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「宿泊税導入で、小さな宿は廃業してしまう」宮城の温泉旅館、若女将がSNSで切実な訴え

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「宿泊税導入で、小さな宿は廃業してしまう」宮城の温泉旅館、若女将がSNSで切実な訴え
阿部旅館(facebookより)

宮城県が導入を目指す宿泊税をめぐり、ホテルや旅館など宿泊事業者から批判が噴出しています。国からの観光復興対策交付金の終了が見込まれる中、県は1月21日、新たな財源として宿泊税の制度設計案を県議会に示しました。地元紙の河北新報によると、25、26の両日に開催された県民向け説明会では「長期滞在のビジネスマンや湯治客の負担が大きい」「県民への周知不足」など厳しい意見が相次ぎました。

そんな中、53年続く県内の温泉旅館の若女将がSNSで「宿泊税の導入で客足が遠のいたら、小さな宿は廃業してしまう」と切実な声を上げました。どのような気持ちで発信に至ったのでしょうか。(ライター・国分瑠衣子)

●「お客さんの負担を増やすなど許せません」

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「宮城県は宿泊税を導入しようとしていますが、何を考えているのか分かりません。消費税、入湯税に加えて宿泊税も取るようにしたら確実に泊まってくれるお客様が減ってしまいます。お客さんの負担を増やすなど許せません。まさか宿泊税を導入するのに宿側の私たちには全く負担がないと思っているんでしょうか?

これまで増税や物価高騰も何度もありましたが料金据え置きなどして踏ん張ってきました。やむを得ず値上げする時も改装工事を強化して、少しでもお客様のためにと必死に頑張ってきました。宿に負担がないわけありません!

(中略)宿泊税の導入で客足が遠退いたら当館のような小さい宿は耐えきれずにつぶれてしまいます!宿泊税、絶対反対です!」

1月23日、宮城県大崎市の「東鳴子温泉 赤這温泉 阿部旅館」の3代目若女将の阿部さとみさん(35)は、フェイスブックにこう投稿しました。鳴子温泉郷は山形県との県境にあり、鳴子温泉は1000年を超える歴史があります。源義経が平泉に逃れる時に鳴子を訪れたことでも知られています。

茶褐色の単純泉と、炭酸水素塩泉の2種類の源泉が楽しめる阿部旅館は、昔ながらの湯治場で、阿部さんの祖父の代から53年間続きます。阿部さんは2008年から家業の旅館を手伝い始め、今は母親と切り盛りしています。阿部さんは「家族経営なので、15人ほどの食事作りでも手がいっぱいです。決して大きな旅館ではなく、常連さんのおかげで何とかここまで続けてくることができました」と説明します。

県内のほかに東京や関西のファンも多く、阿部さんは常連客の「家にいるようでほっとする」という言葉を励みに、育児や介護をしながら、旅館経営を続けてきました。そんな中、県が宿泊税導入を進めていることを知り、大きなショックを受けたといいます。

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●国からの復興予算は2021年度で終了見込み

阿部さんがフェイスブックに投稿する2日前の1月21日、宮城県は県議会に宿泊税の制度設計案を示しました。県が示した宿泊税の税額は2案あります。宿泊費3,000円以上20,000円未満は300円、20,000円以上は500円という宿泊費によって税額が異なる案と、宿泊費3,000円以上は一律300円にする2つです。いずれも3000円未満は課税免除になります。県観光部は宿泊税の税額を300円とした根拠を「観光振興に必要な事業費を考えて算出しました」と説明します。

2011年の東日本大震災後、宮城県の観光客数は一時、震災前の約7割にまで落ち込みましたが、外国人観光客の増加などで18年は6414万人と過去最高になりました。県が宿泊税導入を検討する背景には、東日本大震災の東北観光復興対策交付金が2021年度で終了する見込みで、観光関連予算の財源が大きく減ってしまうことが挙げられます。県は宿泊税導入による税収は23億円とはじき、観光振興事業に充てます。

宿泊税は法定外目的税で、全国の自治体では東京都、大阪府、京都市、金沢市、北海道倶知安町の5団体で導入済みです。このうち、宿泊価格の2%を徴収する倶知安町を除き、4団体が宿泊価格によって税率を分けています。2020年4月からは福岡県や福岡市などが宿泊税を実施します。また、宮城県内では県とは別に仙台市も導入に向け議論を始めています。

●宿泊税が導入されても、転嫁できない

阿部旅館の宿泊費は、素泊まりは税込み3850円、朝夕2食付きで8520円です。18年4月に宿泊費を見直して以降、19年10月に消費税が10%に引き上げられた時にも宿泊費を据え置きました。阿部さんは「18年に宿泊費を見直した時も、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。今、宿泊税が導入されても、これ以上宿泊費に転嫁することは難しいと考えています」と話します。

阿部さんによると、全国の他の地域と同様に、過疎化に悩む東鳴子温泉では、やむを得ずに廃業を選択する旅館も少なくないといいます。魚料理を売りにしている阿部旅館ですが、昨年には地元の鮮魚店が閉店し、仕入れ先がなくなるというピンチもありました。

阿部さんは、1月25、26の両日、県が開いた宿泊税導入についての説明会に同業者から誘われましたが、旅館の仕事で忙しく、出席できなかったといいます。「説明会には出席できませんでしたが、自分の考えを一人でも多くの人に伝えたくて、SNSで発信しました」と阿部さんは話します。

宮城県の村井嘉浩知事は、1月27日の定例会見で「県民説明会では非常に厳しい意見が多かったと受け止めています。まだ県として宿泊税を導入することを機関決定したわけではありません。皆さんの意見を伺った上で最終的な意思決定をしたいと考えています」と説明しました。1月31日には村井知事が宿泊事業者に宿泊税について説明します。

県内には気仙沼など震災による津波の被害が大きく、観光客数がまだ震災前の水準に回復していない地域もあります。県は事業者への丁寧な説明と、理解を得ることが求められるのではないでしょうか。

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