「契約者は母」なのに「払ったのは妹」という生命保険。これって妹から母への贈与? それとも妹の一時所得になるんでしょうか?
相続税
身内が亡くなった際、遺族が受け取る「死亡保険金」。原則として、亡くなった人が保険料を支払っていた保険金は「みなし相続財産」となり、相続税の対象になります。しかし、もし「名義上は亡くなった人が契約者だけど、実質的な保険料は別の親族が負担していた」という複雑なケースが発覚した場合、税金の扱いはどうなるのでしょうか。
税理士ドットコムに寄せられた、死亡保険金にまつわる切実なご相談をご紹介しましょう。
●相談:母名義の死亡保険、受取人の妹が保険料を実質負担していた…
「母が亡くなりました。法定相続人は私と妹で、遺産分割協議自体はスムーズに進みそうなのですが、妹だけが母の死亡保険(約250万円)の受取人になっていました。
ところが詳しく聞いてみると、妹が母の口座にお金を入れ、そこから母が保険料を支払う形をとっていたらしいのです。これは結論でいうと妹から母への贈与となるのでしょうか?それとも妹の一時所得になるのでしょうか?」
そこで、契約名義と実質的な負担者が異なる場合の、死亡保険金をめぐるリスクと注意点について解説します。
●形式ではなく「実質」で判定。保険料を実質負担していれば一時所得の対象に
この複雑な状況に対し、増井誠剛税理士(税理士法人CROSSROAD)は、税金の判定における重要な原則を指摘します。
「形式ではなく実質で判定されます。本件は契約者・被保険者が母、受取人が妹であるため、原則は『みなし相続財産』として妹の相続税課税対象です。
ただし、妹が保険料を実質負担していた事実が明確に立証できる場合には、妹自身が保険料の実質負担者と認定され、『一時所得課税』と整理される余地があります。もっとも、資金移動の経路や管理実態が不明確な場合は、贈与認定や相続財産への算入リスクも否定できません。調査時の論点となりやすいため、通帳履歴や資金の流れを説明できる状態にしておくことが重要です」
税務の世界では、書類上の名義(形式)よりも、実際に誰がお金を出していたかが重視されます。 今回のケースでは、妹が保険料を全額実質負担していたことが通帳の履歴などで明確に立証できれば、法律上は「妹が自分で保険料を払い、自分で保険金を受け取った」とみなされ、相続税ではなく妹の「一時所得(所得税・住民税)」として課税される可能性があります。
しかし、もしお金の流れが不透明で実質負担の証明ができない場合、「妹から母への贈与」とみなされたり、あるいはそのまま「母の相続財産(みなし相続財産)」として相続税の対象になったりするリスクが残ります。
※相続税の保険金非課税枠は「500万円✕法定相続人の数」で計算される。一時所得は「(受取額 − 払込保険料 − 特別控除50万円)✕1/2」で計算される。そのため、払込保険料の額によるが、本件の金額では相続税扱いの方が無税で有利な可能性がある。
●贈与認定されたらどうなる? 「なぜその契約にしたのか」がポイントに
さらに、相談者からの「もし贈与認定となった場合は、妹が母親に保険料(年6万円)を贈与していた、ということになるのか」という追加の疑問に対し、西野和志税理士(西野和志税理士事務所)からは、契約の背景に踏み込んだアドバイスが寄せられました。
「そもそも、妹さんが保険契約に深く関わっていると思います。なぜ、そのような形で契約をしたのか? 事実であれば、課税は一時所得で所得税の課税対象になります」
西野税理士が指摘するように、なぜわざわざ「妹がお金を出し、母の口座を経由して、母の名義で契約したのか」という経緯や意図が、税務調査では厳しく見られるポイントになります。
仮に「年6万円の保険料相当額を妹から母へ贈与していた」としても、暦年110万円の基礎控除内なので、それ自体に贈与税はほぼ生じません。やはり、事実関係がしっかりと証明できるのであれば、実質的な「一時所得」として正しく申告・整理することが基本となります。
●まとめ
一見、契約者が故人になっている死亡保険金であっても、別の親族が実質的に保険料を負担していたことが証明できれば、相続税ではなく「一時所得(所得税)」として扱われる余地があります。
ただし、このような「名義と実態が異なる口座間の資金移動」は、相続の税務調査において非常に目を付けられやすい論点です。後からペナルティ(追徴課税)を受けないためにも、当時の通帳履歴や資金の流れをいつでも説明できるよう準備しておくこと、そして判断に迷う場合は、事前に相続に詳しい税理士に相談して適切な申告方法を確認しておくことが極めて重要です。















