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ビール系飲料の酒税、ついに10月に統一 メーカーと当局の激しい攻防を振り返る

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ビール系飲料の酒税、ついに10月に統一 メーカーと当局の激しい攻防を振り返る
かつて裁判にも発展した「極ZERO」

ビール系飲料には、①ビール、②発泡酒、③第三のビールの3種類がありますが、酒税法が改正され、今年10月から、これらのビール系飲料の税率が同じになります。

ビール系飲料の税率は、過去、何度も改正され、複雑化してきたという経緯があります。それは、課税当局が増税すると、ビールメーカーが増税を回避する商品を開発するという熾烈なバトルが繰り広げられてきたからです。

ビール系飲料の税率の統一化が税収増につながるかどうかは、来年以降になってみないとわかりませんが、課税当局はなぜ、ビールに対する税収確保に躍起になってきたのでしょうか。また、今後のビール系飲料はどうなるのかについて考察したいと思います。(ライター・東雲修)

●圧倒的な人気のビール系飲料

日本では、お酒の中で、ビール系飲料の人気がダントツで1位です。令和6年4月1日から令和7年3月31日までの間に製造された酒類全体の製成数量は、7,371,132KLで、そのうち、ビールと発泡酒の合計は4,277,919KLです。割合にすると、酒類全体の58%をビールと発泡酒が占めています。実際には、ここに第三のビールも加わるため、ビール系飲料の割合はもっと増えます(第三のビールは「その他の醸造酒」と「リキュール」に分類されますが、正確な数量が分からないため含めていません)。

平成の時代はどうだったかというと、平成元年のデータでは、酒類全体の製成数量は8,409,000KLで、そのうちビールの製成数量は6,287,000KLでした。割合にすると、酒類全体の74.8%をビールが占めていることになります。平成の時代でもビールの人気が高かったことがわかります。

このように日本では人気が高いビールですが、世界的に見ると、日本は非常に高い税率でした。「AMERICAN ASSOCIATION OF WINE ECONOMISTS AAWE WORKING PAPER No. 131 (P7)」によると、1994年当時、350ml当たりの税額は、日本が77円、フランスが5.3円、ドイツが3.8円、米国 (ニューヨーク市)が7.6円、英国が44.5円であり、最も低いドイツと比較すると、税額は約20倍にもなります。

日本政府は、当時、「ビールは人気があるから、ある程度高い税率であっても需要は維持される」と安易な見方をしていたのかもしれません。

●国際化の流れとバブル崩壊

1990年代の日本では、ビールと認められるためには、麦芽含有量が67%以上なければならず、国際的に見ると、かなり厳しい基準でした。しかし、時代の流れと共に「輸入ビールとの整合性や自由貿易の観点から、ビールに関する規制が厳しすぎる」との批判が出るようになりました。また、酒税法が1994年に改正され、ビールの税率が1KLあたり208,400円から222,000円に増税されました。

この頃、日本はバブルが崩壊し、厳しい経済状況の中、デフレが進んでいたため、ビールメーカーは、より安い商品を提供できないかと考え、麦芽比率を67%未満に抑えた「発泡酒」を開発しました。この当時、発泡酒の税率は、67%未満であれば、1KLあたり152,700円とビールに比べ安かったからです。製造技術の向上でビールとほぼ同じ味わいで価格が安いことから、これが大ヒットしました。

課税当局は、発泡酒のヒットによって、ビールの売上が減り、税収減となることを回避するため、1996年に酒税法を改正し、麦芽50%以上の発泡酒について、ビールと同じ税率(1KLあたり222,000円)にしました 。また、麦芽25%未満のものも1KLあたり83,300円から105,000円に引き上げました。

ビールメーカーは、企業努力によって生み出したヒット商品が増税されたことから、今度は、麦芽50%未満の商品を開発するようになります。特に25%未満の発泡酒は、ビールの半分程度の税金で済むため、非常に安く販売することができ、これも大ヒットしました。

●課税当局とビールメーカーとの対立が激化

発泡酒への増税がビールメーカーの開発意欲に火を付け、皮肉にも増税したことが税収減を招くことになってしまったわけです。そこで、課税当局は2003年に再び酒税法を改正し、麦芽50%未満25%以上のものを1KLあたり178,125円に、25%未満のものを1KLあたり134,250円に引き上げました。ビールは酒税の稼ぎ頭だったので、「ビールから奪われた税収分は他のビール系飲料から絶対に取る」という課税当局の強い執念が感じられます。

