「社宅費は非課税」は誤解? 借り上げ社宅で給与課税されないための条件を税理士が解説
税金・お金
会社が部屋を借りて従業員を住まわせる「借り上げ社宅」は、会社と従業員の双方にメリットがある制度として知られています。インターネットで調べると、「社宅にすれば節税になる」という説明も数多く見つかります。
ただ、仕組みを正しく理解しないまま導入すると、節税のつもりが、あとから給与として課税されることになりかねません。どこまでが課税されず、どこからが給与になるのでしょうか。
税理士ドットコムの「みんなの税務相談」に、借り上げ社宅制度の導入を検討している会社から相談が寄せられていました。
●相談:給与を減らし、その分を会社が家賃として払う制度は問題ない?
相談を寄せたのは、借り上げ社宅制度の導入を予定している会社の担当者です。たとえば月給50万円の社員が、17万円を上限に、自分で選んだ家に住めるようにする制度を考えています。
17万円の家を選んだ場合は、「月給を50万円から33万円に減俸し、17万円を会社が家賃として支払う」という仕組みです。給与明細では、社宅費17万円を非課税の支給項目として記載し、同額を控除項目に記載するつもりだといいます。
果たして専門家の見解はどうなのでしょうか。
●回答:「社宅費だから非課税」という規定はない
土師弘之税理士(土師弘之税理士事務所)は、相談者の考えている処理を次のように整理しています。
「基本給33万円に住居手当(社宅費)17万円を加算して、総額50万円を支給し、ここから家賃相当額17万円を控除して差引33万円を支払ったと考えることとなります」
つまり、税務上は50万円の給与を支払ったのと変わらない、という指摘です。そのうえで、次のように述べています。
「社宅費であるから『非課税』であるという規定はどこにもありません」
土師税理士は、従業員に社宅を貸す場合に、従業員から一定額の家賃(賃貸料相当額の50%以上)を受け取っていれば給与として課税されない、という経済的利益についての取り扱いと混同しているのではないか、とも指摘しています。
米森まつ美税理士(米森まつ美税理士事務所)も、社宅費は課税対象になるとしたうえで、理由を次のように説明しています。
「『課税しなくとも差し支えない』とする規定は『経済的利益=現物給与』であるため、『手当』として一旦支給する場合は給与課税の対象となります」
●会社が選び、会社が契約し、本人から家賃を受け取ることが条件
相談者が検討していた「社員が自分で選んだ家に住める」という点についても、米森税理士は注意を促しています。
「自分で選んだ社宅は、課税しない現物給与には該当しません」
米森税理士によると、現物給与による経済的利益はそもそも課税対象です。ただ、職務上必要なものとして会社の都合で給付するもので本人に選択の余地がないことや、換金できないことなどを踏まえて、特定の現物給与は課税しなくても差し支えないとされています。
社宅(借り上げ社宅を含む)の場合は、会社が保有または選択した住宅に社員を住まわせ、「賃貸料相当額」を本人から徴収することなどが、課税されない条件になります。役員と一般の社員では、賃貸料相当額の計算方法が異なる点にも触れています。
国税庁のタックスアンサーが、社宅の貸与とは認められず給与として課税される例として挙げているのは、現金で支給される住宅手当と、入居者が直接契約している場合の家賃負担です(No.2597)。
●家賃の50%を本人から徴収すれば、手元に残るお金が増える
相談者はその後、社宅は会社が契約して会社が賃料を支払い、家賃の50%以上を従業員から受け取る予定だと補足したうえで、どう運用すれば節税効果があるのかを尋ねています。
米森税理士は、会社が選定して会社が契約した場合には、賃貸料相当額(従業員の場合はその2分の1)以上を本人から徴収することで、経済的利益について課税されなくなると説明しています。
「この『賃貸料相当額』は固定資産税評価額から算出されますので、借り上げ社宅の場合は、通常は『家賃』より少額になります」
そのため、家賃の50%を本人から徴収するのであれば、課税は発生しないことになるといいます。あわせて、給与の扱いについて「『減俸する』という考えではなく、社宅代を徴収(天引き)することになります」と説明しています。
「これでは『節税』にならないと思われるかもしれませんが、本人の『手元に残る金額』が大きくなるメリットがあります」
米森税理士が示しているのは、次のような例です。
・給与が50万円の人が、家賃20万円の賃貸物件に住む場合を考える
・自分で家賃を負担すると、家賃を払ったあとに残るのは50万円-20万円=30万円
・社宅として提供を受け、家賃の2分の1を本人が負担すると、50万円-10万円=40万円
どちらの場合も課税されるのは50万円に対してですが、家賃の負担だけを見ると、実質的な手取りが増えるという説明です。一方で、手当として支給した場合については、次のように注意しています。
「なお、10万円を家賃手当とした場合は、60万円が課税の対象となります」
米森税理士は、こうした点を総合的に考え、社員の理解を得たうえで、給与制度の見直しや社宅制度の導入を進めるよう勧めています。
●まとめ
「社宅費」という名目で支給すれば非課税になる、という規定はありません。給与を減らして同額を社宅費として支給し、同額を控除する方法は、税務上は元の給与を支払ったのと同じ扱いになります。現金で支給する住宅手当や、本人が直接契約している場合の家賃負担も、給与として課税されます。
社宅で給与課税されないのは、会社が契約した住宅を貸与し、本人から一定額以上の家賃を受け取っている場合です。従業員の場合、賃貸料相当額の50%以上を本人から受け取っていれば、差額は給与として課税されません。賃貸料相当額は固定資産税の課税標準額などから計算するため、通常は実際の家賃より少額になります。
社宅の効果は、税金が減るというより、本人の手元に残る金額が増える点にあります。社宅制度の設計に迷ったときは、税理士に相談してみてはいかがでしょうか。















