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日本は「悪い円安」に陥っているのか 今さら聞けない「為替」の基本

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日本は「悪い円安」に陥っているのか 今さら聞けない「為替」の基本
写真はイメージです(kuro / PIXTA)

2021年以降、特に対ドルで円安傾向が続いています。日本は世界でも有数の工業国なので、輸出の面から見て円安は有利と考えられていました。そのため、アベノミクスでは、円安誘導をするために大胆な金融緩和が行われました。

その結果、株価は上昇し、円安の効果もあって訪日外国人は増えました。しかし、国内の賃金は上がらず、輸入商品の価格は上がるばかりです。個人は円安の利益を享受できず、さっぱり豊かになっていないというのが実情です。

そのようなこともあって、最近は、「悪い円安」と呼ばれるようになりました。円安が悪いとか良いというのはどういうことなのでしょうか。また、そもそも、「円高」や「円安」とはどういうものなのかについて基本のところから解説します。(ライター・岩下爽)

●為替とは?

現金を使わない決済取引のことを「為替」と言います。銀行振込なども為替取引です。国内で行われる取引は「内国為替」、外国の異なる通貨で取引を行うものは「外国為替」と言います。

金融機関では、内国為替も重要な取引の1つですが、一般的に「為替」という場合、「外国為替」を指すことが多いです。外国為替の特徴は、通貨の交換が行われるということです。

たとえば、アメリカと取引をする場合、円のままでは受け取ってもらえないため、ドルに交換して支払うことになります。その際の通貨の交換レートのことを「為替レート」と言います。為替レートが「1ドル100円」という場合、1ドルを支払うためには、日本円で100円が必要ということです。もちろん、ドルだけでなく、ユーロやポンドなども同じような為替レートがあります。

●円安、円高とは?

ニュースなどで、「1ドル116円で、昨日より1円50践、円安になりました」などの報道がなされます。この「円安」という意味は、円の価値が安くなったということを意味しています。逆に「円高」は、円の価値が高くなったことを意味しています。

「1ドル100円」と「1ドル120円」を比較した場合、「1ドル120円」の方が、円が高いように見えますが、「1ドル120円」よりも「1ドル100円」の方が円高になります。考え方としては、1ドルを買うのにいくら円がいるのかということです。円の価値が高ければ少ない額の円でドルを買うことができます。だから円の数値が少ない方が円高になるわけです。

たとえば、10,000ドルの物を買う場合、「1ドル100円」であれば、100万円支払うことになります。これが、「1ドル120円」の場合、120万円も支払わなければなりません。このように外国の物を購入する場合には、円高の方が有利になります。

他方、輸出で考えてみると、「1ドル100円」の場合、300万円の車は、300万円÷100円=30,000ドルになります。これが、「1ドル120円」になると、300万円の車は、300万円÷120円=25,000ドルになります。つまり、円安になると外国において安い価格で商品を売ることができるようになります。そのため、輸出では円安が有利になります。

●「悪い円安」と言われる理由

以上のように、円安は輸出の側面では有利に働くため、これまで日本では歓迎されてきました。株価も円安になると上昇する傾向があったため、「円高=悪い」、「円安=良い」と捉えられてきました。しかし、最近では「悪い円安」ではないかと疑問をもたれるようになっています。

その理由は、日本の生産スタイルが変わったからです。かつては、安い原材料を輸入して、日本で加工して、世界中に輸出していました。ところが、最近は、国内での製造はかなり減ってきており、海外での製造や現地生産にシフトしています。そのため、賃金などの支払いも海外通貨になっており、円安になっても昔ほどプラスには働かなくなってきています。

また、以前より輸入が増え、原材料価格も上昇しているため、円安による物価上昇を強く感じるようになってきています。さらに追い打ちを掛けているのが、原油高です。原油自体の価格高騰に加え、円安なので、原油を調達するコストも跳ね上がっています。エネルギーは多くの産業に関係があるため、原油価格の高騰は製品コストの上昇に繋がります。

