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一般社団法人を使った相続税・贈与税の節税ができなくなる?平成30年税制改正での注意点とは

法人というと一般的には「株式会社」をイメージする人が多いと思いますが、他にも医療法人や宗教法人、財団法人など様々な種類の法人があります。

そんな中、今からおよそ10年前の平成20年の法改正によって、比較的簡単に設立できるようになったのが「一般社団法人」です。実は、一般社団法人をうまく活用すると、「相続税」や「贈与税」を効率的に節税できるということで、それを目的に一般社団法人を設立する人が増えました。

ところが、平成30年の税制改正によって一般社団法人を使った節税スキームが使えなくなったと言われており、ちょっとした波紋を呼んでいます。

この記事では、「一般社団法人を使った節税スキーム」とはどんな内容なのか、「平成30年の税制改正でどのような影響が出るのか」について詳しく解説していきます。

目次

一般社団法人ってどんな法人?

節税スキームを解説する前に、まずは「一般社団法人」の特徴について簡単に触れておきたいと思います。

一般社団法人とは、簡単にいうと「人の集合体」に対して法人格を与えたものです。

名前くらいは知っているという方も多いかと思いますが、なかなか関わる機会が少ないため、株式会社に比べると馴染みが薄いのではないでしょうか。

株式会社といえば、当然のことながら「営利」、つまりお金を稼いで株主に利益を配当することを目的として存在しています。

一方で一般社団法人は「営利」を目的としない法人であり、利益を株主に分配しない、いわゆる「非営利団体」です。業界団体や医療系学会、資格認定機関、介護事業などの営利を目的としない事業で設立されることが一般的です。

平成20年の法改正によって、設立基準に「公益性」がなくても設立できるようになったため、年間の設立件数が2012年の3,698件から2016年で5,552件と数年で大きく増加しました。

非営利団体というと「NPO法人」を思い浮かべる人もいると思いますが、NPO法人の場合は特定非営利活動法人のため、法人の活動範囲はかなり限定されます。対して、一般社団法人は、おおむね株式会社とほとんど同じ活動ができる点で大きく異なります。

一般社団法人の具体例

たとえば、サークル活動の規模が大きくなり、活動拠点となる事務所を借りたいとなった場合に、法人格がないと誰かが個人名で契約するしかありません。かといって、サークル活動はお金を稼ぐために存在しているわけではないため、株式会社を設立するには目的が異なります。

このような場合に設立するのが「一般社団法人」なのです。

利益を配当しないので、一般社団法人には株式会社のような「株主」は存在しません。よって「株式に応じた持分」という概念もありません。

その代わり、一般社団法人の構成員を「社員」といい、社員の代表者である「理事」が株式会社でいうところの代表取締役の役割を担うこととなり、あらかじめ定款で決められた「理事報酬」を受け取ることができます。

実はこの「持分」がないという点が、次に解説する相続税対策と深く関係しています。

一般社団法人設立で相続税対策

一般社団法人を活用した相続税対策のスキームは、簡単にいうと従来個人で所有していた資産を、一般社団法人名義にすることが基本となります。

ここではわかりやすいように、「アパートの大家さん」を例にとって考えてみたいと思います。

個人でアパートを所有している場合、入ってくる家賃収入に対しては「所得税」、アパートを相続する際には相続人に対して「相続税」がそれぞれ課税されます。

そこで、一般社団法人を設立して、アパートという資産を個人から一般社団法人に移したとします。すると所得税と相続税それぞれにおいて次のようなメリットが生じます。

所得税のメリット

家賃収入は一般社団法人の収入になった上で、理事に理事報酬として支払われるので、課税所得を複数の人(家族など)に分散して節税することができます。

相続税のメリット

アパートの所有者は個人から法人に変わるため、個人が死亡して相続が発生したとしても、アパートは相続税の課税対象から外れます。以降も何代相続が発生しても、アパートに対して相続税が課税されることはありません。

このように、資産を一般社団法人に移すことで、非常に大きな節税効果が生じるのです。

最初の資産譲渡が肝心

この節税スキームのポイントは、最初の個人から法人へ資産を移すときです。資産を個人から法人へ移すということは「贈与」か「譲渡」する必要があります。

贈与に対しては贈与税が課税されるため、低い金額で一般社団法人に譲渡しようと考えがちなところですが、時価よりも低い金額で譲渡された場合については、時価との差額が「受贈益」として課税されてしまうため注意が必要です。

事業者ではない人も使える?

