念は、会社員が加入する健康保険(協会けんぽや組合健保)の仕組みです。被保険者である会社員の家族を「被扶養者」として同じ保険証でカバーする制度で、追加の保険料なしに家族を保護できます。
しかし剛田商店の両親は個人事業主として、健康保険ではなく、国民健康保険に加入している可能性が高いです。国民健康保険には「扶養」という概念がそもそも存在しません。
国民健康保険は世帯単位で加入する制度です。家族全員がそれぞれ被保険者としてカウントされ、保険料は世帯の人数や所得に応じて世帯主が納めます。ジャイアンが病院で診てもらえるのは「扶養されているから」ではなく、「家族全員が世帯として国保に加入しているから」です。
●手伝いのお小遣いは経費になるか
もしジャイアンが手伝いの対価として定期的にお小遣いをもらっていたとしたら、今度は税務上の問題が出てきます。
個人事業主は、生計を一にする家族への給与を「専従者給与(青色申告)」や「専従者控除(白色申告)」として必要経費に算入できる制度があります。ただしこれには、その年の12月31日時点で15歳以上であることが条件です。
ジャイアンは小学生なので、この要件を満たしません。母親がジャイアンへの支払いを経費計上しようとしても、税務上は認められないということになります。
●配達中に怪我をしたら?
ジャイアンが配達中に転んで骨折した場合、労災保険は使えるのでしょうか。
通常の労災保険は「労働者」を対象とするため、家族従業者は対象外です。ただし、中小事業主や家族従業者は「特別加入」制度を使えば労災保険の保護を受けられる仕組みがあります。しかしこれは任意加入です。加入手続きをしていなければ、怪我をしても労災給付は一切受けられません。治療費は国民健康保険から3割負担で給付されますが、休業中の補償などはゼロです。
●家族経営の「盲点」
家族の手伝いは法律の想定外として制度の隙間に入っており、一見問題ないように見えます。しかし剛田商店がパートを1人でも雇った瞬間、労災保険などの労働保険への加入義務が発生します。さらに規模が大きくなり従業員が5人以上になると、社会保険の手続き義務も発生します。これは現実の中小企業でもよく見られるパターンです。
ジャイアンの店番は、問題ない形となっていますが、例外扱いと行った方がいいかもしれません。