財務省「貿易統計」によれば、2000年度の輸出は約51兆円、輸入は約40兆円で11兆円の貿易黒字でした。それが、2010年になると、輸出は約67兆円、輸入は約60兆円で7兆円の貿易黒字となり、2020年には、輸出は約68兆円、輸入は約68兆円と貿易黒字がほとんどなくなってしまいました。

このように、円安による輸出での効果以上に、輸入需要の増加と調達コストの上昇という負の側面の方が強くなったことから、「悪い円安」と言われるようになったわけです。
 

●円安依存からの脱却

豊かな国になるためには、ある程度円高になる必要があります。円高になれば、海外の物を安く購入することができるようになります。高い購買力は商品だけでなく、優秀な人材も雇うことができます。そうすることによって、日本で不足しているIT人材を補充し、新たなビジネスを創造できるかもしれません。

円安は、円の価値、すなわち日本の価値が低いということであり、決して喜ばしいことではありません。輸出企業の多くは既に為替依存の体質を改善しており、円安にならなくても収益を確保できるようになっています。

資源の少ない日本では、円高によって原材料やエネルギーの調達が安くなれば、国内での製品価格を安くすることができます。円高によるデフレを警戒する人もいますが、賃金が増えない以上、ある程度デフレになっても仕方がありません。

もし、デフレを脱却したいのであれば、賃金を上げて、経済を好循環にもっていくしかありません。給与はアップしないけれども、デフレは嫌だというのは虫が良すぎます。物価上昇率よりも給与上昇率が低ければ購買意欲が高まらず、デフレになるのは当然のことです。

●今後どうなるのか

アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、2021年11月からテーパリング(量的緩和策による金融資産の買い入れを徐々に減らしていくこと)を開始しており、インフレを警戒して早期の利上げを示唆しています。アメリカの金利が上がれば、ドル買いが増えるため、円安になります。

ECB(欧州中央銀行)は利上げには慎重な立場を採っていますが、コロナ禍で導入した量的緩和については終了することを決めています。イギリスの中央銀行であるBOEは、2021年12月16日に政策金利を年0.1%から年0.25%に引き上げました。

日本は今のところ、量的緩和の解消や利上げについては言及しておらず、このままいけば円安がさらに進む可能性があります。

●円安を阻止するためにはどうすればよいのか

為替は自国のみでコントロールできるものではありません。しかし、あまりに円安が進んだ場合には、財務省や日銀も動かざるを得なくなります。具体的には、財務省の口先介入や円買介入があるかもしれません。また、円安による物価上昇が一定程度進んだ場合、日銀も政策金利の引き上げについてアナウンスをする可能性があります。

ただ、円安による物価上昇は「悪いインフレ」であり、日銀が目指している経済の好循環による物価上昇ではありません。そのため、政策金利の引き上げにより、経済に悪影響を及ぼす可能性があります。また、金利の上昇による財政負担の増加もあることから、政策金利の引き上げは簡単なことではありません。

したがって、円安から脱するには、日本の信用力を高めるしかありません。為替レートは短期的には資金需要によって決まりますが、長期的には国の信用によって決まるからです。日本の経済力が強くなれば、日本の信用力が増し、円は高くなります。

ただ、日本の労働生産人口は減少の一途を辿っており、労働生産性を上げない限り今後の経済成長は見込めません。日本生産性本部の資料によると、日本の2020年度の労働生産性は、先進7カ国で最下位、OECD加盟38カ国中では28位という残念な状況です 。

このまま生産性を上げることができなければ、円の価値は下がり続け、一般庶民では簡単に海外旅行ができないような国になってしまうのかもしれません。政府、経済界には、目先の利益ばかり追うのではなく、長期的な視点で生産性を高めるための方策について真剣に考えてもらいたいものです。

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