一般社団法人は株式会社の事業者のように、営利を目的とする必要がありません。よって、特に何の事業も行っていない人でも、節税のためだけに一般社団法人を設立することも可能です。

一般社団法人での節税スキームでの問題点

先述のとおり、一般社団法人は、株式会社のように出資額に応じた「持分」という概念がありません。株式会社の場合は、株主が死亡して相続が発生すると、株式が相続税の課税対象となります。

ところが、一般社団法人の場合は「持分」が存在しないため、個人の資産を法人に移すと、その後個人が死亡しても一切相続税が課税されなくなります。

一般社団法人は、報酬が支給される理事になるための資格や要件は必要ないため、家族で独占することが可能です。

これにより、半永久的に相続税が課税されないという節税スキームが完成してしまい、大きな問題となっていました。

平成30年税制改正で節税スキーム封じ

このような相続税回避を目的とする一般社団法人の設立が増えたことを受け、租税の公平性を確保するために、平成30年の法改正によってこの節税スキームにメスが入ることとなったのです。

これにより、相続税、贈与税どちらについても一般社団法人を使って節税をすることは極めて難しくなりました。

具体的な改正内容は以下の2点です。

一般社団法人等に対する相続税の課税

平成30年の税制改正大綱により、一定の要件を満たす場合については、一般社団法人であっても相続税が課税されることになりました。

以下のどちらかに該当する場合、一般社団法人を個人とみなして相続税が課税されます。

  • 相続開始直前において、理事の過半数が同族役員である
  • 相続開始前5年以内において、理事の過半数が同族役員であった期間が3年以上ある

同族役員とは、死亡した本人から見て3親等以内です。

これにより、資産を一般社団法人に移していても相続税が課税されることとなりました。

一般社団法人等に対する贈与税の見直し

個人から一般社団法人に資産を「贈与」した場合、贈与税が課税される要件が必ずしも明確ではなく、課税されないケースも発生していました。

そこで平成30年の法改正では、以下のいずれか一つでも該当した場合には、贈与税が課税されることとなりました。

  • 定款や規則で、役員等のうち親族等が占める割合を1/3以下とする定めがないこと
  • 役員等やその親族等に対し、特別な利益を与えること
  • 一般社団法人が解散した場合に、残余財産が国や地方公共団体、公益社団法人、公益財団法人などに帰属する定めがないこと
  • 法令に違反し、又は、帳簿書類に隠ぺい・仮装があるなどといった、公益に反する事実があること

相続続税はいくら課税される?

平成30年の法改正によって、一般社団法人に課税される相続税については、次のような計算式によって計算します。

一般社団法人の純財産額 ÷ 同族理事(死亡した本人も含める)

上記によって導き出された金額について、個人の死亡によって一般社団法人に「遺贈」されたものとみなして相続税が課税されます。

一般社団法人が収める相続税額の計算方法については、課税されるすべての相続財産から基礎控除額を控除した金額を法定相続分に則って相続したと仮定して相続税額を計算した上で、取得分に応じて課税されます。よって、相続税の基礎控除額の範囲内に課税評価額が収まれば、相続税は課税されません。

おわりに

租税回避目的で設立が増えていた一般社団法人ですが、今回の法改正によって今後は相続税や贈与税がしっかり課税されるため注意が必要です。

現時点では一般社団法人の理事の人数を増やすことで、課税対象額を減らすという方法もありますが、今後更なる規制対象となる可能性もありますので、今後、節税目的だけで一般社団法人を設立するのは控えた方がよさそうです。

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