決算修正はどう対処すべき?間違えたときの修正方法や必要となる税務手続きとは

決算期は慌ただしいため、漏れや誤りがないよう何度も確認していても、思いもよらない間違いが発生することがあります。決算書や確定申告書は、会社にとって非常に重要なものにあたるため、決算が終わった後に、本来計上するべきであった売上や費用が未処理となっているのを発見した場合、誤りの内容によっては修正が必要になります。
そこでこの記事では、決算や確定申告を修正する際の具体的な方法についてまとめました。
目次
決算修正とは?
決算は、株主総会で承認されることで確定します。株主総会の承認前であれば通常の決算作業の中で修正を行えばよいのですが、株主総会の承認後に誤りが判明した場合は、既に確定した決算を修正しなければなりません。
このようにすでに決定している決算内容に間違いがあった場合、それを修正することを決算修正といいます。
決算を修正しなければならないのは、重要な誤りであると判断される場合です。たとえば大口案件の売上について、商品の引渡しまで完了しているのに売上処理を行っていなかったり、大口案件の委託費用で業務が期末までに完了していないのに、費用計上してしまったというようなケースが該当します。
このような場合には、会社の損益計算に影響があるため、税金の額も変わってきます。そのため、会社の決算書および税務署に提出した確定申告書を修正することになります。
決算修正の方法
決算の修正といっても原則的には、すでに承認された決算について取り消したり、直接訂正したりすることはできません。
具体的な修正方法としては、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」に基づいて処理をすることになります。ちなみに会計基準とは、財務諸表の作成に関するルールのことです。
この会計基準が適用されるより以前は、過去の誤りは「前期損益修正項目」として、当期の損益で修正する方法が示されていました。
しかし、それでは過去の数値が当期の損益計算に含まれることになり、当期の純利益などが純粋に、当期の業績結果を表したものではなくなります。そのため、この会計基準では原則として、決算修正をする場合には「修正再表示」を行うものとし、遡及処理することとしています。
具体的には当期の決算書作成の際に、過去の決算書において誤りを訂正したと仮定して影響額を反映し、訂正した内容を注記するといった対応を行います。
ただし例外として、重要性が低いと判断されるような場合には、修正再表示をせず、営業外損益や特別損益として、当期の決算書において反映させることになります。
この会計基準に沿った処理を求められるのは、会計監査人の監査を受ける必要のある大企業です。
中小企業においては、現時点では中小企業の会計に関する指針でも明確に強制されていないため、従来の処理を継続している場合もあるようです。
決算修正の具体例と対処方法
それでは決算修正の方法について、具体例を挙げて解説します。
1)勘定科目が間違っていた場合
たとえば資産・負債勘定で使用するべき勘定科目の名称が誤っていた場合や、長期と短期の分類を間違えていたような場合です。ちょっとした勘定科目の誤りであれば、金額や内容によりますが、通常はそこまで重要性の高い問題ではないと考えられます。
そのため、損益計算や税額計算に影響を及ぼさないのであれば、基本的には当期の決算書を作成する際に、正しい科目を使用すれば問題ありません。
資産・負債の長期と短期の分類に誤りがあった場合には、当期の期首に振替仕訳を作成し、修正仕訳であることが分かるように摘要などに記載しておくことで対応します。
2)収益の計上が漏れていた場合
本来であれば前期に計上するべきであった大口の売上が計上されておらず、入金された現金についても前期の帳簿には未記載となっているような状態です。
このような場合、前期の売上高が増加し、利益もその差額分増えることになります。そのため、前期決算の損益計算が変わり、連動して税額も変わってくることになります。
会計上の対応としては、当期首の利益剰余金を増額するなどの修正再表示を行います。
なお、収益が多く計上されていた場合は、当期首の利益剰余金を減額するなどの修正再表示を行うこととなります。
3)費用の計上が漏れていた場合
たとえば前期に完了して費用計上するべきであった委託費について、未払金計上の処理がされておらず、費用の計上が漏れているようなケースです。
会計上の対応としては、当期首の利益剰余金を減額するなどの修正再表示を行います。
なお、費用が過大に計上されていた場合は、当期首の利益剰余金を増額するなどの修正再表示を行うこととなります。
決算修正に伴う税務上の手続き
決算修正の結果、過年度の損益計算に影響がある場合は、過年度分の税額が変わることとなります。
確定申告書は、提出期限が過ぎた後でその内容を修正するためには、修正申告または更正の請求という手続きを行う必要があります。
修正申告が必要なケース
「修正申告」は、納める税金が少なすぎた場合や、還付される税金が多すぎた場合に必要となる手続きです。前述の具体例でいうと、(2)の収益の計上漏れが発覚した場合が該当します。
収益の計上漏れでは、決算修正の結果として利益が増加し、納めるべき税額も増えることとなるため、修正申告をすることで誤った内容を訂正し、追加で税金を納めます。
このときには、追加で納付が必要となる税金に対して、延滞税を合わせて納めることになります。また、場合によってはさらにペナルティとして過少申告加算税も課せられることがあります。
延滞税額は、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じて計算されることになり、また、加算税についても税務署からの通知を受ける前に修正申告を行うことで対象外となるので、誤りに気が付いたらできるだけ早く修正申告することが重要です。
修正申告の方法
修正申告の際は、修正申告書および必要に応じて追加書類を税務署に提出します。
法人の修正申告の場合は、法人税申告書別表一(一)の所定の欄に「修正確定」と記載し、修正申告書であることを明示します。

申告内容によって詳細な記載方法は変わってくるため、税務署や税理士などの専門家に相談しながら進めるといいでしょう。
なお、修正申告に期限はありませんが、前述の通り税務署の調査の後で提出することになるとペナルティが追加されるため、明らかな誤りであれば早めに修正することが望まれます。
更正の請求が必要なケース
「更正の請求」は、納める税金が多すぎた場合や、還付される税金が少なすぎた場合に必要となる手続きです。前述の決算修正の具体例でいうと、(3)の費用の計上漏れが発覚し、結果として税額が少なくなるような場合が該当します。
決算を修正することで利益が減少し、本来納めるべき税額が減ることになるため、更正の請求をすることで還付を受けられます。
なお、還付される金額は、当初の申告内容と訂正分との差額となるため、ケースバイケースです。更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内となります。
更正の請求の方法
更正の請求の際は、更正の請求書を税務署に提出します。
更正の請求書を提出すると、税務署はその内容を検討して、納めすぎの税金がある(繰越損失の金額が増える場合を含む)と認めた場合には、減額更正をして税金が還付されます。
更正の請求書は、国税庁のホームページからダウンロードできます。
おわりに
決算期は忙しいため、ミスをなくそうと思ってもなかなかゼロにすることは難しいかもしれません。
ただし重大な誤りが発生し、決算後に決算の修正や修正申告を行わなければならなくなると、より手間が増えてしまいます。
また、頻繁に決算修正を行っていると、決算の適正性も疑われかねません。万が一の際の修正方法を理解したうえで、大きな修正が発生しないよう、日々の実務を確実にこなしていきましょう。
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