どうしても愛犬に財産を相続させたい!これって可能?

最近は空前のペットブームとも言われており、総務省の家計調査のデータによると、ペット関連費の支出金額が、2000年から2015年の間に1.5倍も増えたそうです。特に、女性の単身世帯のペットにかける費用が高いようで、さながら人生を共にするパートナーとして、ペットがその地位を確立しつつあるのかもしれません。
そんな中、自分にもしものことがあった際に、「自分の財産を愛するペットに相続させたい」と本気でご相談に来られる方が時々います。では、実際にそのようなことは可能なのでしょうか。
ペットは相続人にはなれないが、、、
どんなに愛情を込めて可愛がっていた愛犬、愛猫だとしても、法律の上ではペットは「人」ではなく「もの」として扱われてしまいます。そのため、人ではない以上は財産をペットに相続させることはできません。
とはいえ、自分の死後も愛するペットの生活が保障されないと、死んでも死に切れないという方も多いのではないでしょうか。
ご安心ください。
ペットは相続人にはなれなくても、別の方法で飼い主の死亡後の生活を守ることができます。
遺言書でペットの世話をする人を指定できる
実は、遺言書に自分の死後、誰にペットの世話をお願いしたいのか書くことができます。例えば、「愛犬のポチは、長男〇〇が飼育する」といった感じです。ただ、これだけだと、長男が面倒くさい、と言って拒否する可能性があります。
遺言書は一定の効力がありますが、本人が拒否できないわけではないため、このように遺言書によってなんらかの「お願い事」を記載する場合は、それに見合った「見返り」をセットで記載することがポイントです。
「長男は愛犬のポチの飼育をする。またそのための費用等として、100万円を遺贈する」といった感じです。長男はこの100万円を愛犬の餌代などに充当することで、ポチは美味しいエサを今後も約束されることでしょう。
このように、何らかの負担を強いる代わりに、一定の財産を遺贈することを「負担付遺贈」といいます。負担付遺贈を活用すれば、ペットに直接財産をあげることができなくても「ペットの生活の保障」という目的は十分達成できるでしょう。
また、負担付遺贈は次のようなケースでもよく用いられます。
- ローンを返済する代わりに、一定の財産を遺贈する
- 障害がある子供の面倒を見る代わりに、一定の財産を遺贈する
負担付遺贈を使う際の注意点
負担付遺贈を使えば、自分の死後に起こり得る不安要素を事前に解消できるため、最近の遺言書にはよく用いられるようになりました。ただし、負担付遺贈を利用するにあたっては、次の2点に注意が必要です。
ポイント1:生前に話しておく
負担付遺贈は、あくまで遺贈を受ける側が負担内容を納得して受け入れてくれなければ効果がありません。たとえ遺贈されたとしても、引き受けたくないとなれば辞退できるのが負担付遺贈の特徴です。
そのため、ペットの世話などをお願いしたい場合は、あらかじめそれをお願いする人に対して生前に直接話して理解してもらうことが重要です。
ポイント2:遺言執行者を指定する
負担付遺贈をしても、中には財産だけもらって義務を果たさない人もいます。せっかくペットのためにお金を遺贈しても、お金だけ持逃げしてペットをほったらかしにされたら大変です。
そこで、このような事態を避けるために、遺言書で「遺言執行者」を指定すると良いでしょう。
遺言執行者とは、遺言書の内容が正しく実行されているかどうかをチェックする人です。通常は、遺言書の作成を相談した弁護士、税理士、行政書士に依頼しますが、相続人のうち誰かを指定することもできます。遺言執行者を指定しておけば、ちゃんとペットの世話がされているかどうかまで確認してもらえるためより安心です。
それでも心配なら、死因贈与契約という方法も
負担付遺贈では心配という方の場合は「死因贈与」という方法もあります。
死因贈与とは、「自分が死んだら〇〇を贈与する」という契約です。負担付遺贈は、遺贈する側が一方的にお願いするのに対し、死因贈与の場合は生前に、贈与を受ける人の合意のもと取り交わす「契約」であるため、その意味で負担付遺贈よりも確実です。死因贈与契約の内容に、「ペットの世話」を条件につければ、効果としては負担付遺贈と同じです。
まとめ
家族でペットを飼っている場合は、誰かが死亡したとしても、それによってペットが路頭に迷うことはないでしょう。
ですが、高齢の一人暮らしの方がペットと一緒に暮しているというケースでは、「負担付遺贈」や「条件付き死因贈与」などによって、事前に適切な対策を講じておかないと、愛するペットが行き場を失ってたらい回しにされてしまう恐れがあります。
ペットに直接財産を相続させることはできませんが、一定の財産を使って「ペットの世話をお願いすること」は可能ですので、ペットを飼っている方はよく覚えておきましょう。
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