ビールメーカーは、またしても課税当局に発泡酒の税率を引き上げられたため、今度は、麦芽をほとんど含まない、大豆・エンドウ豆・米・コーンなどを原料としたビール風味の飲料を開発しました。これが「新ジャンル」いわゆる「第三のビール」です。第三のビールは、製造方法により税率は変わるものの、発泡酒よりもさらに低い税率で済むため、これまた低価格で提供できるようになりました。第三のビールは、発売から数年で発泡酒を抜く大ヒットとなり、発泡酒に代わる主要な商品になりました 。

この状況について、課税当局は、第三のビールに対しても規制を強化することを検討していたかもしれません。しかし、発泡酒の増税による苦い経験もあってか、第三のビールに対する抜本的な酒税法改正は行われませんでした。

●増税ではなく商品自体に疑義を示すことで対抗

とは言え、課税当局も黙ってはおらず、2014年に、第三のビールとして販売していた商品について、その税率区分に疑義を示してきました。ビールメーカーは、疑義を受け入れて自主的に納税しましたが、その後、改めて調査した結果、第三のビールに該当するということで、納付した税額の還付を求めて更正の請求を行いました。しかし、その請求が認められなかったため、2017年に国に対して取消訴訟を提起しました 。

ビールメーカーが監督官庁と裁判で争うというのは、よほどのことなので、ビールメーカーとしては、看過できない内容だったのでしょう。結局、最高裁判所まで争われましたが、最高裁判所は上告受理申立てを不受理とし、ビールメーカー側の敗訴が確定しました。

税金に関する訴訟は専門性が高く、課税当局の主張が明らかにおかしい場合でなければ、裁判所は行政庁を信頼する傾向があります。そのため、民間企業が国(課税当局)との裁判で勝つことは非常に難しいのが現状です。どちらの解釈も成り立ちうるときに、民間の解釈と行政機関の解釈のどちらを取るかと問われれば、行政側の解釈を採用した方が無難であり、裁判所にとってリスクが小さいからです。

もっとも、国が訴えられた場合、関係省庁と法務省が協議をしながら訴訟を進めることになるため、その準備にかかる負担はかなり大きいものとなります。この訴訟では最高裁まで争われているので、国が裁判では勝ったものの、課税当局も相当大変だったと思います。

●ビールメーカーとの対立の終焉

以上のとおり、課税当局が増税するとビールメーカーが新たな商品を開発するという、いたちごっこの状態が続いていましたが、それを終わらせるべく、2017年に酒税法が改正されました。その内容は、ビール系飲料の税率の差を段階的に縮小していき、2026年10月には、全て同一の税率にするというものでした。具体的には、以下の表のとおりです。

https://img.zeiri4.com/shuzei8766.jpg
財務省「酒税に関する資料」より作成 (注)上段は、1KLあたりの金額

この改正のポイントは、「段階的に行う」というところです。いきなり税率を一律にすると混乱が生じるので、将来的に税率を統一することをあらかじめ示しておくことで、ビールメーカーに準備期間を与えたことが特徴です。

●今後のビール系飲料はどうなるか?

これまで、ビールメーカーは、「いかに安い商品を提供するか」という点に主眼を置いて開発を進めてきました。その結果として、麦芽を一切使わずにビールとほぼ同じ味を出せるというすごい技術を獲得したわけです。

お酒好きの人からすると、「ビールとそれ以外のビール系飲料の違いは簡単にわかる」と言われるかもしれませんが、缶の表示を見ないで、味だけで、ビール・発泡酒・第三のビールを見分けることはプロでも難しいと言われています。これは、ビールメーカーの努力の賜物と言えます。

今後、過去の価格差に対するイメージが残っている間は、ビールが相対的に安くなるので、当面はビールの売上が伸びるでしょう。また、ビールの価格を下げずに、原材料にコストをかけて、味で勝負するビールメーカーも出てくるのではないかと予想されます。

一方、発泡酒や第三のビールは、増税となるため、ビールより税負担の面で不利にはなりますが、ビールよりも製法の自由度が高く、安い材料でビールに負けない味を出す技術を持っているので、価格を抑えたビール系飲料として存続していく可能性があります。

また、税金を気にする必要がなくなるので、麦芽の量を増やしてビール化するなどの動きも見られるでしょう。糖質オフなど機能性を高めた商品は今でもありますが、税区分の括りがなくなるので、これまで以上に美味しく、機能性の高い商品が開発されるようになるのではないでしょうか。

(税理士ドットコム トピックス)

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