父のスマホから「遺言動画」が… 法的効力はある? 遺産分割や相続税への影響を税理士が解説
相続税
「遺言通りに分けよう」「いや、法的に無効だ」——。
「遺産は兄弟で半分ずつ」。そう口約束していたのに、亡くなった父のスマホに残されていた「遺言動画」、いわゆるデジタル遺言がきっかけで、きょうだいが対立してしまう……。デジタル時代ならではの相続トラブルが、ネット上でも話題を集めています。
しかし、まず前提として押さえておきたいのは、日本の民法で有効とされる普通方式の遺言は、原則として「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類に限られるという点です。自筆証書遺言であれば、財産目録を除く全文・日付・氏名を本人が自書し、押印することが必要です(財産目録は2019年からパソコン作成等も可)。
つまり、スマホで撮影した動画や音声、メールやメモアプリに書き残した内容は、どれだけ本人の意思が明確でも、それ単体では法的な遺言としての効力を持ちません。「動画で言い残したのだから従うべきだ」と主張する相続人と、「正式な遺言ではない」と反発する相続人との間で、かえって"争族"の火種になりかねないのが現状です。
一方で、こうした動画が遺産分割の話し合いにまったく無意味かというと、そう単純でもありません。
そこで、無効なはずの「遺言動画」が実務でどう扱われるのか、そして相続税の面でどんな影響があるのかを、高山弥生税理士に聞きました。
●法的効力がない「遺言動画」は、実際の調停や実務でどう扱われる?
ーー法的効力を持たない「遺言動画」でも、実際の遺産分割協議や家庭裁判所の調停の場では、故人の意思を示す資料として何らかの影響を持つことはあるのでしょうか。
遺産分割協議が難航し、家庭裁判所での調停に進んだ場合、調停の本質は「話し合い」であるため、故人の意向を示すものとして調停委員が不当な利益を主張する相続人を説得する材料になりえます。
また、自筆証書遺言や公正証書遺言の作成時に認知症で判断能力がなかったという主張に対しては、本人がしっかりとした口調で理路整然と話す動画があれば、意思能力があったという反証になるでしょう。
●「遺言動画」通りに分けると、相続税の特例(配偶者控除・小規模宅地等)に影響はある?
ーー「遺言動画」の内容に沿って遺産を分けた場合と、法的に有効な遺言書に基づいて分けた場合とで、配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例といった各種特例の適用に違いは生じるのでしょうか。
遺言書に法的有効性があってもなくても、特例の適用に違いが生じることはありません。
ただし、相続税の申告期限までに遺産分割が決まっていないと、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用はできません。その点、法的に有効な遺言書があることは、相続税の申告をスムーズに進める一助になるといえます。
●故人の意志を残しつつトラブルを防ぐ「正しい遺言の残し方」は?
ーー故人の意思を確実に実現しつつ争族も防ぐには、どのような遺言の残し方が有効でしょうか。専門家の視点からお教えください。
「公正証書遺言」をベースとして法的な部分をカバーし、動画を「付言事項の補足(感情面のケア)」として組み合わせるとよいでしょう。
また、軽度の認知症を発症している方は、医師の診断書を取得するとともに、本人がハキハキとしゃべっている動画を残すことで、意思能力があったことへの補強材料となります。
公正証書遺言を作成するときは、税理士のサポートを受けましょう。どのように分けると特例が使えるかアドバイスがもらえますし、二次相続の税額のシミュレーションなどもしてもらえます。
【取材協力税理士】
高山 弥生(たかやま やよい)税理士
VSG相続税理士法人溝の口オフィス代表税理士。実務の傍ら、執筆やセミナー講師を務める。
VSG相続税理士法人では、相続税申告において日本最大級の実績とノウハウにより、顧客の立場に立って一番有利な相続アドバイスを行う。グループの行政書士・司法書士・社会保険労務士法人と連携をとり、あらゆる相続の悩みに対応している。
事務所名 :VSG相続税理士法人
事務所URL:https://vs-group.jp/sozokuzei/
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