法人格とは?種類や特徴、取得するメリットをわかりやすく解説

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法人格とは?種類や特徴、取得するメリットをわかりやすく解説

監修: 屋 倫平 税理士

「法人格」を得ることでさまざまなメリットがあります。

しかし、法人格はその種類によって特徴が異なるため、会社設立の際には「どの法人格にすべきか」と迷う方もいるでしょう。

そこでこの記事では、法人格を取得するメリットや種類、特徴、略称についてわかりやすく解説します。それぞれの法人格についてしっかりと確認し、自身に有利な法人格を決めましょう。

目次

法人格とは

法人格について知る前に、「法人」についておさらいしましょう。

「法人」とは、一定の活動を営む組織が法律上で人格を認められ、権利・義務の主体となる権利能力を与えられたものをいいます。

そして、この権利能力のことを「法人格」といいます。

本来は組織に権利能力はありませんが、法律によって法人格を得ることで、法人の名のもとに取引を行ったり、資金を所有することができるようになります。

一方、「人間」の場合は自然人として、生まれながらにしてこの権利能力を取得しています。

法人格を得るメリット

法人格の取得は、法律上の人格を得ること以外にも、以下のようなメリットがあります。

社会的な信用を得られる

まず挙げられるメリットが、「社会的な信用を得られる」ことです。

たとえば、組織が単なる個人の集合である場合は、取引における責任の所在や事業の実態などが不明瞭になりがちですが、法人化することでそれらを明確にすることができます。

融資を受けたい場合にも選択肢が増えますし、個人と比べて審査が通りやすくなる可能性もあります。

節税対策になる

個人の所得税よりも、法人税のほうが最高税率が低く、経費(損金)にできる範囲が広いなど、法人は税制上優遇されています。

そのため、事業収益の金額(所得)によっては法人格を取得することで「節税対策」につながります。

事業承継の円滑化

事業や活動を後世に遺したいのであれば、「事業承継」を見据えて法人格を得るという選択肢もあります。

法人格を得ていれば、事業用資産と負債は法人に属するため、後継者が株式を継承することで事業の継続が可能であるなど、個人の事業承継に比べて有利な点が多いと言えます。

法人の種類

法人格を得るために、どの法人形態にするか選ぶためにも、法人の種類や特徴について知っておきましょう。

一般的に法人を設立する際には、「営利法人」と「非営利法人」のいずれかになります。

営利法人

営利法人とは、利益を分配することを目的とした法人のことで、「株式会社、合同会社、合資会社、合名会社」があります。

それぞれの特徴をまとめたのが以下の表です。

営利法人の比較表
 株式会社合同会社合資会社合名会社
設立方法定款の認証後、登記をして設立する登記をして設立する
(定款の認証は不要)
登記をして設立する
(定款の認証は不要)
登記をして設立する
(定款の認証は不要)
設立時資本金1円以上定めなし定めなし定めなし
設立時最低社員数1人1人2人
(無限責任社員1人以上)
1人
出資者の責任範囲有限責任有限責任有限責任/無限責任無限責任
設立時の登録免許税資本金の0.7%
(最低15万円)
資本金の0.7%
(最低6万円)
6万円6万円
決算公告必要不要不要不要
余剰金の分配出資比率に応じて分配自由に決められる自由に決められる自由に決められる
税制等全所得課税全所得課税全所得課税全所得課税

このほかにも役員の決め方などに違いがありますが、もっとも大きな違いは、出資者責任の範囲です。

「株式会社・合同会社」は有限責任社員で構成されるため、会社が倒産して債務を弁済できない場合には、社員は出資額などの限定された範囲でのみ責任を負うこととなります。

一方で、「合資会社」は有限責任社員と無限責任社員、「合名会社」は無限責任社員で構成され、会社が債務を弁済できない場合は、無限責任社員が債務を負うことになります。

このようなリスクを避けるのであれば、株式会社または合同会社を選択するといいでしょう。

株式会社

株式会社は、法人形態として知名度があるため信用度が高く、資金調達の手段も多様にあるというメリットがあります。会社を大きくして将来上場を目指すのであれば、株式会社を選択すべきでしょう。

合同会社

合同会社は、株式会社と比べて低コストで設立できます。また株式会社のように、株主総会や取締役会などを開催する必要がないため、迅速かつ柔軟な経営ができるといったメリットがあります。

上場することはできないので、個人のもつ能力を生かした事業や、資産管理会社、あるいは低コストで法人化したい許認可が必要な事業などに向いています。

合資会社・合名会社

合名会社・合資会社は合同会社と同様に、設立費用が安く、決算公告が不要です。いずれも前述のように、会社が倒産した際には無限責任社員が債務を追うため、近年では設立件数が少なくなっています。

非営利法人

非営利法人は、営利を目的としない法人をいいます。「NPO法人、一般社団法人、一般財団法人」などが当てはまります。利益の分配を行わないだけで、利益を出してはいけないという決まりはありません。

以下にそれぞれの特徴をまとめました。

非営利法人の比較表
 NPO法人(特定非営利活動法人)
認定NPO法人
一般社団法人
一般財団法人
公益社団法人
公益財団法人
社会福祉法人
設立方法【NPO法人】
所轄庁から認証を受け、登記をして設立する
【認定NPO法人】
NPO法人のうち、認定基準を満たした場合、所轄庁の認定を得られる
定款の認証後、登記をして設立する一般社団法人・一般財団法人設立後、公益認定を受ける所轄庁からの認可後、登記をして設立する
設立要件社員10人以上(常時)活動内容が20種類に限定【一般社団法人】
社員2人以上
【一般財団法人】
300万円以上の基本財産が必要
認定基準を満たしていること一定以上の規模または一定以上の資産
設立時の登録免許税不要6万円6万円不要
決算公告必要必要必要必要
余剰金の分配分配できない分配できない分配できない分配できない
税制等【NPO法人】
・収益事業課税
【認定NPO法人】
・収益事業課税
・みなし寄附金制度
【非営利型】
・収益事業課税
【非営利型以外】
・全所得課税
・収益事業課税
・みなし寄附金制度
・利子・配当等に係る源泉所得税の非課税
・収益事業課税
・固定資産税、不動産所得税、領収書の印紙税の非課税

