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上場投資信託を買いまくる日銀、市場を歪めてしまわないか コロナ禍で株価上昇の意味

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上場投資信託を買いまくる日銀、市場を歪めてしまわないか コロナ禍で株価上昇の意味
日本銀行・本店(yama1221 / PIXTA)

IMFが6月24日に発表した「IMF世界経済の見通し」によると、2020年の世界経済の成長率はマイナス4.9%となっています。その原因としては、①今後も社会的距離の確保が続くこと、②2020年前半の経済活動への打撃が予想以上に大きかったこと、③感染率の抑制に苦しんでいる国々においては、ロックダウンの長期化によって経済活動にさらなる打撃が生じることなどが挙げられています。

そんな中、日本の株価は3月19日に終値で16,552円まで下落した後、急激に回復しており、6月26日現在の終値で22,512円になっています。ダイヤモンドプリンセスのコロナ報道前の水準にほぼ戻ったと言えます。

IMFによる日本の2020年の成長率はマイナス5.8%と予想されており、緊急事態宣言が解除されたとは言え、第2波、第3波が予想される中、決して先行き明るい兆しはありません。それなのに株価はなぜここまで回復したのでしょうか。(ライター・メタルスライム)

●半年で昨年1年分を上回る購入ペースに

日銀は、新型コロナウイルスによる経済の影響を最小限に抑えるため、大規模な金融緩和を実施しています。株価を下支えするため、株価が急落した際は積極的にETF(上場投資信託)を買入れています。その額は、6月24日現在で4兆6692億円にもなります(https://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_etf.htm)。2019年度のETF購入額が4兆3772億円であることから、半年で既に昨年1年分を上回っていることになります。

2020年度の内訳を見ると、1月が4440億円、2月が5840億円、3月が1兆5484億円、4月が1兆2272億円、5月が4436億円、6月が4220億円(6月24日現在)となっています。コロナ禍による株価下落をくい止めるため、3月と4月の2カ月間で2兆7756億円もの株式が日銀によって買われているのです。

3月の株価を見てみると、年初来安値となった3月19日には、1日で2016億円ものETFが買われています。その後も3月23日、3月26日、3月30日に同様に2016億円のETFが購入されています。つまり、4日間だけで約8000億円分の株が買われているわけです。

株価の動きを見ると、午前中に株価が下がると午後に日銀の介入が入り、株価が戻るというような動きになっています。投資家もその動きを知っているので、株価が急落した時には、日銀の介入が入るだろうということを想定した上で、株を購入する動きもあります。

●各国中央銀行による金融緩和で、世界中が金余りに

金融緩和の動きは、日銀だけの話ではありません。コロナ禍による景気後退を防ぐため世界中で金融緩和が行われています。そのため、世界中にお金が余っている状態です。NYダウもドイツDAXも株価は3月末あたりから上昇しており、コロナ禍発生前の株価水準に近づいてきています。

つまり、世界中の株価が中央銀行による金融緩和によって上昇しているのです。コロナバブルとも言われているこの状況は、決して健全なものではありません。株価が実体経済を表しているとは言えないからです。

現時点では外国人投資家による日本株の買入れはそれほど増えていないものの、世界中で金余りの状態の中、比較的感染者数が少なく、死亡者数も少ない日本は投資対象として選ばれる可能性があります。そうすると益々実体経済と乖離した株価になる可能性があります。

●日銀のETF残高増加による影響

(1)ゆがんだ株主構成とガバナンスの問題

5月27日発表した日銀の2019年度の決算では、ETFの3月末の保有額(時価ベース)が約31兆2千億円になっています。2020年度は、コロナ禍による経済危機への対応でETFの新規買い入れ枠を12兆円とすることから、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を上回る可能性が出てきました。GPIFの国内株式の保有残高は、2019年度第3四半期で約42兆円だからです。

東証第一部の3月末の時価総額は、530兆円なので、31兆円分保有する日銀は、東証第一部全体の5.8%の株を保有していることになります。5%以上を保有する株主を一般的に「大株主」と読んでいるので、日銀は一部上場企業の大株主ということになります。

