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専業主婦「独身時代に買ったマンションの価格が高騰。売却したいけれど・・・」躊躇する理由とは

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専業主婦「独身時代に買ったマンションの価格が高騰。売却したいけれど・・・」躊躇する理由とは
t.sakai / PIXTA

厚生労働省が7月に公表した国民生活基礎調査によると、「生活が苦しい」と回答した世帯が前年から8ポイント増え、約60%にのぼることがわかった。

その一因として昨今の物価高騰が予想されるが、​​一方で車やマンションの価格も高騰。こうした資産を売却して、大きな利益を得たという人も少なからずいるようだ。

税理士に無料で税務相談ができるQ&Aサービス「みんなの税務相談」にも、マンションの売却で利益が出そうだという方からの投稿が寄せられている。

相談者は独身時代に、不動産投資用に賃貸用マンションを一室購入。その後結婚して夫の扶養となり、引き続き家賃収入を得ているようだ(ローン返済があるため収支は扶養の範囲内)。

ところが昨今のマンション価格の高騰により、購入時より約1,000万円も値上がりしていることが判明。賃貸に出す手間や不動産収入がわずかなことから、いっそ売却することを検討しているのだが、気になるのは「譲渡所得が発生することにより、夫の扶養から外れてしまうか」についてだ。

●臨時で多額の所得があると、配偶者の扶養から外れてしまう?

「譲渡所得」とは、マンションなどの建物のほか、土地や車、ゴルフの会員権といった資産を売却したときに得られる一時的な所得のこと。高級時計や美術品、骨董品などを売却した際に得られる利益もこれに該当する。

譲渡所得の金額は以下のように計算することができる。

譲渡所得の金額 = 収入金額 ー(取得費 + 譲渡費用)ー 特別控除額

売却する資産がマイホームの場合には、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる「3,000万円の特別控除の特例」や、10年超所有していると長期譲渡所得に軽減税率を適用できる「10年超所有軽減税率の特例」などの軽減措置がある。

ただし、これらはあくまでマイホームの売却に限定された特例で、投資用マンションには適用することができない。そのため、マイホームの売却と比べると譲渡所得が高くなるため、一時的に所得が増えてしまうのだ。

このように、譲渡所得により一時的に所得が増えるとき、扶養関係においてどんなところに注意すればいいのだろうか。蝦名和広税理士に聞いた。

●譲渡所得が48万円超なら、税務上の扶養から外れる

ーー配偶者に扶養されている妻が、保有資産を売却して譲渡所得がある場合、いくら以上の所得があると税務上の扶養から外れてしまうのでしょうか。

ー蝦名和広 税理士

ご質問の通り、譲渡所得も妻の年間の合計所得金額に含まれますので、計算上加味する必要があります。

妻の譲渡所得などが年48万円を超えると、その年、夫は配偶者控除が受けられなくなります。ただし、譲渡所得などが133万円以下であれば、別途配偶者特別控除の適用を受けることができます。詳しくは国税庁HP等でご確認ください。

さらに、譲渡所得などが年48万円を超えると妻自身も基礎控除額を超えるので、妻自身も所得税や住民税の支払義務が発生します。所得税や住民税は、土地や建物を所有していた期間によって次のように異なります。

・長期譲渡所得…所有期間5年超/所得税15%、住民税5%
・短期譲渡所得…所有期間5年以下/所得税30%、住民税9%

●扶養から外れても世帯全体ではプラスになるケースも

ーーこのケースでは、妻が扶養から外れ、夫の税負担が増えることを心配しているようですが、どのくらいの負担になるのでしょうか。

ー蝦名和広 税理士

では、以下の条件で妻に譲渡所得がある場合とない場合とで、税額等をシミュレーションしてみましょう。

【前提条件】
・譲渡価額:3,500万円(取得費 2,500万円、 譲渡費用100万円)、所有期間:7年、妻はほかに所得がない場合
・夫の給与収入:1,000万円(社会保険料120万円、控除は基礎控除と配偶者控除のみ)

【妻に48万円以上の譲渡所得があり、夫の配偶者控除が適用外となる場合】

<妻>
・譲渡価格3,500万円-取得費・譲渡費用2,600万円=利益900万円-基礎控除48万円
=所得852万円
・所得税+住民税額…170万4,000円
・手取り額…729万6,000円

<夫>
・給与収入1,000万円-給与所得控除195万円-社会保険料控除120万円-基礎控除48万円
=所得637万円
・所得税+住民税額… 148万3,500円
・手取り額…約731万6,500円

【妻に所得がなく、夫の配偶者控除が適用される場合】
<夫>
・給与収入1,000万円-給与所得控除195万円-社会保険料控除120万円-配偶者控除38万円-基礎控除48万円=所得599万円
・所得税+住民税額…136万9,500円
・手取り額…約743万500円

上記条件では、妻が扶養から外れた場合、夫の税負担が11万4,000円程度増える、ということになります。また、妻自身も所得税・住民税の支払いをしなくてはいけません。

ただし、マンション売却による利益の手取り金額は十分に確保できるといえます。

※実際の計算では所得税額に対する復興特別所得税2.1%が課され、所得税の基礎控除と住民税の基礎控除額は若干異なるが、計算簡便化のため割愛

●税務上は扶養から外れても、社会保険の扶養からは原則外れない

ーー妻が夫の社会保険に入っている場合は、扶養はどうなるのでしょうか。

ー蝦名和広 税理士

上記の税務上の扶養とは論点が異なり、社会保険においては、譲渡所得は「一時的な収入」として計算の基礎額に含まれませんので、扶養に該当します。

ただし、加入されている健康保険組合等によって異なるケースもあるようですので、ご主人の会社もしくは健康保険組合等に直接問い合わせて確認したほうがよいでしょう。

【取材協力税理士】
蝦名 和広(えびな かずひろ)税理士
特定社会保険労務士・海事代理士・行政書士。北海学園大学経済学部卒業。札幌市西区で開業、税務、労務、新設法人支援まで、幅広くクライアントをサポート。趣味はジョギング、一児のパパ。
事務所名 :Aimパートナーズ総合会計事務所
事務所URL:https://office-ebina.com

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