美容院代は経費で落とせる? 接客業・個人事業主の身だしなみ費用と「家事関連費」の境界線
計上
お客さまと直接会う仕事をしていると、身だしなみには気を使います。髪型を整えるのも仕事のうち、と感じている個人事業主の方は少なくないでしょう。
では、そのための美容院代は、事業の必要経費にできるのでしょうか。「仕事のために行っているのだから経費になるはず」と考えたくなりますが、税務上の線引きは思ったより厳しいようです。
税理士ドットコムに寄せられた、接客の仕事をしている個人事業主の方からのご相談を紹介します。
●相談:月1回ほどの打ち合わせがある仕事。美容院代は経費にできる?
相談を寄せたのは、主に接客の仕事をしている個人事業主です。業務は月に1回ほどの打ち合わせで、たまに研修でショールームなどに行くといいます。
美容院には3か月に1度ほど行っており、この美容院代は経費として認められるのか、と尋ねています。果たして専門家の見解はどうなのでしょうか。
●回答:事業との直接的な関連性が乏しく、原則として認められない
平田光司税理士(税理士事務所HRT)は、相談内容を前提にすると、次のように考えられるとしています。
「その美容院代を事業所得の必要経費として計上することは、原則認められないと考えます」
理由として挙げているのは、事業との関連性です。
「美容院に行かなくても顧客との打ち合わせ業務を遂行できないとはいえず、事業との直接的な関連性が乏しいためです。身だしなみを整えることは、私的な側面が強く、『家事関連費』に該当するため経費にはできないと考えられます」
家事上の費用と事業上の費用が混ざった「家事関連費」は、業務の遂行上必要であり、かつ、その必要な部分を明らかに区分できる場合に限って、その部分を必要経費にできます。美容院代は、事業に必要な部分だけを切り分けて示すことが難しい支出といえます。
西野和志税理士(西野和志税理士事務所)も、平田税理士と同じ意見だとしたうえで、相談者の仕事の内容について次のように問いかけています。
「月1回の接客だけで、事業として成り立っているのですか?」
接客業といっても幅が広く、具体的な仕事の内容が分からないと判断しにくい、という指摘です。
●モデルや芸能関係など、特別な外観が求められる仕事は別
増井誠剛税理士(税理士法人CROSSROAD)も、美容院代は原則として私的な生活費とみなされるため、経費には算入できないとしています。その理由は次のとおりです。
「たとえ接客業務に従事し、身だしなみの維持が不可欠であっても、税法上は『通常の生活においても必要な支出』とされるためです」
一方で、例外になりうるケースにも触れています。
「業務上特別な外観を求められる職種、例えばモデルや芸能関係などの場合には必要経費と認められる余地があると考えられます」
そのうえで、相談者のように月1回程度の打ち合わせやショールームへの訪問といった一般的な接客業務については、次のように結論づけています。
「美容院代は私的支出と判断されるのが通常であり、経費処理はリスクが高いといえます」
●まとめ
接客の仕事をしていても、美容院代を必要経費にすることは原則として認められません。身だしなみを整えるための支出は私的な側面が強く、通常の生活でも必要な支出とされるためです。
家事上の費用と事業上の費用が混ざった支出は、業務に必要な部分を明らかに区分できる場合に限り、その部分が必要経費になります。モデルや芸能関係など、業務上特別な外観が求められる職種では、必要経費と認められる余地があります。
一方で、一般的な接客業務の場合、美容院代を経費にするのはリスクが高いといえます。経費にできるかどうかの判断に迷ったときは、税理士に相談してみてはいかがでしょうか。