参考記事:日銀、日本株の最大株主に 来年末にも

もちろん、ETFはファンドなので、日銀が直接議決権を行使したりすることはできませんが、大株主が実質的に日銀で、逆に何も意見を言わない大株主というのも、それはそれでガバナンス上問題と言えます。株主による経営陣に対する牽制が適切になされない可能性があるからです。

今後も日銀がETFを買い続けるとすれば、日本の上場企業の最大の株保有者となり、上場企業は日銀の傘下にあるような形になってしまいます。実際、既に日銀が筆頭株主になっている企業もあるようです。民間企業の筆頭株主が中央銀行というのは、やはり異常事態としか言いようがありません。

(2)株価への影響

日銀は、3月以降、株価が急激に下がった場合には、1日あたり1000億円から2000億円規模で株式を購入しているので、株価の急落は抑えられています。株価の暴落を防ぎ株価を安定させるという意味ではうまく機能していますが、本来株価が下がるべき所で下がらないというのは価格形成として健全な状態とは言えません。

先行きが不透明な中、緊急事態宣言時の自粛による経済へのダメージも大きい状況で、株価が高水準なのは、明らかに金融緩和の影響と言えます。日銀が大量にETFを購入しているという事実もそうですが、多くの投資家は、株価が下がったときには日銀が介入に入るので株価は大きく下げないと思って投資しているからです。その安心感から、日本株が買われているのです。

他方、信用取引などで下げ相場で儲けようとしている人の場合、株価の下落を日銀に阻止されている状態なので、うまく利益を出せないという弊害が出ています。

一見すると株高は良いことのように思えるかもしれませんが、そもそも株取引は、株価が下がったところで買って、高くなったら売るのが基本です。それが、今は、株価が下がると日銀が介入するので株価が下がらず、なかなか株を購入するタイミングがないという問題もあります。実体経済からすると今の株価はあまりにも高すぎるので、介入するにしてももう少し抑制的に行われるべきだと思います。

(3)出口戦略の難しさ

日銀は、金融緩和の実施によって、国債やETFの買入れを増加させており、資産残高は、6月20日現在で約649兆円になります。特にリスク資産が多くなればなるほど、価格変動リスクが高まります。株価が下がれば債務超過になる可能性もあり、中央銀行としての信用が毀損されます。

また、金融緩和の出口戦略の難しさは至るところで主張されているところです。日銀はETFを長期保有しますが、永遠に買い続けることはできず、日銀がETFを購入しなくなった段階で株価は下がるかもしれません。さらに、日銀がETFを売却し始めれば、株価は一気に下がるでしょう。大株主が市場から撤退するわけですから市場は大混乱に陥るかもしれません。

日銀は、アベノミクスと金融緩和によって一気に景気回復させ、景気が上向いた段階でETFを売却し、金利の引き上げをしたかったはずです。しかし、結果は、企業は内部留保ばかりして賃金を上げず、設備投資も消極的だったために物価は上昇しませんでした。さらに、今回のコロナ禍で、企業の業績も悪化したことから、出口戦略どころではなくなってしまいました。正に「泣きっ面に蜂」という感じで、黒田総裁もさぞ頭を抱えていることでしょう。

この苦しい局面に簡単な打開策はありませんが、ETFを市場に放出することは既に述べたとおり難しいため、含み益がある段階で、税制上の特例措置をした上で、取得価格相当額で複数回に分けてGPIFに譲渡するのが良いのではないでしょうか。GPIFであればETFをすぐに市場に放出せず時間を掛けて放出することができるし、金融政策から切り離すことができるからです。そうすれば、含み益相当額は年金運用益として年金受給者の利益になり、日銀も取得価格相当額での売却であれば損失を生じさせることなくバランスシートを改善することができます。

ただ、これを実現にするには、財務省と厚労省との調整が必要になるので、実際にはかなり難しいと言えます。金融政策の独立性との問題もあり、出口戦略について政治家の力を使うべきなのか日銀としては難しい判断が求められます。

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