「社団法人」と「財団法人」の違いとは?設立するのはどちらが良い?

大学のサークルや町内会などの団体・組織が法人格を得たいというときには、「社団法人」や「財団法人」にするという選択肢があります。簡単にいうと、社団法人は「人の集まり」で、財団法人は「財産の集まり」のことです。さらにそれぞれ「一般」と「公益」に分けられます。
この記事では、社団法人と財団法人の特徴や、かかる税金について解説します。設立を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
社団法人とは
社団法人とは、一定の目的を持って集まった集団のうち、法人格が与えられた非営利団体のことをいいます。
たとえば、業界団体や医療系学会、資格認定機関や介護事業など、営利を目的としない集まりで社団法人を設立するのが一般的です。また、協会、学会などの会員制の組織、同窓会、町内会、サークルなどを法人化するときにも、社団法人が適しているといわれています。
一般と公益がある
正確にいうと社団法人という法人格はなく、「一般社団法人」または「公益社団法人」となります。
一般社団法人とは、営利を目的としない非営利団体です。事業活動にはほとんど制限がなく、基本的に自由に活動することができます。
ここでいう非営利とは、利益を上げることが禁止されているという意味ではなく、生じた利益を理事や社員(構成員)に分配してはいけないという意味です。利益は事業に使ったり、法人に蓄えていくことになります。なお、給料や役員報酬として金銭を支払うことはできます。
一方で公益社団法人とは、公益目的事業を主に行う法人のことです。
認定を受けるには「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」に定められる23種類の事業分野に該当すること、公益目的の事業費が全体の支出の50%以上を占めていることなどがあります。
公益社団法人は、認定申請が受理されないと設立することができません。その代わり、公益目的事業で得た収益が非課税になるといった、税制上の優遇措置を受けることができます。
設立の方法やかかる税金
一般社団法人を設立するには、設立時に社員が2名、理事が1名必要で、理事は社員と兼任することができます。
一般社団法人を設立する手順は、下記のとおりです。
- 定款を作成し、公証人の認証を受ける
- 設立時理事や設立時監事、設立時会計監査人の選任を行う
- 設立時理事が設立手続の調査を行う
- 設立時理事または設立時代表理事が、法務局に設立の登記の申請を行う
かかる税金は、法人区分が「普通法人」か「公益法人」かで、課税所得の範囲と税率が異なります。
一般社団法人のなかでも、「非営利型」の条件を満たすと、課税所得の範囲や税率が公益社団法人と同様になるなど、優遇措置が受けられます。
公益社団法人 | 公益認定を受けていない一般社団法人 | ||
---|---|---|---|
非営利型法人 | 非営利型法人以外の法人 | ||
法人税法上の法人区分 | 公益法人等 | 普通法人 | |
課税所得の範囲 | 収益事業から生じた所得が課税対象 | 全ての所得が課税対象 | |
税率 | 年800万円以下の部分:19%(15%※) | 23.2% |
メリット・デメリット
社団法人のメリットとしてまず挙げられるのは、拠出金(資本金)が不要ということです。法律の要件を満たせば誰でも設立でき、事業内容に制限がなく、行政庁に対する事業報告義務も必要ありません(決算公告は必要)。また、個人や任意団体と比べて、社会的な信用度も高くなります。
デメリットとしては、利益を社員に分配できないこと、営利と非営利をきちんと分けなければならないので会計処理が複雑になることが挙げられます。また、税務関係等の書類の作成が法人扱いになるので、任意団体よりも管理が難しくなります。
財団法人とは
社団法人に対し、財団法人とは、個人や団体から拠出された財産の集まりに対して法人格が与えられた非営利団体のことをいいます。
拠出された財産を運用して利益を出すという仕組みから、設立時に300万円の拠出金が必要になるのが、社団法人と大きく異なる点です。
財産の集まりに対して法人格を与えるという性格上、社員という概念はなく、理事や評議員を置く必要があります。
財団法人の例としては、美術、学術、芸術など文化財の保護事業団体、スポーツの振興事業団体、奨学金事業団体や育英会、ボランティアなどの福祉活動団体、学校法人などがあります。
一般と公益がある
財団法人にも社団法人と同様に、「一般財団法人」と「公益財団法人」があります。
一般財団法人は、2008年12月に施行された「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」により設立できるようになった法人です。この法律により、一定額以上の拠出金があれば目的に制限はなく、誰でも一般財団法人を設立することが可能になりました。
また、一般社団法人と同様に、営利を目的としない非営利団体となります。生じた利益を分配することはできませんが、給料や役員報酬を払うことができます。
公益財団法人は、一般財団法人のうち国や都道府県より公益認定された財団法人のこといいます。認定を受けるには「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」に定められる23種類の事業分野に該当すること、公益目的の事業費が全体の支出の50%以上を占めていることなどがあります。
設立の方法やかかる税金
