食料品は1%に減税でも、飲食店が納める消費税は「増える」可能性。2027年4月の税率変更、事業者が今から備えるべきこと
税金・お金
物価高対策の目玉として高市内閣が進めてきた食料品の消費税減税が、いよいよ大詰めを迎えています。政府は「2027年4月から2年間、食料品の消費税を1%に引き下げ、あわせて中低所得者に給付を行う」などとした基本方針を決定。1%と給付を組み合わせ、家計の負担を「実質ゼロ」に近づける狙いです。
では、家計は年間いくら浮くのでしょうか。食料品を非課税(0%)にした場合の負担軽減額は、子ども2人の標準的な4人家族で年およそ6.4万円(第一生命経済研究所の試算)。今回は1%にとどまるため減税だけでは年5.6万円程度で、残りを給付で埋めて「実質ゼロ」に近づける設計です。
ただし、この数万円を実現する制度変更は、消費税を申告する小売店や飲食店の現場を大きく動かします。そもそも「0%」ではなく「1%」が選ばれたのも、税率をゼロにするとレジのシステム改修に約1年かかる一方、1%なら半年程度で済み、2027年4月に間に合わせやすいからとされています。消費者には「0%も1%もほぼ同じ」でも、事業者にとっては大きな違いなのです。
なお、今回の引き下げは2年間の時限措置で、2029年4月には8%に戻す方針です。関連法案は秋の臨時国会に提出される見通しで、対象品目や給付の具体的な内容は最終確定していません。
さらに、店内で食べる「外食」は今回も対象外で10%のままです。スーパーの食材やテイクアウトは1%になるため、「同じ料理でも店内なら10%、持ち帰りなら1%」という差が生まれます。
日本経済新聞が主要外食企業に行った調査では、約7割が今回の減税を「マイナスの影響」と見込むという結果が出ています。店内飲食の売上は10%のままなのに食材の仕入れだけが1%に下がるため、控除できる仕入税額が減り、飲食店が納める消費税額はむしろ増える(仕入先の業者に払う税金が減る分、国に直接納める税額が増える)——という事情もあります。
そこで、事業者にとって今回の減税は何がポイントになるのか、外食産業にはどんな影響があるのか、そして今から何に備えておくべきかについて、森田道生税理士に話を聞きました。
●食料品の税率が1%になることで「消費税の還付」を受ける事業者が増える可能性が
ーー食料品の税率が8%から1%に下がると、事業者の消費税に関わる実務や納税額の計算は、実際どのように変わるのでしょうか。
簡易課税・本則課税を適用している事業者はいずれも、食料品等の税率が8%から1%に下がると、売上時に預かる消費税が大きく減ります。
さらに、本則課税を適用している事業者は、家賃や水道光熱費、包装資材といった食料品以外の経費にかかる税率は10%のまま据え置きとなるため、預かった税額よりも支払った税額の方が大きくなることにより「消費税の還付」を受ける事業者が増えることが予想されます。
ーー今回は消費税1%となりましたが、ニュースで報じられてきた「食料品ゼロ%」であった場合、「ゼロ税率(免税)」か「消費税を課さない売上(非課税売上)」かで影響が大きく異なったようですね。
非課税売上の場合は、非課税売上に対応する仕入時に支払った消費税を差し引く(仕入税額控除)ことができなくなり、事業者が消費税を実質的に負担します。
ゼロ税率(免税)の場合は、仕入税額控除が可能となり消費税の還付を受けることもできます。
ただし、簡易課税を適用している事業者は、売上に係る消費税額をもとに控除税額を計算する仕組みのため、ゼロ税率でも今回の1%でも、原則として還付は生じません。
●飲食店では店内とテイクアウトで税込価格を統一するか否かの判断が必要となる
ーー外食(店内飲食)は10%のまま据え置かれ、テイクアウトや食材の仕入れは1%になる見通しです。「同じ料理でも店内と持ち帰りで税率が違う」ことで、飲食店の経営や経理にはどのような影響が出るのでしょうか。
店内飲食(10%)とテイクアウト(1%)の税率差が「9%」に広がることで、飲食店の経営および経理実務に少なからず影響すると考えられます。
<価格戦略と粗利への影響>
持ち帰りの割安感が強まり、消費者の「テイクアウトシフト」が加速する可能性があります。
店内とテイクアウトで、税込価格を統一するか否かの判断が必要となり、統一する場合は、店内飲食の本体価格を下げる(利益率が圧迫される)か、テイクアウトの本体価格を上げるかの判断を迫られます。
<オペレーションと経理処理>
注文時やレジでの確認ミスが税額の直接的な差異につながります。
インボイス(領収書・レシート)発行時にも10%と1%の売上を厳密に区分・集計するオペレーションの徹底が求められます。
●小売店や飲食店等は、制度開始に向けて内外的に入念な準備が必要
ーー小売店や飲食店が、今回の税率変更に向けて今から準備・注意しておくべきことを教えてください。
小売店や飲食店等は、税率変更に対応するスムーズな移行に向けた対応を進める必要があると考えます。
使用中のレジや会計ソフトが「1%」の税率設定に対応できるか、ベンダーへ早めに問い合わせと見積もりを行うことが重要です。
続いて、請求書や領収書に「1%対象」の記載欄や合計額を正しく追加・印字できるよう、必要に応じてシステム改修を進める必要があります。
さらに、税込価格の表示方法や、店内とテイクアウトの価格設定をどう統一・差別化するか事前に社内決定しておくことや、店内飲食と持ち帰りの適用誤りを防ぐため、注文受けやレジ打ちの運用フローをスタッフへ周知徹底する必要もあります。
【取材協力税理士】
森田 道生(もりた みちお)公認会計士・税理士
スタートアップ・ベンチャー企業へのサービスを強みとし、税務ほかIPO支援業務、内部管理体制の構築・強化支援業務、FAS関連業務など経営に関する各種領域について専門サービスを提供する。
そのほか、日本公認会計士協会にて、税制改正意見書の取りまとめや税務委員会研究報告書の執筆を行っている。
事務所名 :森田道生会計事務所/合同会社日本会計センター
事務所URL:https://mm-cpa.jp.net/















