ガソリン高騰 「トリガー条項」凍結解除は価格抑制の秘策になるか
税金・お金

ウクライナ情勢が逼迫する中、私たちの生活に直撃しているのが原油価格の高騰だ。石油製品や電気代だけでなく、生活関連用品の値上がりにも影響を及ぼしている。
原油高自体はすぐに抑制できるものではないが、早急にガソリン価格高騰を抑える方法として注目されているのが「トリガー条項」である。
トリガー条項とは、簡単にいうと「一時的なガソリン価格の高騰に伴い、ガソリン税の一部を減税する制度」であるが、東日本大震災の影響により現在は凍結状態。
昨今のガソリン価格高騰への対策として「トリガー条項の凍結解除」が挙げられたものの、4月19日、自民・公明・国民民主の3党は凍結解除の先送りを決定した。
●「トリガー条項」凍結解除には問題が山積み
当面は石油元売り会社への補助金を拡充し、引き続きトリガー条項の凍結解除に向けて検討が続けられるという。
そこで、なぜトリガー条項の凍結解除が取り沙汰されているのか、冨田建税理士に聞いた。
「私も報道を読む限りの理解との前提で述べますが、まず、トリガー条項凍結解除を求める声が上がっている理由のひとつに、元売りの事業者に補助金(※)を出したところで、事業者が値下げするとは限らないという懸念があるようです。
一方で、政府が補助金の方向性とするのは、地方揮発油税が地方自治体の税収であり、こちらに混乱を及ぼす点や、トリガー条項の発動前の買い控え、終了前の駆け込み需要で混乱を及ぼす点、事務手続の点などを含め、補助金の方が機動性が高いからと聞きます。
ここからは税理士として。
トリガー条項解除は法改正が必要とのことですが、税制は一旦改正すると元に戻したい場合のハードルが高い印象があるので、改正は慎重に…とは思います。」
※ いわゆるガソリン補助金(燃料油価格激変緩和補助金)
●元売りだけでなく物流等の事業者への支援も必要
「もっとも、『トリガー条項解除による減税を』と唱えることは簡単ですが、個人的には、政府財政が厳しい面や、排ガス等の地球環境への影響も配慮すべきと思います。
すなわち、ガソリン税関連が一部の目立ちたがりな議員の政治のネタに使われないよう国民全体で監視をしつつ、機動性に欠けるトリガー条項解除は安易に行わず、一方で限られた財政である点に鑑み、補助金の出し方を考えるべきでしょう。
たとえば、物流等の運輸や公共交通等の事業者は社会インフラとしての意味が大きく、社会全体で支える必要があります。
補助をするのであれば元売りだけを対象とするのではなく、業務として車両を用いるこれらの事業者に手厚く出す。あるいは、このような事業者に対し、ガソリン税の負担増に対応して税額控除を認める。
ほかにも色々な案があるでしょうが、国の財政も念頭に置きつつ、国民全体であり方を考えていくことが望ましいでしょう」
【取材協力税理士】
冨田 建 (とみた・けん)税理士・不動産鑑定士・公認会計士
43都道府県で不動産鑑定業務経験があり各媒体に寄稿も行う。令和3年8月に不動産の評価手法・相続・税務、戸建住宅の価格目線の把握法等を実例を交え一般向けに述べた著書「不動産評価のしくみがわかる本」を上梓。
事務所名 :
冨田会計・不動産鑑定(株)/冨田 建 不動産鑑定士・公認会計士・税理士事務所
事務所URL:http://www.tomitacparea.co.jp