親のタンス預金を見つけたら「ラッキー」ではなく「地獄」だった。相続税の税務調査がやってくるリアルなプロセスを税理士が解説
相続税
親が亡くなり、四十九日も過ぎたころ。誰も住まなくなった実家を片付けていると、仏壇の奥や古いタンスの引き出しから、帯のついた一万円札の束が出てきた——。数えてみれば、その額なんと1,000万円。
「まさか、こんな大金が家に眠っていたなんて」。驚きと同時に、こんな考えが頭をよぎる人もいるかもしれません。「銀行に預けていたわけでもない、誰も知らない現金。これなら黙っていても、税務署にはわからないのでは?」
しかし、これは相続における最も危険な“落とし穴”のひとつです。自宅で保管されていた現金、いわゆる「タンス預金」も、当然ながら故人(被相続人)の立派な相続財産であり、相続税の課税対象になります。申告に含めなければ、それは単なる「申告漏れ」では済まず、意図的な「隠蔽」とみなされる可能性すらあります。
そして見落とされがちなのが、税務署の“把握力”です。税務署は、国税総合管理システム(KSK)や金融機関への照会を通じて、故人が生前にいつ・いくら預金を引き出していたかを、亡くなった後でも調べることができます。「亡くなる数年前に、まとまった現金を引き出した記録があるのに、相続財産のどこにもその現金が見当たらない」——こうした不自然な資金の動きは、税務調査の格好のターゲットになるのです。
相続税の税務調査は、申告後しばらく経ってから、ある日突然やってきます。そして調査で無申告や隠蔽が指摘されれば、本来の相続税に加えて、過少申告加算税や、悪質と判断された場合の重加算税、さらに延滞税といった重いペナルティがのしかかります。「見つけてラッキー」だったはずのタンス預金が、一転して“地獄”の入り口になりかねないのです。
そこで、税務署はどこまで個人の財産を把握しているのか、相続税の税務調査は実際にどのように進むのか、そしてタンス預金を見つけたときにどう対処すべきかについて、高山弥生税理士に話を聞きました。
●過去のデータの蓄積により、タンス預金が推測できてしまう
ーー自宅の「タンス預金」を、なぜ税務署は把握できるのでしょうか。
税務署には調査権限が与えられており、被相続人および家族名義口座を過去5年から10年さかのぼって調べることができます。また、KSKシステムに確定申告や企業が提出する支払調書、被相続人が相続した財産などがデータとして蓄積されていますので、生涯収入から遺産が少ないのではないかと予想してきます。
●まとまった預金の使い道が不明だと、タンス預金を疑われるケースも
ーー相続税の税務調査は、実際にいつ・どのような形で行われるのでしょうか。また、タンス預金の“申告漏れ”はどのようなときに指摘されるのでしょうか。
相続税の税務調査は、相続税の申告期限から1年から2年の間に調査があることが多く、3年を過ぎると確率はかなり下がります。タンス預金は、預金からまとまった額が引き出されたものの、使い道について質問されたときに答えられないと疑われることになります。
●隠蔽と判断されると、過少申告加算税に替え重加算税が課されることに
ーーもし実家でタンス預金を見つけたなど、申告漏れに気づいた場合は、どう対処すべきでしょうか。
申告漏れに気づいたら、速やかに修正申告をしましょう。通常、修正申告をすると過少申告加算税と延滞税が課されますが、過少申告加算税については、納税者自らが気づき、税務署の調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告すれば課されません(延滞税は課されます)。
隠蔽と判断されると、過少申告加算税(原則10%)に代えて重加算税(35%)が課されることになり、税率が高くなります。また、隠蔽・仮装された財産の価額分は、配偶者の税額軽減の計算から除外されますので、正しい申告を心掛けましょう。
【取材協力税理士】
高山 弥生(たかやま やよい)税理士
VSG相続税理士法人溝の口オフィス代表税理士。実務の傍ら、執筆やセミナー講師を務める。
VSG相続税理士法人では、相続税申告において日本最大級の実績とノウハウにより、顧客の立場に立って一番有利な相続アドバイスを行う。グループの行政書士・司法書士・社会保険労務士法人と連携をとり、あらゆる相続の悩みに対応している。
事務所名 :VSG相続税理士法人
事務所URL:https://vs-group.jp/sozokuzei/
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