設立要件や役員の定めなどについては、それぞれ異なりますが、もっとも大きく異なる点は、課税される税金です。

法人税法上の非営利型法人の要件に該当している場合、法人税についてはいずれも収益事業以外の収益に関しては非課税となっています。

また、公益社団法人・公益財団法人と社会福祉法人は、非課税となる範囲が広いなど税制上の優遇措置が設けられています

NPO法人・認定NPO法人

NPO法人は、特定非営利活動促進法によって定められている社会活動を行う民間の非営利組織のことです。NPO法人の中でも更に厳しい基準をクリアすると、「認定NPO法人」になることができます。

NPO法人は、福祉活動を行っている団体や地域の文化振興団体などが向いています。

一般社団法人・一般財団法人

一般社団法人は、人の集まりに対して与えられる法人格です。

必ずしも公共の利益をはかることを目的としておらず、事業目的が自由なため、さまざまな活動で法人格が取得しやすいという特徴があります。そのため、実業団や社会福祉系の団体などの法人設立におすすめです。

対して一般財団法人は財産の集まりに対して与えられる法人格です。設立時に300万円の財産の出資が必要となります。

公益社団法人・公益財団法人

一般社団法人と一般財団法人のうち、厳しい基準をクリアして「公益認定」を受けると公益社団法人、公益財団法人になることができます。

公益認定を受けるには公益目的事業を行う必要があるので、高齢者の福祉の増進活動や地球環境の保全活動などを行う団体で、かつ一般社団法人・財団法人よりも信用が必要な団体の法人設立に向いています。

社会福祉法人

社会福祉法人は、公益事業や収益事業のほか、社会福祉を目的とする事業を行うことができます。

なお、設立には厳しい要件があるので、社会福祉法人でなければできない特別養護老人ホームの運営などの事業に向いています。

法人格の略称

法人格にはそれぞれ漢字とカタカナの略称があります。漢字は領収書や簡易的な書類の作成などに、カタカナは銀行の振り込み名義などに使われます。以下の一覧表を参考にしてください。

法人格の略称一覧
法人の種類漢字の略称カタカナの略称
先頭に使うとき途中に使うとき末尾に使うとき
株式会社(株)カ)(カ)(カ
合同会社(同)ド)(ド)(ド
合資会社(資)シ)(シ)(シ
合名会社(名)メ)(メ)(メ
NPO法人 (特定非営利活動法人)(特非)トクヒ)(トクヒ)(トクヒ
一般社団法人(一社)シヤ)
公益社団法人(公社)
一般財団法人(一財)ザイ)
公益財団法人(公財)
社会福祉法人(福)フク)

法人格を得るには?

「株式会社、合同会社、合資会社、合名会社」といった営利法人は、設立登記をすることで、法人格を取得することができます。

「NPO法人、一般社団法人、一般財団法人」などの非営利法人も同様に、設立登記をすれば法人格を取得できます。ただしNPO法人と社会福祉法人は、登記の前に所轄庁から認証・認可を受ける必要があります。

法人格の変更はできる?

まずは、設立費用が抑えられる合同会社で設立したものの、あとから株式会社に変更したいというケースもあるでしょう。

「株式会社、合同会社、合資会社、合名会社」などの営利法人は、ほかの営利法人へ組織変更することができます

ただし、営利法人から非営利法人への変更はできません。同様に、「NPO法人、一般社団法人、一般財団法人」などの非営利法人から営利法人への組織変更もできません

非営利法人からほかの非営利法人への変更は、法人形態によって異なります。

非営利法人同士の組織変更

NPO法人と社会福祉法人は、いずれの法人へも組織変更できません。

一般社団法人から公益社団法人へは公益認定を受けることで、公益社団法人から一般社団法人へは公益認定の取り消し申請をすることで、それぞれ変更が可能です。

また、一般財団法人と公益財団法人も同様に、それぞれの間で変更することができます。

変更が認められていない法人へ変更する場合は、一度解散をしてから、新たに法人格を取得する必要があります。

法人格が否定されることも

法人格の濫用や形骸化などが発覚した場合、取得した法人格が否認されることがあります。

法人格が否認されると個人として責任を追求されることとなり、これを「法人格否認の法理」といいます。

法人格否認の法理が適用されると、会社名義の取引でも個人の法律行為とされるのです。

法人格が否認されるのは、具体的には以下のようなケースです。

  • 強制執行を免れるため、あるいは隠匿するため法人を設立し、財産を移転した場合
  • 会社と支配株主の財産や業務が混合している場合
  • 株主総会・取締役会が開催されていない場合

反対に、個人の法律行為であっても会社の法律行為として認められることもあります。

法人格で迷ったら税理士に相談しよう

法人は、種類によって特徴があり、メリットやデメリットもさまざまです。また、業種や活動内容によってどの法人格が適しているかが異なるため、法人格を得る際には、充分に検討する必要があります。

設立する法人形態によっては、会計・税務が複雑になり、特に非営利法人ではより高い専門性を要する場合があります。

そのため、場合によっては会社設立時から顧問税理士に相談しながら、設立準備を進めると安心でしょう。

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