「うちは自宅だけだから大丈夫」が一番危険?「実家だけ相続」がドロ沼化しやすい理由とは
相続財産
「うちは財産と呼べるようなものは自宅しかないから、相続で揉めることはない」。
そう思っている方も多いかもしれません。ところが実は、相続トラブルの現場で泥沼化しやすいのは、「財産のほとんどが古びた実家だけ」というごく一般的な家庭です。
実際、家庭裁判所で争われる遺産分割事件のうち、遺産に不動産が含まれるものは例年8割に及び、その多くは遺産額5,000万円以下となっています(「令和6年 司法統計年報」)。
例えば、両親が亡くなり、残された子どもが相続する場合、財産が1,000万円の現金であれば、兄弟姉妹間で1円単位できれいに分け合うことができます。しかし、財産が1軒の不動産の場合、そもそも物理的にきれいに分配することが難しいのが実情です。
兄弟姉妹間で「売却する」という意思疎通ができていれば一見スムーズそうですが、それぞれの思惑が異なれば、さらに厄介な事態を招きかねません。また、全員の意見が一致していても、不動産ならではの落とし穴が存在します。
そこで、財産が自宅だけで、兄弟姉妹の希望が異なる場合にどのようなトラブルが起きやすいのか、またそれを回避する方法について、相続のプロである高山弥生税理士に詳しく話を伺いました。
●自宅相続で陥りやすいトラブルとは
ーー財産が自宅だけの場合に起こりうる相続のケースごとに、どのようなトラブルが起きやすいか、またその対処法をお教えください。
<想定される条件>
亡くなったのは自宅に住む母(父はすでに他界)、遺言書はなし、相続人は長男と長女、どちらも相続放棄はしない
【ケース1】(長男がすでに住んでいるなどで)長男が自宅を相続したいと言ってきた
長女が何も相続できない状態になり、「不公平だ」と不満を訴えてくる可能性が高いでしょう。この場合、自宅を相続する長男が、法定相続分に応じた現金を「代償金(だいしょうきん)」として長女に支払うことで不満を解消できます。ただし、長男側に手元資金が必要となります。
【ケース2】兄妹ともに自宅を残したいと思っている(売却しない)
実家を売却せず、2人で「共有名義」にすることになります。どちらか片方が住む場合、親族であるため無償で住むことも可能ですが、住んでいない側へ賃料を支払う必要が生じる可能性もあります。
【ケース3】兄妹ともに売却したいと思っているが買い手がつかない
「自治体などの空き家バンクに登録する」「相続土地国庫帰属制度を利用して手放す(国に引き取ってもらう)」といった手段があります。なお、相続土地国庫帰属制度では、建物が建っている土地は申請できないなどのルールがあります。
●誰に継いでほしいかを明確にし、遺言書に記しておくこと
ーー「我が家の相続も危ないかも…」と感じた人が、親が元気なうちにやっておくべき対策をお教えください。
まずは親御さん自身が「誰に引き継がせたいと思っているのか」という意思を明確にすることです。そして子ども達にそれを共有し、遺言に記しておくことが大切です。
【取材協力税理士】
高山 弥生(たかやま やよい)税理士
VSG相続税理士法人溝の口オフィス代表税理士。実務の傍ら、執筆やセミナー講師を務める。
VSG相続税理士法人では、相続税申告において日本最大級の実績とノウハウにより、顧客の立場に立って一番有利な相続アドバイスを行う。グループの行政書士・司法書士・社会保険労務士法人と連携をとり、あらゆる相続の悩みに対応している。
事務所名 :VSG相続税理士法人
事務所URL:https://vs-group.jp/sozokuzei/
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