藤田孝典さんが考える「税の再分配」 生まれた環境で左右されない、最低限の保障を - 税金やお金などの身近な話題をわかりやすく解説 - 税理士ドットコム

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藤田孝典さんが考える「税の再分配」 生まれた環境で左右されない、最低限の保障を

藤田孝典さんが考える「税の再分配」 生まれた環境で左右されない、最低限の保障を
藤田さん

2019年10月に消費税率が10%に引き上げられます。「税金は取られていくだけ」。そう感じている人は多いのではないでしょうか。

「日本は税の再分配が機能していない、弱い社会だと思います」。こう話すのは、NPO法人「ほっとプラス」で生活困窮者の支援をしている藤田孝典さん。

消費税増税だけでは足りないため、富裕層に対する金融所得課税も強化する必要があると訴えます。税について思うことを聞きました。

●日本は税の再分配が機能していない

ーー税について、普段どんなことを感じていますか

今、年間300〜500件ほど生活困窮者の支援をしています。日本は生活に困っている人や、社会保障・社会福祉が必要な人が、すごく多いことを実感しています。

税金は、お金を持っている人から持っていない人に再分配するのが基本です。医療・介護をはじめ、年金、公営住宅、生活保護、児童手当、児童扶養手当(ひとり親家庭)にも税が入れられています。ですが、その分配が弱いと実感します。

高齢社会になってきているので、社会保障給付費は2015年度で過去最高の水準になっていますし、うち高齢者関係給付費は高齢者に払うもので67.6%(2015年度)と膨大になっています。自然増で基本的に保険料も税金も上がっていく。しかし、65歳以上の生活保護受給世帯は一向に減っていません。

ーー2019年10月に控えた消費増税についてはどう思いますか

今回、消費税率が2%引き上げられます。政府はこれにより、幼児教育の無償化や待機児童の解消など社会保障に集中的に財源を充てることとしています。使い道を限定して、社会保障を充実させることには、どちらかといえば賛成です。

私たち国民が受益を感じるように、無償化の領域を増やして「増税したら助かるんだ」「税が返ってくるんだ」と思えるようにすることが大事だと思います。税金はマインドが大切です。

ただ、消費税は逆進性が強いもの。「苦しい生活なのに、さらに俺たちが税金を払うのか」と不公平感を感じやすい。だからこそ、バランスが大事だと思っています。消費税増税だけでは足りないため、富裕層に対する金融資産課税も強化する必要があると思います。

日本は富裕層がものすごく増えています。野村総合研究所の調査では、日本の富裕層・超富裕層の世帯数は、増え続けて過去最多になりました。主に株など金融資産を持っている人です。中間層が崩壊し、二極化が続いています。

65歳以上の格差もとてもあります。年齢階級別で所得格差を示すジニ係数をみると、65歳以上の世代で広がっています。生活保護受給者を年齢別で見ても、高齢者世帯が多く、2017年度には全体の約53%を占めています。私は「下流老人」と定義していますが、上流老人との二極化とも言えると思います。

皆の暮らしのために税が必要になる。「皆で税金を払っているから、皆で支えよう」という議論ができるといいなと思います。

●受益感を持っていない国民

ーー働く世代の税への抵抗感はとても大きいと思います

日本は租税負担率が24.9%、社会保障負担率も合計した国民負担率で見ると42.5%です(2018年度の見通し)。これに対して、受益を感じている国民はどのくらいいるでしょうか。

高齢者は医療・介護サービスや年金も出ます。また、子どもを幼稚園や保育園に行かせているお母さんお父さんも、保育料の減免や児童手当、児童扶養手当、あるいは医療費が中学生まで無料な自治体も広がっていますし、税や保険料の恩恵を感じることもあると思います。

一方で、単身や子なし世帯は、働いている賃金から税金を取られるだけ。もっとも「受益感」を感じていない人たちだと思います。実際には、公共事業関係費として、道路を作ったり、水道やインフラなどにも税が使われていますが、直接的に税が返ってきている印象を受けづらい。

受益感を持っていないからこそ、国民が増税に反対する。増税は暮らしが良くなるいいことだと考えられていません。日本では、「税金は納めても、絶対返ってこないもの」という不信感が募っていると感じます。

●止まない生活保護バッシング

ーー生活保護の減額に対して反対する声が挙がっています。一方で、それに対する受給者側へのバッシングは止みません

一生懸命働いても、ワーキングプアの人がたくさんいます。生活保護が羨ましいのだと思います。全世帯を所得階級に10等分したうち、下から1番目の所得が一番低い10%の層の世帯(第1十分位)の消費水準と比較すると、生活保護の基準の方が高くなっていることがあります。

