ヤフー「国内どこでも居住可能」…飛行機出勤で社会保険料が上がるってホント?
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国内どこでも居住可能、月15万円までなら飛行機通勤もOK——。ヤフーが1月12日に発表した通勤手段の制限緩和が話題となった。
これまでヤフーでは、交通費の上限を1日あたり片道6500円、月あたり15万円としていたが、2022年4月1日から片道上限を撤廃。特急や飛行機、高速バスでの出社も可能となった。
この新たな働き方について、ネットでは「ガチで羨ましい」「転職殺到だね」と好評だったが、気をつけなければいけないこともあるようだ。1月17日にこんなツイートが話題となった。
「意外と見落とされがちだが交通費も標準報酬月額の計算に含まれるため、毎月15万まで交通費使ってると単純に月収がその分増えた扱いになり、翌年から社会保険料がかなり上がる」
一体どういうことなのだろうか。蝦名和広税理士に聞いた。
●所得税には影響がないが、社会保険料は増える可能性
所得税については、公共交通機関利用の場合月額15万円まで非課税限度額が設けられているため、交通費が大きく増額となった場合でも税額に影響はありませんが、社会保険の標準報酬月額は、交通費も含めた給与総額をもって決定するので、社会保険料が大きく増える可能性があります。
社会保険料は、通常毎年4〜6月に支払われた給与総額をもって標準報酬月額が決定し、9月分から翌8月までその等級に合わせた社会保険料が控除されます。
例えば、30万円の給与と2万円の交通費を支給されている方の場合は20等級となり、厚生年金保険料は月額29,280円となります。
それに対し、今回のケースのように交通費の制限が撤廃され、交通費が月額15万円に増額となった場合、社会保険の等級は25等級となり厚生年金保険料は月額40,260円まであがります。
健康保険(介護保険)料も同様に等級によってあがる仕組みなので、あわせると月額15,000円以上の保険料増額になるケースも考えられます。
一度増額となった保険料はその他固定賃金の変動がない限り翌年まで継続となり、出社回数を減らして一時的に交通費が下がったとしても社会保険料はすぐ変更とならないことも見落としがちです。
社会保険料があがることで、将来貰える年金額を増やすことができるのは大きなメリットですが、交通費はあくまで通勤の実費負担分で手元に残らないものですから、その変動で上記のように手取り額が大きく変わってしまうのは生活を見直さなければならない要因にもなるので注意が必要でしょう。
【取材協力税理士】
蝦名 和広(えびな かずひろ)税理士
特定社会保険労務士・海事代理士・行政書士。北海学園大学経済学部卒業。札幌市西区で開業、税務、労務、新設法人支援まで、幅広くクライアントをサポート。趣味はジョギング、一児のパパ。
事務所名 :Aimパートナーズ総合会計事務所
事務所URL:https://office-ebina.com