2000万円の納税を惜しんだ結果、1.5億円脱税で有罪。インフルエンサー事件の代償【税理士が解説】
税務調査
「絶対にバレない」——そう言われて手を出した架空経費が、有罪判決という形で本人に返ってきました。
2026年7月15日、東京地裁は、自称「日本一のインフルエンサー」として活動していた広告代理業「Solarie(ソラリエ)」代表の女性(活動名・宮崎麗果、本名・黒木麗香、38歳)に、法人税法違反などの罪で懲役2年6カ月・執行猶予4年、法人に罰金4000万円の有罪判決を言い渡しました(求刑は懲役2年6カ月、法人に罰金5000万円)。裁判長は「身勝手な動機で犯行に及んだ行為責任は重い」と指摘しています。
報道によれば、手口は実体のない業務委託費(外注費)の計上でした。その額、3年間で総額およそ4億9600万円。これによって圧縮された所得により、法人税約1億2600万円・消費税約3100万円、あわせて約1億5700万円の納税を免れたとされます。
きっかけは、事業の急拡大です。想定を超える売上が立ち、顧問税理士から「このままでは納税額が2000万円になる」と告げられたことを機に、いわゆる「B勘屋」(架空の請求書や領収書を用意する業者)から実体のない請求書を用意させ、経費を水増ししたとされます。公判で被告は「売り上げが想定以上に上がってしまった。それまでは主婦で税務の知識がなく、納税の認識が甘かった」と述べました。
結果として支払うことになったのは、本税に加えて延滞税や重加算税、法人への罰金4000万円、そして前科と信用です。「浮かせようとした2000万円」とは、桁がひとつ違う代償でした。
本件は、偽の請求書という「仮装」を用いた典型的な所得隠しが、刑事事件にまで発展したケースといえます。
なぜ架空の経費は、これほど確実に見抜かれるのか。そもそも「申告漏れ」「所得隠し」「脱税」は何が違うのか。そして、売上が急に増えたとき、経営者は何をすればよかったのか。松本崇宏税理士に話を聞きました。
●架空の外注費は資金の流れと実態の有無から確実に見抜かれる
ーー今回のような架空の外注費は、一般に税務調査でどのように見抜かれるのでしょうか。
架空の外注費は、資金の流れと実態の有無から確実に見抜かれます。税務調査では、契約書や成果物の有無、銀行口座の履歴を徹底的に確認します。不審な点があれば、支払先に対して「反面調査」を実施し、相手方の帳簿や申告状況を直接照らし合わせます。
架空請求の業者はそもそも事業の実態がないか、入金後に手数料を引いてキックバックしているケースが大半であり、反面調査を行えば辻褄が合わなくなり必ず発覚します。
●「所得隠し」は重い税率だけでなく社会的信用の失墜などの制裁も受ける
ーー単なる「申告漏れ」と、意図的な「所得隠し」では、ペナルティはどれくらい変わるのでしょうか。
単なる計算ミスや知識不足による「申告漏れ」には、本来の税金に加えて10〜15%の「過少申告加算税」が課されます。一方、架空経費の計上など、意図的な仮装・隠蔽を伴う「所得隠し」と認定されると、最も重い35〜40%の「重加算税」が課されます。
さらに、手口が悪質で脱税額が大きい場合は刑事事件として告発され、今回のように「脱税」として懲役刑や多額の罰金刑のほか、実名報道による社会的信用の失墜など取り返しのつかない制裁を受けます。
●売上の急増時の対処法は「合法的な節税」と「将来への投資」が鉄則
ーー売上が急に増えたとき、経営者が取るべき「正しい」対応は何でしょうか。
売上が急増した際は、慌てずに「合法的な節税」と「将来への投資」を行うのが鉄則です。
例えば、経営セーフティ共済への加入、事業に必要な設備投資、人材採用や広告宣伝による事業拡大などが挙げられます。
今回のように、B勘屋の架空経費で所得を圧縮して資金を留保するのではなく、税理士と早期にシミュレーションを行い、事業を伸ばすための適正な投資に資金を振り向けるべきでした。結果として、将来的に会社にもたらされる利益ははるかに大きくなったはずです。
【取材協力税理士】
松本 崇宏(まつもと・たかひろ)税理士
税務調査特化税理士法人として全国6ヵ所(渋谷、錦糸町、新宿、横浜、柏、大阪)にオフィスを構え、税務調査サポートを提供する税理士事務所では国内No.1の規模を誇る。国税局に勤めていた、いわゆる「国税OB」が複数名所属。税務調査対応実績は累計1000件以上。一般業種より税務調査が厳しいと言われる風俗業界の税務に10年以上特化し、追加徴税額ゼロ円の実績も多数。
事務所名 :税務調査特化税理士 税理士法人松本
事務所URL:https://www.tokyo-consulting.com/zeimu/














