ビットコイン最高値更新も「相続税+所得税」で課税率が110%超に?暗号通貨に潜む税金のワナ
仮想通貨

2025年1月20日、暗号通貨(仮想通貨)のビットコイン価格が史上最高値を更新、日本円で1700万円超えを記録した。2009年に誕生した当初のビットコインの価格は1円以下。ざっと見積もっても1000万倍以上も値上がりしたことになる。
当初から保有していた人は大金を手にすることになるが、気になるのはかかる税金だ。
暗号資産の売却益は「雑所得」に分類され、給与所得などほかの所得と合算した「総所得金額」に応じて所得税5〜45%+住民税10%が課税される。
一方で、株式や投資信託、FXは、ほかの所得と分離して課税する「申告分離課税」のため、所得税・住民税合わせて20%が一律で課税される。つまり暗号資産は、株式等ほかの投資商品と比べて重い課税方式であることがわかる。
なおかつ、暗号通貨は高騰しがちな資産であることから、万が一保有者が亡くなり、相続が発生した場合、相続税と売却時の所得税・住民税合わせて100%以上が課税される可能性があると、SNS上で話題となった。一体どういうことだろうか。
●10億円超のビットコインの相続・売却で税率が110%に?
SNS上で話題となっているのは、日経新聞に掲載されたコラムだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB169CJ0W4A211C2000000/
要約すると以下のようになる。
“14年12月上旬にビットコインを100BTC(約460万円分)買い、24年12月4日時点で約14億3700万円の価値。
→もし保有者が亡くなり、子1人が相続すると相続税の税率は最高の55%
→子が相続したビットコインを相続時の価格で売却すると、約14億3700万円ー約460万円=約14億3200万円が課税対象に。所得税と住民税は計55%で、相続税と合わせて110%になる”
つまり、高騰した暗号通貨を相続して、さらに売却益を得ると、暗号通貨による資産がマイナスになる・・・というわけだ。そんなことがあるのだろうか。鈴木洋輔税理士に聞いた。
●「財産の移転」と「売却利益」という性質の違いに着目
ーー前述のように、暗号通貨の価値が高騰した場合、相続税と、売却益にかかる所得税・住民税で、税率が100%を超える(=暗号通貨による相続資産がマイナスになる)ことはありえるのでしょうか?
「ご質問のケースのように、相続税と所得税・住民税を合計することで、税率が100%を超えることがあります。一見すると『二重課税』に感じられるかもしれませんが、現行の日本の税制では、相続税と所得税・住民税がそれぞれ独立して課税される仕組みとなっていることを理解する必要があります。
たとえば、親から土地を相続した場合でも、相続時には相続税が課され、その後に売却した場合には所得税・住民税が課税されます。これは、それぞれの税が異なる点に着目して課税しているためです。
それは、相続税は財産の『移転』に着目して課税され、所得税・住民税は売却時に得た『利益(儲け)』に着目して課税されるという違いがあります。
暗号資産も同様に、相続と売却という異なるタイミングで税金が課される仕組みのため、暗号資産が高騰し、相続人の数が少ない場合、相続した財産以上の課税を受ける可能性があるのです。」
●暗号資産の課税方式が見直しされる可能性も出てきたが・・・
ーー「令和7年度与党税制改正大綱」によると、「暗号資産取引の課税の見直し」に言及されています。暗号資産の課税方法を、雑所得(最大55%)から申告分離課税(20%)の対象にすることも検討されていますが、こちらについて見解をいただければ幸いです。
「令和7年度与党税制改正大綱では、暗号資産取引に係る課税方法の『見直しを検討する』ことが明記されました。ただし、その実現には以下の条件が付されています。
・投資家保護のための説明義務や適合性等の規制等の必要な法整備
・取引業者等による取引内容の税務当局への報告義務の整備等
これらの前提条件が整わない限り、課税方式の見直しがすぐに実現することは難しいでしょう。そのため、暗号資産の課税方式が変更されるまでには時間がかかると考えられます。
税制においては、『税を担う力(担税力)』という考え方が非常に重要です。今回の税制改正大綱で、暗号資産の課税方式の見直しが検討事項として盛り込まれたことは、将来的な方向性を示す重要な一歩と言えます。今後の法整備の進展や具体的な動きに注目していく必要があるでしょう。」
【取材協力税理士】
鈴木洋輔(すずき・ようすけ)税理士
資産税に特化することで高い専門性を迅速に提供。税金のことはもちろん、お客様が大切にしている家族への想いを尊重することで、お客様の財産を守り『理想とする家族』を実現するサポートをしている。
事務所名 :鈴木洋輔税理士事務所
事務所URL:https://famvision.jp/