元国税局職員の芸人が解説!知られざる国税局査察部「マルサ」の実態

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元国税局職員の芸人が解説!知られざる国税局査察部「マルサ」の実態

著者: 倉田 健一 芸人

元国税局職員さんきゅう倉田です。高校の時の部活は「査察部」です。

「マルサ」という隠語で有名な「査察部」という国税局内の部署があります。ぼくが行っていた法人税の調査のように、調査を行うという点では同じですが、その目的が異なります。

査察部の目的と脱税の実情

査察部では、確定申告の誤りや不正を見つけて追徴課税することではなく、悪質な脱税者を見つけ、告発し、刑事責任を追求することを目的としています。映画『マルサの女』では、権藤社長率いるラブホテル運営会社の脱税を告発していました。

では、現実で脱税を行う会社はどのような会社であるかというと、上場しているような会社はそんなことはせず、取引先の人以外は名前を存じ上げないような規模の会社や、個人が行っているケースが多いです。大きな会社はリスクもありますし、監査法人もいるので脱税によるインセンティブがあまりなく、基本的には、税法の解釈などで争うようになります。

査察部というのは、情報部門と実施部門に分かれます。情報部門は「ナサケ」と呼ばれ、査察部の強制調査に向けて情報を集める部署です。ちょっと前に、「横目調査」が問題になっていました。

横目調査とは、銀行に行って調査をするときに、銀行に知らせた調査対象の会社以外をこっそり調査することです。実際には屁理屈とともに行われているやり方で、違法であると考えられています。調査対象者を選定する基礎となるような、そのような証拠集めは違法とされていますが、「あの会社は脱税してそうだ」などと事前に分かるわけはありません。そこで銀行に行き、数多の預金口座を洗い、その中で規則的に入出金を行う口座を発見し、証拠として持ち帰るのです。

L字に稲妻・・・税務署が目をつける残高の軌跡

規則的とは、「L字型」「稲妻型」といわれる入出金の動きです。細かい入金が続き、ある程度溜まったところですべて出金されていれば、通帳を記帳したときに残高がL字に記載されますし、入金がある度に同額を出金していれば残高の軌跡が稲妻形になります。そのような入出金は合理性の乏しい不正の一翼である可能性が高く、調査官の好物です。

調査の効率や牽制効果を考えれば、個人的には横目調査が必要であると考えますが、現在の法律では違法とされ、それでもなにかしら理由をつけて行われています。横目調査がないと円滑な業務の妨げになる。しかし、公には認められていないわけです。

少し前に報道されましたが、査察部の職員が銀行調査中にJRAから1億円を超える入金がある口座を発見したそうです。もちろん、銀行に伝えた調査対象者とは異なります。しかし、この口座を証拠として持ち帰りたい。正確には、この口座の資料を印刷して持ち帰るわけですが、JRAからの1億円以上もの入金となると、JRAと取引をしているか、競馬の払戻金であると容易に想像できます。査察部の経験があれば、それが払戻金であるとその場で分かっていたかもしれません。

しかし査察部は「これは調査対象者と取引がある口座だ」として、横目調査をしました。これが問題になって、あとから納税者から訴えられたわけですが(国税側が勝ちました)、でも、そういう違法スレスレな調査によって、脱税の情報を集め、悪質な脱税者を見つけることができるわけです。結果的には、競馬の配当金を1億円以上もらっていたのに、確定申告をしていなかったわけですから。そうすると、正しい申告・納税を行うみなさんからすれば、違法スレスレでも悪質な納税者が追徴課税され、逮捕される方がよいかもしれません。

本来、JRAに反面調査をすればこのような横目調査は必要ありませんが、競馬の払戻金という、現金と振込とを選べるような取引では、振込を選択した人の情報のみ吸い上げることになり、課税の公平性を担保できません。泣く泣く横目調査をするしかないわけです。

脱税にも流行がある?!

そのような調査をし、年間何千万円以上の脱税の証拠が固まったら、小さな現場では80名、大きな現場では400名もの調査官を動員して、実施部門と情報部門が強制調査に入ります。

裁判所の礼状を持っていますから、社長がいようといまいと、好きなだけ調査ができます。自宅にも行きますし、支店にも行きますし、愛人の自宅にも行きます。ダンボールに資料となりそうなものを詰め、証拠として押さえます。とてつもない人数で年間170件以上の強制調査を行い、そのうち70%を告発しています。

しかし、「脱税だ!」と乗り込んでも、3割は外してしまう。情報部門の集めた情報はなんだったのか。アンパンをかじりながら木枯らし吹きすさぶ中張り込んだのはなんだったのかーーとてつもなく悲しいそうです。

さらに、最近は海外の取引を利用した脱税が流行っています。先日も、国内取引と国外取引を行って、消費税を還付する脱税者が逮捕されていました。一般の方には馴染みがないかもしれませんが、会社やお店は消費税を国に納めています。ところが国外の会社と取引があると、消費税が免税になって国からお金が還ってきます。このシステムを利用して、架空の国外取引を行うことで、国からお金をもらい続ける悪い脱税者が後を絶ちません。

査察部は「今後の取組は、○○ですよ。重点的に強制調査する業種は△△ですよ」と公表していて、これからは特に 悪質な脱税者を対象にし、牽制効果によって適正な申告を促す方向のようです。

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