みずほ、紙の通帳発行に「1100円」の手数料 デジタル資産時代の「相続」問題
相続税

みずほ銀行が2021年1月から、70歳未満の顧客が新規に口座を開設して、紙の通帳を発行する際に、1冊あたり1100円の手数料をとることが報じられた。同時に、ネットで管理できる「デジタル通帳」の提供を始め、電子化を加速させる。
読売新聞によると、すでに口座を持っている顧客からは手数料をとらない。また、70歳以上の顧客についても、デジタル化を進めるのが難しいため、紙の通帳が無料で配られる。
デジタル通帳については、三菱UFJ銀行や三井住友銀行も進めており、今後、紙からデジタルへの流れがますます加速しそうだ。
デジタル化がさらに進んだ場合、相続などで問題は起きないのだろうか。佐原三枝子税理士に聞いた。
●遺言を残さない日本人、デジタル化で直面する問題
日本人は海外の先進国に比べ、遺言を残す習慣がまだ一般的ではありません。親族が生前から財産管理をしていた高齢者の相続でもない限り、この現状の中では遺産の全容の把握は簡単ではありません。
何もかも秘密主義で亡くなられた一人暮らしの方の相続を経験したことがありました。
ご自宅の家探しにはじまり、死後に送付される郵便物の確認、近隣の金融機関への取引の有無の確認など、全容解明は困難を極め、どこかで故人がうす笑いながら私たちを見ているのではないかと思ったほどでした。それでも、一般的な金融機関に金融資産は預けられていたので把握は可能でしたが、これらがデジタル化されていたらどうなっていたでしょうか。
最近ではデジタル遺産、デジタル相続という言葉が生まれています。通帳もなく、郵便物も届かず、故人のPCやスマホのパスワードが解除されなかったら途方にくれます。
若くして急死された方の相続をしたときは、まさにこの状態になりました。しかし、生前から資産形成については隠し事なく話されていたので、思い当たるパスワードで配偶者の方がなんとかパソコンを開き、すべての金融取引を速やかに把握することができました。
●家族間で資産についてのコミュニケーションを
今回、通帳をなくしてデジタル化する、ということにニュースとしてのインパクトがあったのですが、そもそも海外の銀行では通帳がないのが普通です。
若くして急死され、さらに海外に金融資産をお持ちだった方の相続の話を聞いたことがあります。相続人は高齢の親御さんでした。海外赴任の先々で金融資産があったのですが何も知らされていませんでした。その調査費用や海外の相続に特有の手続きに高額の費用が掛かり大変だったそうです。海外口座をお持ちの方は、このような事態に備えて、ご家族との共有口座にしておかれるのも一案です。
デジタル資産には金融機関だけでなく、仮想通貨や様々なデジタル決済の残高なども含まれます。資産がデジタル化されるほど秘密性が高くなります。こんな時代ほど、逆に家族間での資産についてのコミュニケーションをしっかりしていただき、ID、パスワードの管理も含め、若い時から遺言とまでは言いませんが、毎年一定の時期に財産リストを書き換えるくらいの管理意識が必要とされるように思います。
●マイナンバーで財産が国に把握される日がやってくる?
これが逆に、マイナンバーなどですべての財産が芋づる式に把握されるくらい日本がIT化されれば、デジタル化はむしろ財産の把握を楽にするでしょう。そんな日が来るまでアナログな管理が必要ですが、そうなった日本がハッピーかどうかはわかりませんね。
最後に、デジタル相続に関与させていただく中で感じたことを少し。ブログもTwitterもほぼ半永久的にあなたの死後も残ります。死後にPCやスマホが遺族によって開かれることはほぼ確実です。財産管理だけでなく、何を残し、何を消すかを日々意識しておくことも大切ではないかと思います。
【取材協力税理士】
佐原三枝子(さはらみえこ)税理士
Beautiful Business Beautiful Life 中小企業の利益構造と経営者の思考を美しくし、関わる人すべての人生を豊かにすることを理念に掲げ、正確な税務会計をベースとした緻密な経営コンサルティングを提供している
事務所名 : 佐原税理士事務所
事務所URL:https://www.office-sahara1.jp/