申告直前でも節税できる!?フリーランスが知っておくべき「貸倒引当金」ってなに?

2月に入り、間もなく確定申告の受付が開始されます。これから行う確定申告書の作成や納税で頭を悩ませている人もいるのではないでしょうか。そんな申告の直前からでもできる節税は難しいですが、直前でできる節税手段のひとつが貸倒引当金を計上することです。このページでは、貸倒引当金についてご説明いたします。
目次
貸倒引当金とは?
貸倒引当金とは、売掛金などの債権が、取引先の倒産などによって回収不能になるリスクに備えて、一定金額を損失として計上するための勘定科目です。「損失に計上する」ということは「経費が増える」ということと同じなので、貸倒引当金として計上することで節税につながるという効果があります。
貸倒引当金の対象になるもの
実際には以下のようなものを貸倒引当金にすることができます。
- 売掛金
- 未収金
- 受取手形
- 事業での貸付金
貸倒引当金の対象にならないもの
一方で以下のようなものは貸倒引当金にすることはできません。
- プライベートでの貸付金
- 保証金、敷金、預け金など
- 一時的な仮払金、立替金
- 手付金、前渡金
- 相手方に対して買掛金などの相殺が可能な金額部分
貸倒引当金の計算方法
貸倒引当金を計上することを、貸倒引当金の繰入れ(くりいれ)といいます。この貸倒引当金の繰入れについては、対象となるすべての金額を繰入れることできるわけではありません。税法では、「個別評価による繰入れ」と「一括評価による繰入れ」の2種類に区別され、その繰入れのルールが定められています。
以下に、それぞれの区分と、実際の繰入れをすることができる額の計算方法と、その仕訳方法をご紹介いたします。
個別評価による貸倒引当金の繰入れ
個別評価による貸倒引当金とは、個別の債権の状況に応じて、繰入れることができる限度額が定められているものを指します。それぞれの債権の状況と、繰入れをすることができる限度額は以下の表の通りです。
No | 債権の回収が不能又は難しいと見込む理由 | 貸倒引当金の繰入れ限度額 |
---|---|---|
1 | 貸金等の債務者について、「更生計画認可」「再生計画認可」「特別清算に係る協定の認可」の決定などの事由が生じたとき | 貸金等の額のうち、その事由が生じた年の翌年から5年以内に弁済されることとなっている金額以外の金額 |
2 | (1.に該当する場合を除き)貸金等の債務者について、「債務超過の状態が相当期間継続しその営む事業に好転の見通しがない」「災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じた」ことなどの事由から取立ての見込みがないと認められるとき | 貸金等の額のうち、取立て等の見込みがないと認められる金額 |
3 | (1.2.に該当する場合を除き)貸金等の債務者について、以下の事由が生じているとき・更生手続開始の申立て・再生手続開始の申立て・破産手続開始の申立て・特別清算開始の申立て・手形交換所による取引停止処分 | 実質的に債権と認められない部分の金額を除いた貸金等の額の100分の50に相当する金額 |
4 | 外国の政府、中央銀行又は地方公共団体に対する貸金等のうち、これらの者の長期にわたる債務の履行遅滞によりその経済的な価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められる事由が生じているとき | 実質的に債権と認められない部分の金額を除いた貸金等の額の100分の50に相当する金額 |
一括評価による貸倒引当金の繰入れ
一方、一括評価による貸倒引当金の繰入れとは、12月末時点の売掛金などの債権の残高の5.5%(金融業の場合は3.3%)の金額を、貸倒引当金に繰入れることができます。
これは特定の事業者が行うことができる特例として定められています。
貸倒引当金の注意点
1.一括評価による貸倒引当金の繰入れは青色申告事業者のみ
貸倒引当金の計算方法については、個別評価と一括評価の2種類がありますが、一括評価による繰入れは、青色申告を選択して確定申告をする事業者だけが行うことができます。
2.個別評価による貸倒引当金の繰入れには明細書の作成・提出が必要
個別評価による貸倒引当金の繰入れについては、白色申告での確定申告を行う事業者でも行うことができます。しかしながら、このためには、「個別表亜による貸倒引当金に関する明細書」を作成して確定申告のときに合わせて提出する必要があります。
3.貸倒引当金を繰入れた翌年には繰戻すことが必要
貸倒引当金の繰入れを行うことで、経費が増えるため節税につながります。しかしながら、貸倒引当金に繰入れた金額は、翌年には逆に収入として計上しなければなりません。これを貸倒引当金の繰戻しといいます。
つまり、貸倒引当金による節税は、1年目だけを見れば節税効果がありますが、2年間をトータルで考えると、プラスマイナスゼロになります。このため、例年以上の大きな利益が出たときや、右肩上がりで利益が伸びているときに活用できる節税方法といえるでしょう。
おわりに
この貸倒引当金は、青色申告をする事業者であれば、確定申告直前からでもできる数少ない節税方法です。今まで知らずに貸倒引当金を計上していなかった人は検討されてみてはいかがでしょうか。また、売上や利益が右肩上がりで伸びている人は、貸倒引当金の節税メリットを得るためにも、来年に向けて青色申告を検討するとよいかもしれません。
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