会社員の特定支出控除とは?

資格の取得や勉強、書籍の購入など業務に関連する支出が多くある会社員であれば、節税につながる可能性がある仕組みが「特定支出控除」です。
特定支出控除を受けるには、原則勤務先に証明書を記入してもらい、確定申告の手続きをする必要があります。業務に関係する支出の多い会社員の方は、本ページを参照して、条件に該当するかどうか、該当する場合には、その節税額はどれくらいなのか、シミュレーションしてみましょう。
目次
特定支出控除とは?
「特定支出控除」とは、会社員などの給与所得者でも、特定の経費が一定の支出額を超えると、その超えた金額の分だけ所得控除をすることができる仕組みのことです。所得控除とは、所得(収入)の一部の税金を免除することです。つまり所得控除が多ければ多いほど節税につながります。
特定支出控除の仕組みは以前からありましたが、平成25年(2013年)に制度が改正され、特定支出控除が適用される対象の範囲が拡大し、控除額の計算方法も変更されました。また平成28年(2016年)の改正で、給与等の収入金額の区分がなくなりました。
特定支出控除の対象になる7種類の支出(経費)
特定支出控除の対象となる経費(特定支出)は全部で7種類あります。それぞれの定義は以下のように定められています。
1.通勤費
一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出。
2.職務上の旅費
勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅行のための支出。
3.転居費
転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出。
4.研修費
職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出。
5.資格取得費
職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(平成25年分以後は、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象となる)。
6.帰宅旅費
単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出。
7.勤務必要費
次に掲げる支出で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの(平成25年分以後、特定支出の対象。その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限る)。
図書費
書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用。
衣服費
制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用。
交際費等
交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出。
令和5年分からキャリアコンサルタントの証明も控除の対象に
特定支出控除を受けるには、原則勤務先の証明が必要ですが、令和5年分からは、教育訓練給付指定講座を受講し「4.研修費」または「5.資格取得費」に該当する場合は、国家資格であるキャリアコンサルタントの証明で控除の適用が認められるようになりました。
特定支出控除の適用条件:支出の合計金額
特定支出控除の受けるためには、対象となる支出の合計額が、以下の条件を満たすことが必要です。
その年の収入金額 | 特定支出の合計額 |
---|---|
一律 | その年中の給与所得控除額✕1/2 |
年収別|特定支出控除が適用できる合計金額の算出早見表
以上の条件に、給与所得控除の金額を当てはめると、年収と特定支出控除を受けることができる金額・計算式は以下のようになります。以下の計算式と金額は、特定支出控除を受けるために超える必要がある特定支出の合計金額とその計算式であることにご留意ください。
つまり、例えば年収が180万円であれば、特定支出の合計額が31万円を超えると、その超えた金額が特定支出控除の対象となります。
その年の収入金額 | 計算式 | 金額 |
---|---|---|
162万5000円以下 | ー | 27万5000円 |
180万円以下 | 収入金額✕20%ー5万円 | ~31万円 |
180万円超 ~360万円以下 | 収入金額✕15%+4万円 | 31万円~58万円 |
360万円超 ~660万円以下 | 収入金額✕10%+22万円 | 58万円~88万円 |
660万円超 ~850万円以下 | 収入金額✕5%+55万円 | 88万円~97万5000円 |
850万円超 | ー | 97万5000円(上限) |
例えば、その年の収入金額が600万円の場合、計算すると600万円✕10%+22万円=82万円となります。このため、特定支出の合計額が82万円を超えると特定支出控除の対象となります。
特定支出控除の節税額シミュレーション
それでは、具体的な節税額はどれくらいになるか計算してみましょう。以上の例と同じように年収は600万円で、特定支出が150万円あるときのケースでシミュレーションします。
特定支出控除がなければ以下の計算式から、所得税は約44万円となります。
(年収600万円-給与所得控除164万円)✕所得税率20%-控除額42.75万円=所得税44.45万円
一方、特定支出控除をすると、以下の計算式から、所得税は約30万円となります。
(年収600万円-給与所得控除164万円-(特定支出150万円-給与所得控除164万円×50%))✕所得税率20%-控除額42.75万円=所得税30.85万円
このように、以上のケースでは、特定支出控除を利用すると約14万円の節税につながります。所得税の計算方法について、詳しく知りたい人は以下の記事をご参照ください。
特定支出控除を受けるための手続き
特定支出控除を受けるためには、自身で確定申告の手続きを行います。
確定申告書を提出する際には、以下の書類を添付します。添付書類として、勤務先またはキャリアコンサルタントに証明書を記入してもらう必要があることがポイントです。書式については、以下の国税庁のHPからダウンロードすることができます。
- 特定支出に関する証明書
おわりに
以上が特定支出控除の仕組みです。業務に関連する資格取得などの勉強のために専門学校に通ったというような人であれば、特定支出控除を適用できる可能性は高いでしょう。本ページが参考になれば幸いです。
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