一般財団法人の設立時には、設立者1名、理事3名、評議員3名、監事1名の最低7名が必要です。さらに、300万円以上の財産の拠出も必要になります。
一般財団法人を設立する手順は、下記のとおりです。
- 定款を作成し、公証人の認証を受ける
- 財産(価額300万円以上)を拠出する
- 設立時評議員、設立時理事、設立時監事(設立時会計監査人を置く場合は設立時会計監査人を含む)の選任を行う
- 設立時理事及び設立時監事が設立手続きの調査を行う
- 設立時理事または設立時代表理事が、法務局に設立の登記の申請を行う
かかる税金は、法人区分が「普通法人」か「公益法人」かで、課税所得の範囲と税率が異なります。
一般財団法人のなかでも、「非営利型」の条件を満たすと、課税所得の範囲や税率が公益社団法人と同様になるなど、優遇措置が受けられます。
公益財団法人 | 公益認定を受けていない一般財団法人 | ||
---|---|---|---|
非営利型法人 | 非営利型法人以外の法人 | ||
法人税法上の法人区分 | 公益法人等 | 普通法人 | |
課税所得の範囲 | 収益事業から生じた所得が課税対象 | 全ての所得が課税対象 | |
税率 | 年800万円以下の部分:19%(15%※) 年800万円超の部分:23.2% ※2019年3月31日までの間に開始する事業年度に適用 (2019年度税制改正により2021年3月31日まで延長予定) | 23.2% |
メリット・デメリット
財団法人のメリットは、法定の要件を満たせば誰でも設立でき、事業内容に制限もなく、行政庁に対する事業報告義務も必要ない(決算公告は必要)という点が挙げられます。また、個人や任意団体と比べて、社会的な信用度も高くなります。
デメリットは、一般社団法人と同様に利益の分配ができなかったり、会計や税務関係が任意団体よりも複雑になったりするという点です。また、社団法人のように基金制度が設けられないというデメリットもあります。
社団法人と財団法人の違い【比較表】
これまで説明した、社団法人と財団法人の違いをわかりやすくするために、以下の表に特徴をまとめました。
一般社団法人 | 一般財団法人 | |
---|---|---|
設立者 | 社員2名以上 | 1名以上 (財産を拠出する人。社員は存在しない) |
対象 | 人の集合 | 財産の集合 |
財産の拠出 | 不要 (基金制度を設けることができる) | 300万円以上 (返還はできない) |
利益の分配 | 不可 | 不可 |
最低必要人数 | 2名 (社員2名、理事1名。※社員は理事との兼任が可能) | 7名 (理事3名、評議員3名、監事1名) |
設立にかかる期間 | 1か月程度 | 1か月程度 |
会計監査人 | 大規模法人には必要 | 大規模法人には必要 |
理事会の設置 | 任意 | 必須 |
最高意思決定機関 | 社員総会 | 評議員会 |
設立の要件でいえば、一般社団法人のほうがハードルが低いといえます。
NPOやNGOとの違い
NPO・NGO法人は設立当初に理事3名、監事1名が必要で、さらに社員が10人以上必要になります。法人格を持つためには、申請および審査が必要となり、要件も厳しくなります。
また、活動範囲は特定非営利活動のみとかなり制限されます。さらに、所轄庁への報告義務があり、設立までに3〜5か月と時間がかかるのも特徴です。
団体や組織が法人格を得るメリット
任意団体や組織が法人格を取得することのメリットは、以下のようなことが挙げられます。
法人名義での契約
任意団体では、銀行口座の開設やオフィスの賃貸契約の際は個人名しか使用できません。法人格を取得することで、法人名義で口座開設や賃貸契約ができるようになります。
法人名での登記
任意団体では、個人名でしか土地・家屋等の不動産を取得することができませんが、法人名で登記ができるようになります。また、有価証券等への投資も法人名義で行えます。
資金調達がしやすくなる
任意団体では対象外だった助成金や補助金などが、法人では対象となることがあります。金融機関からの融資も受けやすくなるなど、資金調達の幅が広がります。
有限責任になる
任意団体は、借り入れなどについて個人名義で行う必要があるため、経営が悪化した際は、その個人が負債を負うことになります。法人の場合は、出資金の範囲での責任となります(一部無限となる法人格もあります)。
節税効果が高い
法人の場合、家族従業員に対する給与を損金扱いにすることができます。また、個人の所得税より法人税のほうが最高税率が低いため、個人の財産を法人に移することで、節税効果を得やすくなります。
社団法人は、株式会社のように持分がないため、かつては相続税が課税されませんでした。この仕組みを利用し、節税を目的とした一般社団法人の設立が増えたため、2018年度の税制改正により、一般社団法人の相続税の見直しが行われました。
一般社団法人の役員が亡くなった場合は、被相続人を含む同族役員の頭数で純資産額を按分したものをその役員の相続財産とみなし、相続税の課税対象とすることになりました。つまり、一般社団法人を活用した相続税の節税スキームは、封じられたということです。
おわりに
社団法人や財団法人は、基本的には事業内容に制限がなく、税制優遇も受けられるなど、メリットの多い法人形態といえます。ただし、任意団体と比較すると煩雑な会計処理が求められるなど、法人の税務手続きは複雑になります。
設立を検討している方は、社団法人や財団法人の設立に詳しい税理士に、設立準備から各種申告業務の相談をしてみることをおすすめします。
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