元国税局職員の芸人による税務調査体験談「口裏を合わせた『期ずれ』の結果・・」

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元国税局職員の芸人による税務調査体験談「口裏を合わせた『期ずれ』の結果・・」

著者: 倉田 健一 芸人

元国税局職員さんきゅう倉田です。好きな仮想通貨は「ビットコインキャッシュ」です。

税務調査には必ずチェックする項目というのがいくつかあって、それは不正かミスが起こりやすい項目なのですが、その中で一般の方に馴染みがないものが、「期ずれ」です。

期ずれとは、決算期がずれることを言います。今回は、税務調査の基本である「期ずれ」について解説します。

そもそも決算期って何?

日本国内で誰かと取引しようと思ったら、ほとんどの場合、個人か法人(会社)とすることになります。

個人は、1月から12月を単位として収入や経費を計算して確定申告をします。これは、会社員の方もなんとなくご存知かもしれません。

しかし、法人は1月から12月を一つの単位としません。決算期というものを設定して、自由に決めることができます。3月決算にすれば4月から3月が一つの単位、12月決算にすれば1月から12月が一つの単位になります。3月決算の場合の、3月は「決算期末」になります。これは、個人の場合の「年末」に当たります。

「期ずれ」の何が問題になるのか

決算期末に大きな取引があったとします。法人では、それを決算期末に売上にするか、翌月に持ち越して、次の決算期の売上にするかが問題になることがあります。なぜでしょうか。

納税額が変わるからなのです。基本的に、税金は、1年に一回確定申告をして納税します。これは、個人でも法人でも同じです。そして、ほとんどの方が、納める税金をなるべく後回しにしたいと考えます。

例えば、1,000万円の納税があるとして、それを1年後に後回しにすれば、1年間自由に使えます。誰かに貸せば利息をもらうこともできますし、利息を払って銀行から融資を受ける必要もなくなるかもしれません。みんな、支払うお金は少しでも後回しにしたいと考えるのです。

売上が少なければ、納める税金は減ります。しかし、売上を除外するのは税法に反する。追徴課税も怖いし、良心の呵責に苛まれる。それならば、次の決算期にずらすのはどうだろう。そんなに、心が痛まない。3か月とか半年ずらすのは無理があるけれど、1か月以内ならいけるかもしれない。たったの1週間とか数日なら、誤魔化せそうだ。決算期末の取引を、次の決算期の最初の方につけかえてしまおう。

このように、恣意的に期ずれが発生します。もちろん、単純なミスや、税法の解釈の違いにより起こることもあります。

取引のタイミングはどうやって決めるのか

では、取引がいつあったのかは、どのように判断するのでしょうか。

相手に連絡した日? お金を渡した日? 物を受け取った日? 請求書を出した日?

法人税法の基本通達には、「棚卸資産の販売による収益」についての記載があります。この場合の「棚卸資産」とは、会社の「商品」と考えてください。

(棚卸資産の販売による収益の帰属の時期)
2-1-1 棚卸資産の販売による収益の額は、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入する。

つまり、「商品を引き渡したときに売上を計上してください」といっています。では、「引渡したとき」とはいつなのでしょう。

(棚卸資産の引渡しの日の判定)
2-1-2 棚卸資産の引渡しの日がいつであるかについては、例えば出荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日、検針等により販売数量を確認した日等当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるものとする。

つまり、引渡した日は、商品を出荷した日、買ってくれた人のところに届いて確認した日、買ってくれた人が使えるようになった日、自分が販売数量を数えた日のどれかです。

どの日を基準にしてもいいですが、取引ごとに好き勝手に選んではだめです。毎回同じ基準にしてください」ということをいっています。

だから、売上を次の決算期にずらすために、決算期末にだけ、引渡しの基準を変えることはできないのです。しかし、変える人がいます。

口裏を合わせた「期ずれ」はこうして発覚した

中古のオフィス用機械を販売する会社に税務調査に行ったときのことです。

決算期は3月で、4月に1台2,000万円の機械の売上がありました。その会社の規模からすると、かなり大口の取引になります。その商品の仕入れは3月15日。怪しいと考え、徹底的に追求することにしました。

社長の話では、相手に商品が届いたのは、4月3日。請求書を送ったのは4月5日。入金があったのは5月末で、商品は社長自らが、トラックで運んだとのことでした。

配送業者に頼んでいれば、その伝票から配達の日が分かりますが、その証拠はない。取引先に電話をしたいと言うと、社長が電話をかけ、その場から席を外し、5分ほど話してからぼくに変わってくれました。

取引先の担当者は「たしかに、4月3日に受け取ってますよ」と言います。しくじりました。口裏を合わせているかもしれません。あとでこっそり反面調査をすればよかった。別の証拠を見つけるしかありません。

ふと部屋の中を見ると、大きなカレンダーがあります。カレンダーには取引の予定が書き込まれていて、過月分がはがされずに残っていました。めくってみると、3月27日に、当該取引の商品の名前と「受け渡し」の記載がありました。すぐに、コピーを取り、証拠保全をして持ち帰ります。

この取引には、引き渡し日の仮装があったとして、重加算税を賦課して、会社は本来の納税額の1.35倍を納税することになりました。

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