夫の相続税申告があり、子ども口座へ移したお金の出所が夫か私かわかりません。何年前までの資金移動が調査対象になりますか?
相続税
身内が亡くなり、相続税の申告準備を進める中で「過去の家族間のお金のやり取り」に不安を覚える人は少なくありません。昔、良かれと思って子ども名義の口座に貯めていたお金や、夫婦間で行き来した資金。それらは税務調査の対象になるのでしょうか。
「15年以上前の預金移動なんて、通帳も残っていないし出所がわからない……」そんな切実な悩みが、税理士ドットコムに寄せられました。税務調査で遡る期間や、銀行のデータ保管の仕組みについて、専門家の回答をもとに解説します。
●相談:15年前の子ども名義の貯金、出所がわからず税務調査が不安
相談者は、亡くなった夫の相続税申告を予定している女性です。
過去に子ども名義の口座に貯金をしていた時期があり、そのお金の出所が「夫の収入」だったのか、それとも「妻(相談者)の収入」だったのかが、15年以上前のことであるため分からなくなってしまったといいます。手元には当時の通帳も残っていません。
女性は「税務調査では何年前のことまで分かるのですか? 誰のお金かはどうやって判定するのですか?」「自分で確かめるために銀行や郵便局に行って記録を出してもらうとしたら、何年前までもらえますか?」と、税務調査への不安を募らせています。
今回は、家族間の資金移動の記録について、何年前まで遡ることができるか、贈与税の時効などについて解説します。
●15年前なら贈与税の時効が成立しており、実務上の問題はない
住谷慎一郎税理士(税理士法人東京税務会計事務所)からは、次のような安心感を与える回答が寄せられました。
「15年前ですと、贈与税の時効が成立しています。また相続税の資産に算入する生前贈与の遡及適用期間にも該当しませんので、実務上の問題になることはありません」
法律上、15年前という過去の預金移動であれば、仮にそれが「夫から子どもへの贈与」とみなされたとしても、すでに贈与税の時効(原則6年、悪質な場合は7年)が成立しています。
また、相続が発生した際、亡くなる前の一定期間に贈与された財産を相続財産に足し戻すルール(生前贈与の加算※)がありますが、15年前はその遡及期間からも外れるため、実務上で問題視されることはないとのことです。
ただし、子ども名義の口座への入金が「名義預金」とみなされた場合は、「過去に贈与された財産」ではなく「今なお被相続人の財産」とされます。したがって贈与税の時効という概念自体が及ばず、資金移動が何十年前であっても相続開始時の残高が相続財産に算入されます。
※生前贈与の加算期間は、2024年1月以降の贈与から3年→7年に順次延長
●金融機関の取引履歴保存期間「最大10年」が調査の対象に
さらに、具体的に「何年前まで調べられるのか」という点について、中田裕二税理士(中田裕二税理士事務所)が銀行側のデータ保存の仕組みを踏まえて解説しています。
「金融機関の取引履歴保存期間は10年間です。したがって、あなたが取引履歴の証明を申請した場合、申請日から遡って10年分までは取得できます。
一般的には税務署の銀行調査でも最大10年間分を対象にし、比較的高額な入出金が相続人等の口座間で移動していないかなどを確認します」
相談者が自分で調べようとしても、また税務署が職権で金融機関の調査を行うにしても、銀行や郵便局が取引履歴を保管しているのは法的に「10年間」と決まっています。そのため、そもそも10年を超える過去のデータは金融機関にも残っていないケースがほとんどであり、税務調査でも最大10年間分が対象になります。
ただし、税務署は該当者の金融機関の口座だけでなく、家族全員の口座や過去の収入・申告状況を総合調査します。つまり、通帳が残っていなくても、残高推移や資金の出所から名義預金と推認されるケースがあることには注意が必要です。
中田税理士はあわせて「相続税分野に強い税理士に相続税申告書作成を依頼すれば、こうした預貯金口座の取引履歴の検討をしてくれます」とアドバイスしています。
●まとめ
税務調査が行われる際、税務署は亡くなった人やその家族の口座を調べ、高額な資金移動がないかをチェックします。しかし、その範囲は金融機関のデータ保管期間でもある「最大10年間」が一般的です。
もし手元に過去10年分ほどの通帳が残っているのであれば、まずはその期間内に怪しい家族間の資金の移動がないか、今一度確認してみるとよいでしょう。不安な場合は、相続に詳しい税理士に相談しながら申告書を作成するのが一番の近道です。