これについては、最低賃金を上げないといけませんし、年金も上げないといけないと考えます。下位20%を支援する政策が必要です。

「あいつらズルしている」「無計画な奴がもらっている」「働いている自分よりも保護費をもらっておいて贅沢するな」。努力しているのに賃金は低い人たちから、生活保護受給者に向けられる反発は根強い。これは2000年以降、日増しに増えてきているように思います。

非正規雇用で手取り14〜15万円であれば、もはや、結婚も出産も贅沢なんです。

ーー企業の内部留保は過去最高額を更新しています

企業が悪いというよりも、労働者に払うインセンティブが働かないのだと思います。それは、安い労働者に甘え、時給千円さえ払えば働いてくれるシステムが構築されているためです。

仕事さえなかった時代がありましたから、労働者も我慢しています。特に、就職氷河期世代は「仕事さえあればいい」というマインドが強くあります。

●税金はどう使うべきか

ーー税金はどう使うべきですか

教育、住宅、医療、介護などのベーシックサービスに税や保険料をもっと使っていくべきと考えます。これらは生まれてから死ぬまで必要ない人がほぼいません。皆が必要なものを無償化し、税金を払っても返ってくるようにしなければなりません。

大学の奨学金は無償や給付型が望ましいと思います。日本では借りないといけない人が多いですよね。私もいまだに奨学金を返しています。

生涯学習も含めた教育・職業訓練に、先行投資をすべきだと思います。少子化だからこそ、一人当たりの労働生産性を上げなければいけません。子どもは、将来の納税者です。若い世代に投資することで、長期的に見れば、納税額がふくらむと考えます。

貧しい家庭に生まれたら、大学や専門学校などを諦める。そんな社会ではなく、環境を整えてあげるのが政府や自治体の役割だと思います。

ーー生活困窮者の支援活動をする中で、自分の進路を諦める若者の姿を多くみていますね

生活困窮者支援を始めて17年になります。相談に来る人は貧しい家庭で育った人が多く、まともな教育を受けていない事例が散見されます。

アルコール依存症の父に殴られながら育ち、親からは「金がないから高校でたら働けよ」と言われ、好きなことができなかった人もいます。母子家庭で生まれ育ち、お母さんがうつ病のため、自分が弟の分も家事をしなければならず、中学を卒業してから水商売で働くという事例もありました。

出身家庭がある程度豊かな人は、大学にも出してもらって、虐待も受けずに、好きなことをさせてもらったと思います。余暇には旅行に連れて行ってもらった人もいるでしょう。でも私たちが生まれ育ったこうした環境は、たまたまであり、運でしかないのです。

●自己責任論がはびこる理由

ーー世間では「自己責任論」がはびこっています

しょうがないなと思う部分もあります。なぜなら、皆自分が生きてきた環境が当然だと思っているからです。

アッパーミドルクラス以上は、基本的に出身家庭が安定しています。「虐待なんかとんでもない」と話す人は、実際に虐待をする両親がイメージできないでしょう。非正規の問題だって、経験しなければ不安定な雇用状態を想像するのは難しい。

実は、僕もこの活動を始める前までは、生活困窮者の想像ができませんでした。現場に行って話を聞いて、それから初めて実態が分かるものです。

かつては、地域にいろんな人が住んでいました。所得の高低は関係なく、ごちゃごちゃしていました。戦後復興期や高度経済成長期には、みんなで議論したり、お互い支えながらやってきた。

でも、今はマンションも多く、特に都内のマンションなんて所得が同じくらいの人しか入れない。コミュニティが閉鎖的です。さまざまな所得階層のひと同士の交流はほとんど断絶しています。

ーー家庭や地域で支え合っていた昭和の古き良き時代に戻るべきなのでしょうか

昭和には戻れません。ノスタルジーにひたる人も多いですが、1回壊れたものを直すのは無理です。この道は僕らが選び進んできました。

日本の超高齢社会を考えると、お金持ちが手を差し伸べないと社会は回りません。しかし、特に株の取引、不動産への金融資産課税が十分機能せず、再分配がしっかりできていません。そこをテコ入れしていく必要があります。

【プロフィール】
藤田孝典(ふじた・たかのり)。1982年生まれ、埼玉県越谷市在住。NPO法人ほっとプラス代表理事、社会福祉士。ルーテル学院大学大学院総合人間学研究科博士前期課程修了。首都圏で生活困窮者支援を行うソーシャルワーカー。生活保護や生活困窮者支援の在り方に関する活動と提言を行なっている。近著に井手英策氏、今野晴貴氏との共著「未来の再建」 (ちくま新書)

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