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「日本のあり方を示すべき税制改正にメッセージ性が見えない」民間税調、21年度の大綱を分析

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「日本のあり方を示すべき税制改正にメッセージ性が見えない」民間税調、21年度の大綱を分析
YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=7tZWRXXQhkU)より

2021年度の税制改正大綱には、菅義偉首相が成長戦略とする脱炭素社会やデジタル化に関連した項目や、新型コロナの対策として企業や家計を支えるための減税策が並びます。

大学教授や弁護士らでつくる民間税制調査会のオンラインシンポジウム(YouTubeでも別途解説
)が12月20日に開催され、租税法の第一人者・三木義一氏(青山学院大学名誉教授)は、「大綱は130ページもあるが、小粒な内容になっている。本来、税制は日本の在り方を示す指標。ものすごい影響力があるものなのに、私たちの社会をどうしていくのかというメッセージがなかなか見えなかった」と総評しました。

シンポやYouTube動画の内容をもとに、今回の大綱のポイントを振り返ります。(ライター・国分瑠衣子)

●「外国人を優遇したいというのが透けてみえる」

シンポで、民間税調メンバーの青木丈・香川大学教授は「今回のキーワードは①コロナ対策②デジタル③グリーンの3つで、全体的に投資を促す内容になっている」といいます。その上で「全面には出ていないが、裏では外国人を優遇したいというのが透けてみえる」と解説します。

青木教授が指摘する「外国人への優遇策が透けてみえる」とはどういうことでしょうか。

一つは高度な金融知識を持つ人など一定の在留資格を持つ外国人を対象に、海外資産を相続税の課税対象から外すことにしたのです。

日本の相続税の最高税率は55%と主要国に比べて高く、海外では「Never die in Japan」(日本では死ねない)と、批判の声もあるといいます。そこで、これまで滞在期間が10年を超えた人には、海外資産にも課税していたものを、2021年度以降は、何年日本に住んでも国外の資産は課税の対象外としました。

「高度な金融知識を持つ人」としているのは、香港の民主化運動の激化で、香港の国際金融センターの地位が揺らぐという見方があり、日本が税を優遇して優秀な人材や海外のファンドを誘致し、国際金融都市の役割を担おうという計画があるためです。

三木氏は「一次的に日本で仕事をしている人が亡くなった時に課税されるという問題があったので、配慮すべきという背景もあるが、これは『日本にいてください、相続税を安くしますから』ということでは。日本人の中で対応できないから、海外に頼らざるを得ないということを政府が認めている感じがして、なんだか情けない」と指摘します。

●「賃上げ税制は本当に効果があったのか」

青木教授が挙げた3つのポイントの内容を見ていきます。①コロナの経済対策関連では、生活への打撃を緩和するため、住宅ローン減税の特例の延長や、面積の要件緩和が盛り込まれました。固定資産税の据え置き措置も講じます。中小企業の支援策として、軽減税率の特例の2年延長などが入ります。また、従業員の給与を引き上げた会社の法人税を軽減する「賃上げ税制」も見直しました。

しかし、三木氏は「前から続く賃上げ税制だが、実際に効果があったのか検証はなされているのか。こんなことをやるよりも雇用環境をよくして、非正規職員を正規職員にしていくような法制をつくるほうがもっと大事だと思う」と突っ込みました。青木教授も「大企業の内部留保が増えている中、従業員の賃金に回すことを促す施策にはなっていないと思うし、検証が必要」とコメントしました。

②はデジタル・トランスフォーメーション(DX)投資促進税制です。企業にも変革を促すために、DXを進めるための設備投資やソフトウエアの研究開発にかかる費用は、法人税から最大5%を控除しますよ、という内容です。これは2年間の時限措置です。

新型コロナの経済対策の10万円の給付では、マイナンバーカードで申請すればスムーズという触れ込みでしたが、照合作業に時間がかかり給付が遅れ、大混乱に陥りました。日本の行政のデジタル化の遅れが浮き彫りになり、これではいけないと、菅政権はデジタル庁創設へ向け、政策を加速させています。

③のグリーンは、温暖化ガス排出量実質ゼロの実現に向けた、投資促進税制です。脱炭素への貢献に応じて投資額の5%から10%を法人税から差し引くことができる税制上の優遇措置を講じます。このほか、エコカー減税の特例の見直しや適用期限も2年延長します。

●「国際税率の割引競争は、国家の課税権の消滅だ」

三木氏は結びとして、国際的な問題になっている巨大プラットフォーマーなどの租税回避についても指摘しました。

「アイルランドが法人税率を大幅に引き下げたことをきっかけに、他の国でも国際税率の割引競争が起こっている。これは国家の課税権の消滅だ」と問題提起しました。

その上で租税回避対策として「国家はもう一度、市民のために課税権を行使する仕組みをつくるべきだ。立法措置をとれば日本から企業が海外に出て行っても課税できるし、日本に籍をおいている企業よりも高い税率で課税する仕組みもつくることができる。

日本だけでは問題が出てくるかもしれないが、国家が主権をもっているということはそういうことができるということだ。税収目的の税制から、政策目的の税制に発想を変える時で、必要なことはやりましょう」と呼び掛けました。

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