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みずほ銀の酷すぎるシステム障害、金融庁の監督措置にどんな意味があるのか

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みずほ銀の酷すぎるシステム障害、金融庁の監督措置にどんな意味があるのか
みずほ銀行のウェブサイトより

みずほ銀行は、2月28日、3月3日、3月7日、3月12日と4回もシステム障害を起こしました。これを受けて再発防止・信頼回復のため、システム障害特別調査委員会を設置し、6月15日に「調査報告書」が公表されました。

みずほフィナンシャルグループは、同日「再発防止策」を公表し、「再びこのような事態を起こすことがないよう、抜本的な再発防止策に組織全体で取り組む必要があるものと強く認識しております」と述べています。

ところが、約2カ月後の8月20日に再びシステム障害を起こしてしまいました。金融庁は、みずほ銀行に対して「業務改善命令」を出す予定でしたが、急遽、「報告徴求命令」を出し、8月末までに報告書を提出するよう命じました。

このように、行政機関からは様々な命令や処分が下されますが、行政機関が行う監督措置にはどのようなものがあるのでしょうか。

●監督上の措置の種類:行政指導と行政処分

監督官庁が所管している法人に対して監督上の措置として行うものには、大きく分けて「行政指導」と「行政処分」があります。

(1)行政指導

行政指導は、「行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。」と定義されています(行政手続法第2条第6号)。

行政指導は、法律上の根拠は特に必要なく、掌握事務を適切に行うために事業者に改善を要請するものです。主に行政処分をするには至らない軽微な内容について用いられます。法律の根拠に基づく要請ではないため、行政指導を受けた側はそれに従う義務はありません。あくまで任意なので、応じるかどうかは個別に考えればよいということです。

ただ、行政指導に応じなければ、行政処分を受ける可能性があるため、行政指導の内容が適切な場合には従っておいた方が無難です。行政指導は、さらに、「助言」、「指導」、「勧告」に分けられます。助言とは、事業者に対する行政上のアドバイスをすることです。監督というより、後見的な措置です。それに対して、指導は、監督的なもので具体的な改善を求めものです。勧告は、指導より強いもので、具体的な行動をとるよう強く求めるものです。

(2)行政処分

行政処分は、「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」と定義されます(最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁)。

わかりにくい定義なので、言い換えると、「法律上の根拠に基づく行政機関の行為で、国民に権利義務関係を発生させたり、範囲を確定したりすること」です。

ポイントとしては、行政処分をするためには「法律上の根拠」が必要ということです。事業者が気にいらないからと法律上の根拠もなく、公務員が勝手に行政処分をすることは許されないということです。次に、行政処分をする主体は、国または自治体などの行政機関ということです。ただし、例外的に、行政機関が民間事業者を指定して行政処分の権限を与えることがあります。

特に重要なところは、「権利義務関係を発生させる」ということです。代表的なものとしては、下命、許可、認可などがあります。「下命」というのは命令を下すこと、「許可」とは、禁止されている行為を解除すること、「認可」とは私人間の法律行為を公的機関が補充して認めることです。

金融庁とみずほ銀行の関係で説明すると、金融庁は「国」という行政機関で、銀行法という「法律」に基づいて、みずほ銀行という「国民」に対して報告書を提出するよう「命令」を下したわけです。報告徴求命令が行政処分の要件を満たしていることがわかると思います。

●監督措置の流れ、業務停止処分や取消処分に至ることも

ここまでは、法律論を書いてきましたが、イメージが持ちにくいと思いますので、実務的な監督措置の流れを説明します。根拠法令や省庁によって多少手続が異なりますが、一般的な流れと思ってください。

①ヒアリングの実施
報道や苦情により問題が明らかになった場合には、役所の担当者が対象事業者に対して電話をして、問題となっている事実関係や今後の対応についてヒアリングを行います。

②口頭指導
ヒアリングの結果、軽微な問題で、すみやかに改善されると判断された場合には、担当者が事業者に電話をして口頭で指導を行います。

③立入検査
ヒアリングの結果、重大な問題があると判断された場合には、立入検査を行います。立入検査は、職員が実際に現場に赴き、責任者から直接事情を聴きます。さらに、現場を目視し、書類などを点検します。必要に応じて、書類のコピーなどを持ち帰ります。

④報告徴収、報告徴求
立入検査の結果、重大な法令違反等があると判断された場合には、さらに詳しく事情を聴く必要があるため、「報告徴収」あるいは「報告徴求」という形で、文書で報告を求めます。

⑤改善勧告、改善命令
立入検査の結果および報告書の内容から、改善が必要と判断された場合には、「改善勧告」または「改善命令」が出されます。「改善勧告」は行政指導で「改善命令」は行政処分になります。改善命令に先立ち事業者に改善計画書の提出を求めることもあります。

⑥業務停止処分
悪質な法令違反をしていたような場合には、改善命令だけでなく、弁明の機会を与えた上で、業務停止処分にすることがあります。懲罰的に「新規融資を6カ月間停止」などという形で出されます。

⑦取消処分
「改善勧告」や「改善命令」が出されたにも関わらず一向に改善がなされなかった場合には、聴聞を行った上で、免許の取消しなどの処分がなされます。銀行が免許を取り消されると銀行業務ができなくなります。

●罰則による実効性担保

これら監督上の措置の実効性を担保するため、銀行法には罰則が設けられています。資料の提出などの報告の求めに応じない場合、立入検査に応じない場合、質問に答えない場合には、「違反行為をした者は、1年以下の懲役又は300万円以下の罰金」に処せられます(銀行法第63条)。

また、改善計画を提出しない場合、業務停止処分に従わない場合、改善命令に従わない場合には、「違反行為をした者は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金」に処せられます(銀行法第62条)。

●障害頻発で行政処分を出すタイミングが難しくなっている

みずほフィナンシャルグループは、報告徴求命令に従い、8月31日に金融庁に報告書を提出しました。報道によれば、障害の原因については特定されておらず、引き続き調査を継続するとのことです。

金融庁は、この報告書を受けて、改善すべき内容を確定し、「業務改善命令」を出すものと思われます。原因が特定できていないことから、再びシステム障害が発生しないか、みずほ銀行も金融庁も内心ハラハラしているはずです。

役所の本音としては、マスコミ対応もしなければならなくなるため、本当は行政処分など出したくありません。しかし、これだけ大きな騒ぎになっていると、何の処分もしないというわけにはいかないので、ちゃんと仕事していますよということを示すため「業務改善命令」を出すわけです。

「業務改善命令」を出して、再びシステム障害が発生すれば、「金融庁の指導が甘い」と世間やマスコミから批判され、再度の行政処分が必要になるため、金融庁としては行政処分を出すタイミングも難しくなっています。

報道では、みずほフィナンシャルグループが基幹システムの開発などを担当する人員を全面稼働後に約6割削減していたとあります 。官庁や金融機関ではこれまで文系人材を重用し、理系人材を軽視してきたところがあります。システム作成も外部に丸投げで、内部でコントロールできる人材が不足しています。

金融庁の長官は幸い理系ですが、デジタル庁の事務方トップは高齢の文系人材になってしまいました。金融機関も官庁もITを推進していくためには、外部の理系人材を上層部に積極的に取り込むことが必要なのではないでしょうか。

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